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予期せぬ知らせの数日前・続

「どうしよう…」


結局、お礼の話はは有耶無耶となり、キースの欲しいものが聞き出せなかったティアナは、ゲームでの知識を活用することにした。

攻略対象者達のプロフィールは一通り見たことがあり、そこには好きなものが記されていた。


キース=アルストレア=ライトロード

好きなもの:手作りクッキー




◇◇◇


ティアナの住む部屋は、ホテルのスイートルームのような造りになっていて、寝室の他にリビングと応接室がドアを隔てた先にある。応接室の奥には鍵のついた扉があり、そこは侍女用の準備室となっていた。中にはキッチンやウォークインクローゼットなどがあり、お世話をする上で必要なものが備わっている。

ちなみに準備室は、ティアナとマリアの部屋の間にあり、外から出入りできるように鍵付きの扉があった。その扉の合鍵はマリアにも渡していて、ティアナが出かけたり就寝したりする以外は、常にこの場所で待機している。


1階の従者職員用食堂では、朝夕の決まった時間に自由に利用できるバイキングが用意されているので、寮生はそこで食事をとっていた。


しかし、それは下層階に住む寮生のみで、高層階に住む専属従者を連れた寮生は各自の部屋で食事を済ませることが多かった。そのため、各部屋にキッチンが備わりお金を渡して学院のシェフを派遣している人も多かった。


そんな訳で、ティアナの部屋には常に使用できるキッチンがありクッキーの材料もそろっていた。




キースと別れ、食事を済ませたティアナは、マリアにクッキーの材料を準備させた。

最初は驚いていたけれど、危険が伴うこと以外は基本的にマリアは自由にやらせてくれる。


マリアは分量を計るだけでなく、バターを常温に溶かしてクリーム状にしてくれていたり、粉をふるいにかけてくれていた。もちろん、オーブンの余熱まで完璧だ。


マリアが用意してくれていたのは、絞り出しクッキーだった。


料理をしたという気持ちになるように、生地を作っておくのではなく、子供でも失敗しないように後は混ぜるだけでできるという、そんな絶妙な彼女の手助けにさすがだと感心せざるをえない。



ティアナは鼻歌混じりにクッキーの材料を混ぜ、すぐに絞り出せるように用意された袋に生地をいれるとパレットにクッキーを搾り出していく。


むにゅむにゅと円を描きながら出てくる生地は、最初は歪な形をしていたものの絞れば絞るほどにどんどんその形は上達してゆく。


楽しくなったティアナは、あっとゆうまにプレーン味のクッキーを絞り出し終えた。


「もう終わっちゃった…」


数十年ぶりのお菓子作り(しかも美味しいとこどり)に、楽しくなっていたティアナは物足りなさを感じていた。


ーーと、

そこへマリアがさっと使用済み食器を下げると

新たな材料を目の前に並べた。


「え?これ・・」


ティアナの言葉に、マリアは微笑みながらこくりと頷いた。


「チョコレート味!」


いつのまに溶かしたのか、先ほどと同じ材料と一緒に溶かしたチョコレートが用意されていた。


ティアナはまた材料をさっとまぜ、今度は茶色の生地を次々と絞り出していった。

見た目を変えようと、プレーン味の真ん中には緑と赤のドレンチェリーを、チョコレート味の真ん中にはアーモンドとカシューナッツを置いていく。


「終わっちゃった…」


あっとゆうまに飾り終え、ティアナはまた喪失感におそわれた。ため息を吐こうてした、その瞬間・・マリアがさっと使用済みの食器を下げ、新たな材料を目の前に並べ始めた。


「え?これ・・」


ティアナの言葉に、マリアは微笑みながらこくりと頷いた。


「抹茶味!」


こうしてまた、ティアナは黙々とクッキーを作り始めた・・

(※)ムーンライトノベルズに載せている作品のR15指定バージョンです。

(※)改訂している話には★マークを付けています。

(※)ムーンライトノベルより更新は遅れます。

(※)ムーンライトノベル版(https://novel18.syosetu.com/n9962hu/)

(※)ムーンライトノベル版には18禁描写が含まれます。ご注意ください。

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