第30話
創造神様の座っている椅子の周りは近くで見てみると更に段差があった。二つの椅子のある台はだいたい10m四方で、段差は20cm程だろうか?段差の上は全て赤い絨毯になっていて、その中央に二つの豪華な椅子があり、向かって右のほうが豪華なところを見ると、おそらく女性の方が創造神様なのだろう。先程の声からもそう思えた。
近くになってはっきりと見る創造神様は、遠目で見るよりも美しかったのだが、なんと言って良いのだろうか?遠目で見た時は冷たさを感じるような美しさ?ここまで来てみると母性のような温かい美しさ?それも一瞬目を離したすきに、印象がまた違ってくる。それにはっきりと見続けることも出来ない。なんというか後光がさすというのだろうか?別に光っているわけでもないのだが、何というのだろう?これがオーラというものなのだろうか?
などと考えていると、段差から更に数m程離れた所でブランク様から、
「創造神様の御前だ、ひざまずいてご挨拶するように」
と言われた。
正直こんな時の作法なんて元の世界に居たときでも詳しくは知らない。ふと視界にコアちゃんがひざまずいているのが見えたのだが、コアちゃんはふわっとしたロングのイブニングドレスなので、脚がどうなっているかわからないが、カーテシーの更に深いバージョンなのか、両手でスカートの裾をちょこんとつまんでいて、軽くうつむくような姿勢に見える。
グズグズしていては怒られてしまうしと、私は日本古来の礼儀作法に則ることにした。
両膝を地面について両手を揃えて地面に付き頭を下げるやり方。つまり土下座だ。
イメージとしてはお白州だ。裁かれるわけじゃないけど、これしか思い浮かばなかったから仕方ない。ちなみにこの態勢は、少しお腹の出た私にはかなりきつかったりする。敬意を表すには丁度良いのではないだろうか?
だが、私が土下座をした瞬間、左の方からあざ笑うような声が聞こえてきた。右の方からは何も聞こえないから、おそらく左側が正義と支配を司る神様の派閥なのだろう。
そんな事を考えていると、
「ふむ、異世界の作法だな。そのままでは話もできぬだろう。許可するから顔を上げるように」
創造神様からお許しが出たので、上体を上げて前を見る。手は膝の上に置き前を真っ直ぐ見る形だ。正座とも言う。
「始めまして創造神様。私はあああと申します。本日はこの様な場にお招きいただきましてありがとうございます。改めてお礼を申し上げます」
何度も言うが私の記憶にこの様な場の作法など無い。なのでなるべく敬意を表すような言葉を選んだつもりだ。間違ってても今更仕方ないことだし、取り繕うすべも無いからな。
「そなたの置かれた状況については既に知っている。あまり硬くならずに楽にせよ。
さて、今回この場にそなたらを呼んだのは、今年の最優秀新人賞をそなたらが獲得したからだ。本来なら野良のダンジョンは許されるものではないのだが、状況が状況なだけにその点は不問に処す。改めてそなたらのダンジョンは正規のダンジョンとして登録し、正規のダンジョンとしての権利と義務を与える。これからも魔獣の森のダンジョンを経営するように」
おお。正規のダンジョンとして認められた上に、今後のダンジョン経営も任せてもらえるとは、と考えていたが、
「うん?お待ち下さい!」
まぁ当然のように横槍が入った。おそらくは正義と支配を司る神様なのだろう、豪華な白いローブを着て巨大な剣を背負った老人が、左側から現れた。
「うん!この者は神を欺き法を乱した犯罪者です。そのような「下がれ!創造神たる我が正規のダンジョンと認めた!それが全てだ!!」
正義と支配を司る神様の発言をさえぎり創造神様が一喝すると、流石に元の位置に戻っていった。そもそもまだ創造神様が話しているところに、横やりを入れたのだから当然と言えば当然なのだが。
すかさず深々と頭を下げて、
「正規のダンジョンとして認めていただき、ありがとうございます。これからはより一層ダンジョン経営に励みたいと思います」
と、状況を確定させてしまう。
「ふむ、良い答えだ。ついてはこの一年での実績を賞して、なにか褒美を取らせたいと思うが、なにかあるか?先に言っておくが、異世界の作法に則り三回断る必要はないぞ。こちらでは上の者が褒美をと言ったのに対して拒否すれば、そのまま首をはねられても文句は言えぬゆえな」
危な!一旦断るところだった。先に言ってもらえて良かったよ。さて、
「恐れながら申し上げます。まずこちらの作法を教えて頂きありがとうございます。そういった事でしたらお願いしたい事があります。既に状況をご存知とのことでしたが、私はイレギュラーなダンジョンマスターですので、本来のダンジョンマスターの知識や能力にかけます。出来ますればそれを与えていただけるか、学ぶ機会を頂けないでしょうか?」
「ふむ、残念ながらそなたに新たに力を授けることは出来ない。それをしてしまうと私が作ったルールを私が破ることになってしまう。また学ぶ機会も与えることは出来ない。百年かけても知識は得ても能力は身につかん。とは言え不便でも有るだろうし、何か・・・
ふむ、コアよ今そなたに新たな力を渡した。それを持って代用とせよ。詳しくは後程話合うが良い」
「あ、はい。わかりました」
コアちゃんが少し上ずったこえで返事している。まぁなにかあるなら良いか。
「ふむ、とは言えそれは正規のダンジョンなら当たり前の物。褒美とは言えぬゆえ他に希望を言うが良い」
「でしたら、我々に後ろ盾となる神様を紹介していただけないでしょうか?今度のことも後ろ盾となる神様が居ないために、起こったことだと思いますので、出来ますればどなたか紹介していただけますれば幸いです」
「うん。では私が後援しよう。元々そのコアは私の配下の物。そんな能無しより優れたマスターを付けて、魔獣の森のダンジョンを支援しよう」
なぜか創造神様ではなく、またもや正義と支配を司る神様が出てきた。それだと完全に私は居場所がなくなるのだが?しかもダンジョンが乗っ取られてしまうのだが?
「ふむ、正義と支配を司る神よ。そなたは先程から何を言っているのだ?審議は後ほどと言ったのは、後で言い分を聞くためではないのだぞ?既に事実は定まっておる。この場で審議を行うと神々は大丈夫でも、他のものが無事ではすまぬゆえ後にしただけだ。お前らは大人しく端っこにでも控えていよ」
ついに創造神様が切れたのか?淡々と冷たく言い放ち周囲にさっと視線を巡らせた。
正義と支配を司る神様はまだその場で『ぐぬぬ』とか言っていたが、神兵が両脇に立つと大人しく下がっていった。
「ふむ、後援の神か。私がなるのが一番良いと思うのだが、私は創造神ゆえ一ダンジョンの後援をするには問題が有る。とは言え色々と有るだろうから・・・・
ーーーよ。そなたを新たな神に任ずる。魔獣の森の守護神として権能を得、このダンジョンの後援をせよ」
「はっ。今後は魔獣の森の守護神として、彼の地と彼の地に生きる全てを護る事を権能といたします」
ブランク様が白く眩く輝き、その姿が変化していく
幻想的なその光景に見とれていたが、やがて光が収まりその姿を表す
その新しい姿は・・・
ウミウシ?
半透明の姿で背中のぐにぐにが無くなった代わりに、ひらひらが前?と後ろ?に現れて、青っぽかったり黄色ぽっかったりするその姿は、ウミウシ?
「ふむ、この者は我が眷属神でも有る。もともと彼の地には誰ぞ重しを置かねばと思っていた。この者がそなたらの後ろ盾になるだろう」
「改めてよろしく頼むぞ。今後は魔獣の森の守護神と呼ぶが良い。なにか困ったことがあれば頼って良いぞ」
胸?を張ってどうどうと告げるその姿は、やはりウミウシ?いや、創造神様の眷属神である魔獣の森の守護神様なら、頼りになるだろうことは間違いないはず?




