第35話 正規ダンジョンの権利と義務
「ふぃー。疲れたー」
魔獣の森の守護神様にダンジョンまで送ってもらって、お見送りをした後なんとなく椅子に座ったら、つい言葉が漏れてしまった。
今回は皆の助けがあったからなんとかなったが本当に私は無力だ。とにかくこの世界のことを知らないといけないし、今回後援の神様として魔獣の森の守護神様が付いてくれたけど、他にも伝手やコネを稼がなくては。今回はなんとかなったけど次があったら、どうなるかはわからない。
でも今日は本当に疲れた。体の方も疲れたがなにより心が疲れた。
「マスター創造神様から色々もらいましたから、その説明をいたしますね」
なんて、情け容赦無い言葉が来る。コアちゃんは疲れてないのかと不思議に思ったが、そう言えばこの疲れたような感覚も気のせいだったのを思い出した。そう私は既に人間ではないから、お腹も減らないし疲れることもない。エネルギーが有る限り全ては気のせい・・・
なんてブラックな世界なんだと心で涙を流しつつ、
「えーと、確かダンジョンマスター能力の代わりを貰ったんだよね?」
「はい。それと共に正規のダンジョンとしての権利と義務も与えられました。取り敢えず一つ一つ確認していきましょう」
そう言ってどこからかに取り出したのが、
「これは?タブレット?」
「はい。いわゆるタブレット型PCというものですね」
本来ダンジョンマスターが担当しているのは、ダンジョンの意思決定と外部とのコミュニケーションなのだが、その能力の代わりに作れるようになったのが、このタブレットらしい。
詳しい性能はヘルプ機能で調べていけばいいのだけど、何よりすごいのが元の世界のネットに繋がっていることだった。これは良いものだ!本当に良いものだ!!
しばらく夢中でタブレットを弄り回してしまう。コアちゃんが言うには取り敢えずの連絡先として、コアちゃんとサブコアと弁天さんのアドレスが登録されていて、ついでに魔獣の森の守護神様とも連絡できるようになっているそうだ。
他にも色々有るが取り敢えず後回しにしよう。ちょっとコアちゃんとサブコアの目が冷たくなっていたからではない。
「これでやっと私達も色々と動く事ができそうだね。今更エネルギーの獲得には意味がないけど、繋がりとして取引とかにも使えそうだし」
「はい。他にも正規ダンジョンの権利として、創造神様を崇める国に土地を貰いました。後程こちらと繋いであちらの拠点として整備しなくてはいけません」
「土地?あの国に土地をもらうの?」
「はい。正規ダンジョンはあの国の貴族と同等の権利と義務が生じます」
詳しく聞いてみるとあの国、正式名称が『偉大で高貴な創造神様がその眷属であるダンジョン神に作らせた〜』とすごく長く、元の世界のタイの首都バンコクの正式名称みたいな感じになっているため、大抵の人は創造神様を崇める国と言っているが、そもそもの成り立ちが創造神様がこの世界で顕現するために、ダンジョン神様が自らの権能で作り上げた、ダンジョンの中にある国だそうだ。
創造神様を崇める国はダンジョンとしての存在意義のために、他の国に資源の提供手段として交易を行ってはいるが、それ以外にも神様達の顕現する場所として聖地になっていたり、
各国の大使館が作られたりもしている。
神様達としては直接国の権力を持つわけにも行かないため、国としての機能は現地の人間に任せているものの、各ダンジョンの交流等も行う場所も兼ねているため、色々と問題が起きやすい状況になっていて、その問題解決のために各ダンジョンは、国の貴族として権利と義務を与えられ、問題に対処するように求められているわけだ。ちなみに勢力としては上位に位置するものの、ダンジョン1年目と新参者のため、我々の立ち位置は伯爵相当等のこと。
具体的な問題としては、ダンジョン間のトラブル対応から、他の国から資源提供の要請。場合によって緊急時の避難民の受け入れだとかまで有るそうだ。
その辺のトラブル対応については基本のマニュアルのような物が存在して、禁則事項についても細かく設定されている。
例えば、一つの国に肩入れしすぎないとか、資源の提供は良くても技術の提供は駄目とか、ここに大使館を持っていない国との接触禁止とかだ。
言われてみれば魔獣の森の西に有る砦の技術力より、創造神様を崇める国の技術は格段に上なのだが、技術の流出をさせていないからのようだ。
で話を戻して、ダンジョンとしてもあの国の貴族としても、あの国に拠点を作る必要があり、そことこのダンジョンを繋いで連絡を取れるようにしてと、要するにうちも大使館の様な物を作れってことだな?一応コアちゃんにも確認したがそういうことらしい。
まぁいきなり領地経営しろとか、事務仕事しに城に来いとか言うのでなければ、別に大した負担にはならないだろう。
権利と義務のうち、取り敢えずあの国の貴族としてはわかったから、さっさと作りに行こうかなと思ったら、
「取り敢えずサブコアと弁天さんと相談して、大体の屋敷を作成いたしましたので、確認をしてもらってもよろしいでしょうか?」
仕事の早いコアちゃんが既に完成させたらしい。もう慣れたがいつの間にかコアルームに扉が増えていて、そこを抜けるとかなり広い敷地に、一階建ての大きなお屋敷が建っている。うまく説明できないけど、大名屋敷みたいだ。
「ますたーの記憶にある建物の中でも、特に種類があるタイプで構成してみました。お屋敷の中央部分が応接兼マスターの部屋として、周囲に物置部屋や使用人部屋を並べてあります。中央の部屋の隣にダンジョンへの扉を設置していますので、急な来客にもすぐに対応できます。お庭は石庭をお手本に作りました。とは言えこちらのお屋敷は基本来客用ですから、余り使うこともないと思いますけど、他になにか必要なものがありますか?」
しかし、こっちの世界に畳文化は有るのかなと思ったが、ダンジョンによっては水の中とか有るらしいので、問題にはならないとのこと。しかしこれ全部弁天さんに管理してもらうのかな?他の方法も考えたほうが良いのだろうか?
コアちゃんに確認すると、うちのダンジョンは伯爵待遇なので、その家格にあった人数を雇う必要があり、基本の応対についてはその使用人にさせなければいけないそうだ。
「まぁ弁天さんがあっちにずっといるよりかは良いかな?でもどうしよう?雇うなら募集とかかけないと行けないだろうし、面接とかもしなきゃいけないしな」
「その心配は有りませんよ。今回マスターが正規のダンジョンと認められたのは、既に国中に知られていることですから、いくらでも押しかけてくるでしょう。門に採用の予定の紙でも貼っておけば、それで問題有りません」
なるほど。確かにそういうものなのかも知れない。こういった所も私の常識とは違っているんだな。
「使用人はダンジョンに入れないつもりだけど、スパイみたいなのが居たら嫌だから、面接は頑張らないとな」
「その心配には及びません。既に私はこの国に広がりつつありますし、そういった事をしようとしている者も確認しています」
さすが弁天さん。そう言えば会場で胞子まいていたし、そのうちこの国中に広がるか。
「そうしたら、1週間後に面接を行いますと門に書いておいて。それとそれまでの警備として弁天さんも交代で詰めていてくれる?」
「わかりました。全力で警備いたします」
「まぁ取られるようなものも無いし、来客対応と居座られないようにだけ見てもらえれば。あ、そう言えばダンジョンへの扉って無防備なの?」
うっかりしていた。いきなりあそこからダンジョンに攻められたら?と思いコアちゃんに確認すると。
「あの扉は神様が作ったものですので、ダンジョンの身内以外は利用できません。一応許可をすれば他の者も通れますけど」
「そっか。それは良かった。じゃぁ一旦戻って続きを話そうか」
大名屋敷に居ても特になにもないなら、ダンジョンに居たほうが落ち着くからね。
帰ったらまた色々と確認しなくてはいけないし、早くその辺の対応を終わらせて、ゆっくりしたいな。




