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第四十一話 燻して終わり

 夜になり、フクと一緒に出掛けようとすると村の門の前で待っているのが目に入る。

「遅い!」

「そうか。気にするな」

「ぐっ……」

 ガインはまだ何か言いたそうにしていたが、自分が連れていってもらう立場だと理解しているのか、俺に対して不満を言ってくることはない。

「じゃあ、行くから俺に捕まって」

「捕まる?」

「ああ、そうだ。ほら、早くしろ」

 フクはすぐに理解し、俺に捕まって来たのに対し、ガインがなかなか捕まらないから、イラついた俺はガインの手を引っ張るとグイッと引き寄せる。

「いいか、今から転移する(跳ぶ)けど暴れるなよ。『転移』」


 転移場所は事前にアリスに探索してもらっていた。だから、転移場所は目的地から見えにくく、例え音がしたとしても探知しづらい場所に転移する。


 ドサッという音と共にガインがその場に倒れると呟く。

「ここは?」

「お前が言ってた賊のアジトの近くだな。だから、これからは何があっても大声は出すなよ」

「わ、分かった……」

 ガインがゴクリと生唾を呑み込み、緊張と不安を押さえ込もうとするのが分かった。

 そして、それを揶揄うようにフクが言う。

「怖いの? 怖いならこの辺で待っていたらいいよ」

「ふざけるな! 俺も行く! イテッ」

 ガインが少し大きめの声でフクに言うので少し強めにゲンコツを落とす。

「大声は出すなと言っただろ。フクも揶揄わない」

「は~い」

「はい……」

『で、アリス。中の様子は?』

『あんまりむさっ苦しいのは見たくないんだけどね~』

『いいから、教えてくれ』

『はいはい。別に変わった感じはないかな。シンが気にするような強そうなのはいないね。人質もいないみたいだし。うん、最初に相手にした賊に比べれば、雑魚だね』

『分かった。ありがとうな』

『いいえ。どういたしまして。じゃあ、私は『シン中学生日記』を見てるから、邪魔しないでね』

 アリスがそう言ってフェードアウトしていく。タイトルに文句を言いたいが、言っても無駄だなと諦めるしかない。

「フク、ガイン。燻すから小枝を集めてくれ」

「分かった!」

「燻す?」

「いいから、手を動かせ」


 フクとガインと三人である程度の量を集められたのそれを持って賊のアジトの入口へと近付く。

 幸いにというか見張りも立っていなかったので、入口をそのまま土魔法で塞ぐと、火を焼べる穴を空けるとそこに小枝を突っ込んで火を着ける。


 生木だから火と共に煙もすごい勢いで出てくるが、それを俺とフクの風魔法でアジトの中へと送り込む。


「なあ、中に入って斬りまくるんじゃなかったのか?」

「そんな疲れることしないでもこれで十分」

「でも、中に捕まっている人がいるんじゃ……」

「大丈夫。それは確認済みだ」

「……」

 やがて質問が尽きたのか、ガインが黙り込む。また、それと同時にアジトの中もあれだけ聞こえていた悲鳴が聞こえなくなり、静かになる。

『アリス、いいか?』

『もう、邪魔しないでって言ったのに! ……いいわよ。その中には無傷な人はいないわ。いまなら、付き添いのへっぽこでも十分、役に立つわよ』

『分かった。ありがとうな』

『……』

 アリスからの返事はなかった。そんなに途中で邪魔したのが気に入らなかったのだろうか。


 とりあえず、アジトの入口を塞いでいた塊を壊すと、中の空気を入れ換え、自分達が一酸化炭素中毒にならないようにしてからアジトの中へと足を踏み入れる。

 もちろん、進みながらトドメを差すのは忘れない。

 ガインにするかと聞いたら、首を横に振って断られた。

「ま、いいけど。なら、なんで来たんだって話だよな」

「ねえ、兄ちゃん。賊なら溜め込んでいるんじゃないの? どこかに隠されているのかな?」

「どうだろうな。こいつらの身形からして、そう期待は出来ないぞ」

「ん~でも、どっかにあるよね。アイツらもそうだったし」

「まあ、そうだな。探すだけ探してみるか」

 既に死体となった者や苦しそうに息をしている連中にトドメを差しながらアジトの中を歩く。

 ここが最奧かなという所まで来ると、一段と高い位置で喉を押さえて太った男が倒れていた。

 コイツが頭領なのだろうと推測するが、死んだ今となってはどうでもいいと、トドメだけを差してから、何かないかと辺りを見回す。

 何もお宝っぽいのがないと、この辺りが引き上げ時かとフクを呼び出そうとすると、まだお宝の捜索中のようだった。ならばガインはと言えば、何をするでもなくボーット突っ立っていた。

「なあ、ガイン。暇なら村に偵察に来た奴がいたかどうか探したら?」

「ああ、それならさっき見付けたよ」

「じゃあ、こいつらで間違いはなかったんだな」

「ああ。これで村の皆も安心出来るよ」

 なら、もう用は済んだとアジトから出ようとしていたが、フクはまだ諦めきれないようだ。

「フク、なんなら『探索(ソナー)』を使ってみなよ」

「うん。分かった。『探索』……あ、こっち!」

 フクが見当を付けた場所を土魔法を使って穴を空けると、そこは貯蔵庫のようで中にはいろんな物が詰め込まれていた。

「なんだか、一杯あるな」

「でも、お宝って感じじゃないね」

「そうだな。まあ、何かの役に立つかもしれないから、まずは全部収納しておこうか」

「は~い」


 貯蔵庫の中の物を全部、無限倉庫に収納するとガインを連れてアジトの外に出る。

「じゃあ、フクやっちゃって」

「了解。『崩壊(モルダー)』」

 フクが唱えるとアジトを含めた周辺がぐしゃっと潰れる。

「これで死体も埋葬できたし、一石二鳥だな。じゃ、帰ろうか。捕まって」

「は~い」

「ああ」

 今度は素直に捕まったガインとフクと共に村へと転移する。


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