第六十三話 火山のダンジョン 中盤
がんさいは!
フォレストコボルトは一メートル五十センチくらいで普通のコボルトより大きい。
数は十匹いる。
ガルドさんはコボルトの爪によるひっかきを二刀流の片方で受けて、もう一刀で斬り返す。流石二刀流使いだ。危なげない。
シズナさんはコボルトに短剣で近づき喉元を掻き切る。
暗殺者みたいだな、斥候って。
グラウルさんは飛び掛かってきたフォレストコボルトにシールドバッシュを決めて昏倒させている。頭を片足で叩き潰した。
ミレアさんは邪魔にならないように皆に補助魔法をかけていた。
「タイム・アクセラレータ!」
どうやら動きが速くなる魔法らしい。
ザンは釘のようなものをフォレストコボルトの眉間に投げつけて、苦しむコボルトの間をすり抜ける。遊撃役の役目にふさわしいな。
そしてアリアは長剣を振りながら舞踏のように軽やかに敵の攻撃をかわし、一刀で斬り捨てる。その所作はとても美しかった。
エメリアはひと際デカいフォレストコボルトのリーダー相手に、格闘戦を仕掛けていた。
ジャブからの左ストレート。相手が下がったところに体を捻った回し蹴り。
それらのすべてに衝撃波が付与されているので、とても強い。
コボルトのリーダーは何もできずに倒れていった。
「いやーみんな強いな」
「俺様たちはAランクだからな。これくらいは訳もない」
「私はあんまり活躍してないにゃ」
「そんなことありません。補助魔法とっても助かりました」
「わたくしも久々に暴れられて気持ちが良かったです」
グラウルさんは誇らしげに言い、ミレアさんはシュンとしている。
アリアがフォローし、エメリアは気持ちよさそうな顔をしていた。
俺は皆を褒めながら、あることを思い出す。
「あ、アイテムボックスの範囲収納を使えば、すぐに素材回収できるじゃん」
『あ』
俺の言葉に、皆も声を出してちょっと呆ける。
何で気づかなかったんだろう。俺はアイテムボックスにコボルトの遺体を収納し、素材を中で解体する。解体するのは簡易クラフトの効果だ。
今までの討伐証明素材とかはアイテムボックスに入れてたのにな。
我ながらあほだな。
森を進んでいると俺の魔力ソナーとシズナさんの気配察知に魔物がひっかかる。
「木の上、フォレストスパイダーがいる」
シズナが弓の弦をきりきり引き絞って、木の上に矢を放つ。
「シャー!」
弓が刺さったフォレストスパイダーが落ちてくる。
二メートルの巨体で糸を吐いてきた。
「散開!」
ガルドさんの号令で、瞬時に飛びのく。
俺は一応雷足をしていたので、よけられた。
「私がやる」
銀髪の美少女、カレイナが髪をはためかせて前に出る。
「森の精霊よ、敵を縛りあげろ。プラント・ウィップ!」
木の蔦がフォレストスパイダーに絡みつき、相手の行動を阻害する。
「今!」
「チェインライトニング!」
フォレストスパイダーが痺れて、倒れ伏す。
アリアがその上から剣でフォレストスパイダーを一刀両断した。
「ナイスコンビネーションにゃ!」
「むう。私の出番がないですわ」
猫獣人のミレアさんが興奮して叫んでいる。
エメリアは不満そうだ。
何気にカレイナが止めて、俺が雷撃を撃って、アリアがとどめを刺した感じだ。
三人でハイタッチして喜び合う。
フォレストスパイダーはアイテムボックスに収納して、森を歩く。
敵の襲撃はそれなりにあるものの、やっぱり二階層のダンジョン。
問題なく退けて、アイテムボックスに収納していく。
「ここが三階層の階段だ」
「ここからはどんなダンジョンになるんだ?」
「冷えた火山の洞窟だな」
なるほど、火山のダンジョンらしくなってきたな。
ここからは岩系の魔物が多くなるらしい。
「一番厄介なのはフレイムゴーレムだな」
「一回水で冷やさないと駄目だにゃ」
グラウルさんとミレアさんの話を聞きながら三階層に行く。
ごつごつとした岩がそこら中に転がっている。
これは魔力ソナーが大事そうだな。
俺は金色の魔力によるソナーをしつつ、洞窟を進んで行く。
「居た」
目の前の大きな岩から魔力の波長がある。
「ユウキ様! わたくしにお任せを!」
エメリアがひらりと前に出て、白金色の闘気を高める。
「はあああああ!」
そして、高く跳びあがると、上から踵落としを繰り出す。
「天空、踵落とし!」
岩にドン! っと大きな衝撃が入る。
「グオオオオ!」
岩が人型の形になり、姿を現す。
「ロックゴーレムだ」
ロックゴーレムはエメリアの先制攻撃でフラフラしていたが、まだまだタフな感じだ。
「正拳突き! からの連撃、三連打!」
エメリアは空手家のように岩に拳をぶつける。
徐々に岩の体が砕けていっている。もう少しだ。
ロックゴーレムは左腕を振り上げて、地面に叩きつける。
だがそこにエメリアはいない。
「最後! 巖砕波!」
エメリアは大ぶりなモーションから静かに岩肌に手を添える。
バキバキバキ!
ロックゴーレムの体が勝手に砕けた。
すごいな。巖砕波。
闘気を浸透させる技なのかな?
かっこいい。
「ユウキ様、やりましたわ!」
「おう、流石エメリア」
「もう、カレイナにしたみたいにチュッってしてくださいまし」
「やーだ」
「なんでですの!」
冗談で返すとエメリアはプンスコ怒る。
ぽこぽこ、手で叩いてくるので、それを躱してキスをする。
「もう~!」
照れるエメリアも可愛いな。
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