予期せぬ知らせの数日前・続(12)
――放課後、
「あれ?」
放課後、図書館に向かっていたティアナは、数日ぶりに見た彼の姿に足を止めた。
「ティアナ!」
赤い瞳はティアナに気づくと、綺麗な笑顔でティアナの名前を呼んだ。
「シリル、数日ぶりね」
シリルと会うのは、噴水の前での一件以来だった。
「うん。
逢えて嬉しい」
にこにこの笑顔で駆け寄って来るシリルは犬みたいで、
ティアナには耳と全力でふりふり動かす尻尾が見えた気がした。
「私も、会えて良かった。これ・・」
ティアナは、紙袋から赤色のリボンでラッピングしたお菓子を取り出した。
「渡せるかな、って思ってたんだけど」
「・・・」
「クッキー焼いたの。
よければ、受け取って?」
ティアナがお菓子を差し出すと、シリルはおそるおそるそれを受け取った。
「・・・」
「シリル?」
お菓子を凝視するシリルに、ティアナは首を傾げた。
「もしかして、甘いもの苦手?」
「いや!」
シリルの反応に不安になって尋ねたが、
シリルは大きく首を振って全力で否定した。
「苦手なら、無理しなくても・・」
ティアナが手を出すと、
「ダメ!」
シリルは奪われまいとお菓子を抱え込んだ。
(本当に、犬みたい・・)
くすっ
ティアナは思わず笑ってしまった。
「俺・・」
しばらく沈黙を続けた後、シリルはポツリと口を開いた。
「手作りって初めて・・」
その表情は、愛しいものでも見ているように優しくて・・ティアナはシリルの美しさに瞳を奪われた。
「ありがとう、ティアナ」
シリルは顔を上げると、ティアナに破顔した。
(ううっ・・)
ティアナは本日何度目かの、胸をドキッと高鳴らせた。
(し、心臓が何個あっても足りない・・)
しばらくの間、ティアナの心臓はドキドキと音を鳴らしていた。
「あれ〜?
俺のはないんですか〜?」
急に後ろから聞こえた声に、ティアナはビクッと肩を揺らした。
「っ!」
警戒してしまったことに罪悪感を感じ、ティアナは言葉をつまらせた。
「も〜らいっ」
声の主はティアナに近づくと、ひょいっと紙袋からお菓子を取り出す。
「ちょっと!」
やっとのことで言葉を発したティアナは、いつもの口調で振り向いた。
「オッド!!」
オッドはイタズラな顔でティアナを見ている。
いつもと変わらないその様子に、ティアナはほっと息を吐いた。
「もう!オッドのは
ギルに渡してるわよ!」
「それ、十中八九
俺のとこに来ないやつじゃん〜」
ティアナとオッドが話していると、
珍しくシリルが会話に入ってきた。
「たぶん取られるだろうね」
「え?」
驚いたティアナは、
「坊ちゃんは嫉妬深いからねえ〜」
「え?」
オッドの言葉が頭に入って来なかった。
「ううん〜。
坊ちゃんは食いしん坊ってこと〜」
本作をご覧頂きありがとうございます。
いいね、評価、ブクマ登録、大変励みになります。
誤字脱字報告も大変助かります。
また、いいねの数は物語を進める上で
登場させる人物や話の参考にもさせて頂いています。
本作に最後まで関わって頂ければ大変嬉しいです。
今後とも、何卒よろしくお願いします。




