予期せぬ知らせ・続
パトリック国王からユリウスが聞いた話では、
ベイリーの留学は秋期からと、すでに確定しているとのことだった。
そして、ティアナが急遽クロウド家に呼ばれた理由は、
週末の連休中に、ベイリーが視察に訪れることが決まったことを知らせるためだった。
現在、王家に歳の近い女性はいない。
と、なれば、公爵家であるティアナが世話係となるのは明白だった。
「ベイリー様はどちらで過ごされるのですか?」
「先方の要望は、南の宮にと」
王室は、10歳になると個人の宮殿があたえられる。
国王が住む王宮の防壁となるように並ぶ宮殿は、四つありそれぞれに東西南北の名前がついていた。
パトリックが側室や妾を持たなかったため、使用されているのはシリウスが管理する最奥の北の宮と、キースが管理する西の宮の2ヶ所だけだった。
そのうち、東の宮は政務や外国使節の謁見、国家的な儀式の際に使用されている。
・・そして今は誰も使用していない南の宮は、数十年前まで”後宮”として使用されていた。
「それは、后妃だと・・」
「あぁ。意見は割れている」
もし、ベイリー様が南の宮で過ごされるようになれば・・あっという間に、シリウスとベイリーの婚姻は決まるのであろう。
(もしかして、シリウスルートのフラグ?)
しかし、それは調べようがなかった。
「そこで、グランデ家クライン家クロウド家の名前があがっている」
「その三択では、クロウド家で決まったようなものですね」
公爵家の中で一番歳が近い同性であり、
秋期から同級生となる令嬢がいるのはクロウド家だけだ。
(ベイリー様が来月からクロウド家で過ごされる!?)
「オッドはどうされるのですか?」
「!」
ギルベルトの質問に、ティアナははっと顔を上げた。
「・・・」
「ギルベルトに、どこまで話したんだ?」
オッドの沈黙に、ユリウスが問うた。
「ん~。なんか、あの婆とコソコソしてたみたい」
「例の名無しのマニュー?」
ユリウスの問いに、オッドはこくりと頷いた。
「初めて見たときはびっくりしたよ。
まさか、あの人がこの国にいるとはね~」
「いつ会ったんだ?」
オッドに質問を返したのはギルベルトだ。
「会うわけないじゃん!
お嬢の封印解除に行ったときに見かけただけ~」
「!」
オッドの言葉で、ティアナは教会に行った日を思い出した。
あの日、オッドは誰かと会わないように身を隠していた。
「まさか坊ちゃんの担任とはね~」
「!」
そうだ。オッドはあの日、たしかに先生の名前を聞いて驚いていた。
「サリバン先生って言えよ」
ギルとオッドの会話を、ティアナは黙って聞いていた。




