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三章~11話 ダンジョンアタック二回目2

用語説明w

倉デバイス:仮想空間魔術を封入し、体積を無視して一定質量を収納できる


流星錘(りゅうせいすい):三メートルほどの紐の先に、細長い重りである錘が付いた武器。錘にはフックが付いており、引っかけることもできる


四階層

二つ目の部屋でモンスターに遭遇した


「ミノタウロスだ。多いな、九匹だ」

部屋の中を覗くと、牛頭の大柄な人型モンスターが座っていた


「…行くぞ」

ハンクが前に出る


「待て、いつも通りいこう。何匹か俺が引き付けるから、陣形を取ってくれ」

俺がハンクを一旦止める


「…敵の数が多い、気をつけろよ」


「分かった」


ハンクから声をかけてくるなんて珍しいな



これだけ数が多いと、銃が欲しいと思ってしまう

だが、弾数に限りがあるダンジョンで銃はきつい

倉デバイスがあれば、弾をたくさん持ち込めるんだけどな…



「ブモォォォッ!」


一匹目が突っ込んでくる



部屋の奥に回りながら、俺はミノタウロスをおびき寄せる


ミノタウロスのこん棒の一撃を躱す

同時に、流星錘を膝に投げつける


痛みで体勢を崩しながらも、ミノタウロスが殴りかかって来る


()()()



フワッ…


「ブモォォッ!?」



一歩進んで、こん棒を持つ手首に触れる

そして、体の回転で巻き込むように落とすと、ミノタウロスの体が抵抗もなく浮いた


背負い巻き込みだ


すかさず、喉にショートソードを突き刺す



今度は、斧を持ったミノタウロス

全力で振るう一撃


ギリギリで避ける事で、振り終りの隙を狙える

背中の触手に溜めていた精力(じんりょく)を開放、…跳ぶ!



ブォッ! …ドスッ!


「ブゴッ…」



また喉にショートソードの突き

一撃で仕留める


やはり急所狙いは殺傷力が高い



「ラーズ、こっちに来い!」

フアンの声がして、振り向くとギガントの前衛、エスパーの後衛が出来ていた


四匹のミノタウロスが向かい、俺の方には三匹向かってきている

ちょうどいい、斥候は敵を引き付けて分断するのが仕事だ


流星錘、投げナイフで牽制しながら、三匹のミノタウロスを引き付ける


ミノタウロスの振りかぶりに合わせて突っ込み、勢いを乗せた正拳突きを叩き込む


一撃打ったら離脱

攻撃終わりの隙に流星錘を撃ち込んでダメージの蓄積を狙う



…しばらくして、タルヤ達を振り返ると四匹のミノタウロスを掃討しつつあった


分断するとさすがに早い

よし、合流だ



俺は触手に溜めていた精力(じんりょく)を開放して、最高速度でタルヤ達の所に合流する

この飛行能力は、脚力の加速に追加して使えばかなりの初速を出せる


軍時代に使っていたホバーブーツとは違う感覚の機動力

はっきり言って、めっちゃ使える技能だ



ひゃっほう!

なんたって、少しとはいえ空を飛べるんだぜ!


訓練したら滞空時間が延びるのかな?



残りの三匹のミノタウロスは、ハンクとフアンががっちりガード、タルヤとアーリヤの範囲魔法で簡単に倒れた

やはり、ギガントの一撃とエスパーの魔法は強かった



四階では二回戦闘になったが、特に問題なく進めた

ここまで、全員に負傷無し

いい感じだ


「次はいよいよ五階だ。情報端末の場所で休憩を取る」

ハンクが言い、全員が頷いた




・・・・・・




四階から五階に向かう階段の途中に平らになっている小さな空間があり、そこに情報端末が置かれていた


この情報端末で報告をすれば、四階層を越えて五階層に到達したので、到達ポイントを五ポイントゲット

しばらくは基礎訓練に戻らずに済む


何でも、このダンジョンはBランクの教官が踏破し、各階の間には情報端末、フロアにはカメラを設置している

それで被検体達のサバイバル能力を見て卒業を決めているのだとか


だから、前回のアタックの時のフアンの醜態を見られて、トラビス教官にぶっ飛ばされたんだな…


「ハンクとアーリヤは五階まで行ったことがあるんだろ? 敵はどうだったんだ」

俺は、ハンクとアーリヤに尋ねる


ちなみに、フアンとタルヤは爆睡している

疲れたのだろう、俺みたいに軍の経験があるわけじゃないのによく頑張ってくれていると思う


「モンスターは少ない。…ただ階層ボスがいる」

ハンクが答える


「階層ボス?」



階層ボス


ダンジョンは、ダンジョンコアというモンスターの体であり、階層ごとに次元をずらしてモンスターを体内に招き入れている

その理由は、入って来たモンスターからの魔素を取り入れるため、そして入り口から入って来た俺達のような異物の排除のためだ


ダンジョンによって違うが、階層ごとに強いモンスターを招きいれてボスのような扱いをされているモンスターがおり、それを階層ボスと呼ぶ


そして、ダンジョンコアのいる最下層にも強いモンスターがいることが多く、そのモンスターはダンジョンのラストボス、通称ラスボスなんて呼び方をされている



「ハンクとアーリヤは、その階層ボスと戦ったのか?」


「いや、前回は同じパーティーの奴が負傷していて、五階を様子見だけして戻った。姿は見れていない」

ハンクが首を振る


「…あんな奴と組まなければ、階層ボスとも戦えた」

アーリヤが無表情で言う


「今回のパーティならどうだ? 連携も取れているし、階層ボスと戦えると思わないか?」


「お前の陽動がいい。それは認める」


「…でも、階層ボスは単体の可能性が高い。陽動で戦力を分散させることはできない」

アーリヤが俺を見た


「単体なら俺も攻撃に参加する。そして、エスパーの防御役にも回るよ」


「…」「…」

二人が黙って俺の顔を見る


「ハンクとアーリヤの実力は聞いているよ。俺はドラゴンタイプ、斥候として補助に回るから、思う存分火力を出してくれ」


「…あなた、名前何だっけ?」

アーリヤが口を開いた


「いや、覚えてねーのかよ!? ラーズ、D03のラーズだよ」


どんだけ興味なかったんだ!


「お前は覚えておいて損は無さそうだ。覚えておく」

ハンクが言う


「そっちのエスパーはタルヤ、ギガントはフアンだ。一緒の仲間なんだから覚えておいてくれ…」



小一時間ほど休むと、俺達は出発した


「…ちょっと寝ただけでかなり回復したわ」

タルヤが笑顔を見せる


「俺もだ。やっぱり休憩は大事だな」

フアンが言う


よかったな、お前ら

顔に元気が戻ってきているぞ




五階層


水晶がキラキラと光る、今までとは少し違う洞窟になっていた


「綺麗ね、持って帰ろうかしら」

タルヤが、冗談なのか本気なのか分からないことを言う


「この階に、階層ボスのモンスターがいるらしいんだ。油断するなよ?」


「階層ボス!?」

タルヤとフアンの顔が一気に緊張で固くなる


そういや、寝てたから言ってなかったな


「どんなモンスターなの?」


「いや、ハンクとアーリヤもまだ見てないんだって」


「ふーん…」


確かに、階層ボスのモンスターの情報は少しでも欲しいよな…

どっかに、足跡とか爪の痕とかないもんだろうか?


せめて、どんなタイプなのかだけでも特定したい



「ねぇ、ちょっと試してみたいことがあるんだけど」

ふと、タルヤが全員を呼び止める


「…何?」

明らかに不機嫌な態度をとるアーリヤ


「私、サイコメトリーが使えるんだけど、ここの水晶に使えば階層ボスの情報が分かるかもしれない」


そう言えば、タルヤはサイコメトリーを訓練場で練習していたな


「水晶に?」


「ええ。水晶や宝石などは、精力(じんりょく)が溜まりやすい性質があるの。だから、モンスターが歩いた状況とか、過去の被検体の体験がもしかしたら読み取れるかもしれない」


「なるほど…。戦う前に情報は欲しい。やってみてよ」

俺は、言いながら全員に同意を促す


全員が頷いたのを見て、タルヤが壁の水晶の前に座って手を添える

その間、俺とアーリヤが周囲の索敵をする



「…」


タルヤは、いくつかの水晶を選びながらサイコメトリーで読み取っていく



「…あった……」

タルヤが静かに言う


「…えっ、どんな…?」

アーリヤが喰いついた


「…大きな角……枝分かれした……これは…鹿……?」


「鹿のようなモンスターなんかいるのか?」

フアンが言う


「角から水が滴っている…水属性なのかしら…?」


「そのモンスターが階層ボスでいいのか?」

俺が確認する


もしかしたら、普通のモンスターの可能性もある


「…間違いないと思う……水晶に残った雰囲気が…普通のモンスターとは違うから……」



サイコメトリーで読み取る情報は精力(じんりょく)

つまり、視覚情報や聴覚情報ではない


生物がいなければ客観的な情報である可能性は高い

だが、生物がいる場合はその感情や雰囲気、脳内で一度処理された情報が精力(じんりょく)に影響されて残されている


だからこそ、通常の情報とは質が違う

生物の感情などの情報が増える代わりに、誤った認識の情報が残されている可能性も出てくる



「水が滴った鹿…、多分、エイクシュニル…」


アーリヤ呟いた



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― 新着の感想 ―
[一言] タルヤは名前覚えられるかもね!フアンは知らん!w エイクシェニルって名前どっかの神話にでも出てそうw そんで昨日感想送ったと思ったら送ってなかった…
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