第32話
何故か売られた喧嘩を買ってしまった白黒弁天さん。二人でどちらが行くかと話しているが、まぁどっちでも同じなんだけどね。壮絶な高速じゃんけんにより黒弁天さんが行くことになった。
相手のマスターは二足歩行の豚といった見た目をしている。おそらくはオークなのだろうが、喧嘩を売ってきた時も部下にやらせるつもりのようだったし、本人はあまり強くないのかも知れない。
とは言え、私が戦ったらすぐに負けるだろうから絶対に戦わないけどね。
「えーとそちらが喧嘩を売ってきましたので、ルールはこちらが決めますね。まず時間と場所は今ここでで良いかな?そちらが最初に言ってたように部下同士の戦いで、うちはこのノワールが出るけどそちらはどうします?」
「そんな細っこい娘が出るのか?決闘が終わったらたっぷり可愛がってやろうか?クックック。ろくな部下も居ないと思っていたがまさかそいつを出すとはな。最早決まったようなものだが手加減はせんぞ。俺様のジャイアントオークの恐ろしさを見せてやる。そこの娘もさっきの暴言を後悔するが良い」
どこから出てきたのか、身長が4〜5mはありそうなモンスターが出てきた。何やら丸太を持っているがそれが武器なのか?確かにかなり強そうでは有るが、弁天さんもやる気だし今更やめることも出来ないだろう。
「そうしたら後は決闘方法ですが、特に縛りは無しで良いのかな?勝ったら相手の今持っているエネルギーの1割?ですかね?まぁそんな感じで審判さんお願いします」
「はい。ミレルド丘陵マスターから魔獣の森マスターへの決闘の申込みを確認。魔獣の森マスターがこれを受諾し条件を決めました。これより決闘を行います。部下同士の決闘ですので降参するか死ぬまでになります。では専用フィールド展開。」
さっきも見た白いドームが、ノワールと相手のジャイアントオーク包むように発生する。
すでに周囲には観客が集まっていて、決闘を見守っている。
ジャイアントオークは丸太を持ち荒ぶっているが、ノワールの方はカーテシーをして優雅に待っている。
「ファイト」
声と同時にジャイアントオークが前へ進むが、数歩進んだ所で倒れ込む。
「念の為ゴミは焼却いたします」
ノワールはそう言うとスカートをちょっとだけ持ち上げて、足元から何かを数個蹴り出す。
倒れたジャイアントオークの近くまで転がった所で、破裂し周囲を一気に燃え上がる。その火力の凄まじさに一瞬目がくらむが、すぐに火は消える。
まぁ何が起こったかと言うと、開始の合図で胸部から魔法弾を発射。高速で飛来する魔法弾を避けれなかったジャイアントオークは、頭部に魔法弾が当たり即死したってところかな?
おまけと証拠隠滅のために焼夷手榴弾で焼却処分。
なんの盛り上がりもなく決闘は終わり、あとに残ったのは殆ど焼き尽くされた灰と炭の塊だね。しかし、焼夷手榴弾ってこんなものだったっけ?鉄とかは溶かせるけど、あの短時間で灰になったりするかな?なんて考えていたのだが、執事風の審判が状況確認をした後告げる
「ジャイアントオークの死亡を確認しました。魔獣の森の勝利です」
「待て待て待てイカサマだ!俺様のジャイアントオークがこんな簡単に負けるはずがない!決闘にイカサマを持ち込みやがった!」
ミレルド丘陵マスターが騒ぎ出し、周囲も『確かにイカサマだろう』等とざわめき始めるが、それは悪手なのでは無いかな?
「イカサマとはどの様な状態を指すのでしょう?それとも法と裁きの神の眷属神たる私に対しての侮辱ですか?」
「イカサマでないなら何が起きたか説明しろ!俺様は正義と支配を司る神様の配下として、すでに三〇年ダンジョンを経営している。その俺様のジャイアントオークを、ダンジョン経営一年目の若造が一瞬で倒せるわけがないだろ!神だと言えば信じるとでも思っているのか?イカサマでないなら証拠を出せよ!こっちは正義と支配を司る神様にこの事を言ってもいいんだぞ!神までがぐるでイカサマしたってな!!」
ん?そんな事がまかり通るのか?と周囲を見ると、ポツポツと青い顔をしている人?がいる。
「神兵よ。神への侮辱が行われました。この者達を捕らえなさい」
すかさず騒いでいるミレルド丘陵マスターと、周囲のイカサマだろうと言っていた人?達が拘束されていく。何でこんな馬鹿なことをしたんだ?まだなにか言っているが、正義と支配を司る神様の名前まで出してしまったら、そちらにも被害が出るような気がするのだが?と不思議に思っていたら、
「マスター。オークは頭が悪いですから」
と、コアちゃんが教えてくれた。
ダンジョンマスターになっても頭の悪さは変わらないのか?逆によくそんなのでダンジョンマスターになれたな。もしかしてそこにも不正があったのだろうか?そんな事を考えていると、魔獣の森の守護神さまがやってきた
「待たせたな。中段にお前たちの席ができた。取り敢えずそこで休んでいろ。後で改めて謁見の時間が与えられる」
なんだろう?この茶番までが一セットだったのか?弁天さんもいつの間にか戻ってきているし、ふと見るとさっきまであった灰やら炭も無くなっている。なんだか誰かの手のひらの上に居るような感じなのだが、それを誰かに言った所で変わるものでもないし、取り敢えず中段の席で休むとしよう。




