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三章~9話 二回目のパーティ

用語説明w

ナノマシン集積統合システム:人体内でナノマシン群を運用・活用するシステム。ラーズの身体導入されているが、現在は停止措置を施されている


トラビス教官:施設の教官でBランク戦闘員。被験体を商品と割り切っている


タルヤのありがたみを感じる


疑問を解消できる

それはなんて効率的な技術と知識の習得方法なのだろうか



「うん、上手くなったわね」

タルヤが俺を()()()()


「浮力が安定してきたよ」


「でも、何で急に姿勢が安定したの?」


「姿勢だね。体幹を意識して、体をまっすぐに維持するとバランスが取れる。逆に、テレキネシスに意識が行きすぎて体幹の力が緩むとバランスを崩すんだ」


「姿勢…、ヘルマンが大事っていつも言ってたわね」


「うん。どんな状態であれ、人間の体は姿勢によってパフォーマンスが変わるっていうのは間違いないよ」


飛行能力の獲得

これは、俺にとっては大きな進歩だ


ステージ2で、地味に続けて来たサイキック訓練

これはタルヤのおかげだ


ステージ2を生き残るために武器術を優先してきたのだが、タルヤの指導のおかげで精力(じんりょく)の制御もできるようになっていた

そのおかげで、一度コツを掴んだらあっという間に飛行能力が開花した


一度浮くことが出来れば、姿勢の制御はホバーブーツの経験が生きる

崩れにくい姿勢を探して維持すればいい


滞空時間はかなり短いが、脚力以外の推進力が手に入るのは大きい

背中の触手に精力(じんりょく)をチャージすることで急加速もできる

戦闘において、上空を取れるという恩恵は計り知れない



「…タルヤ、何をやってるの?」

タルヤが座って、何かの訓練を始めた


「これはテレパスの一種で、サイコメトリーよ」


「サイコメトリー?」



サイコメトリー


テレパスの一種で、物体に残った精力(じんりょく)、つまり残留思念を読み取る能力だ

感情であったり、知識であったりを読み取ることができる


更に、自然界の精力(じんりょく)は生物の存在とは関係なく物体に蓄積するため、この能力は地質学や考古学にも利用されている



「私、テレパスの感知能力が高いらしくて、トラビス教官に勧められたの」


「へー、そうなんだ。あの教官に勧められるなんてすごいじゃん」


「…感知能力はダンジョンでも役に立ったから」

タルヤが少し照れながら言う


こんな状況でも、実力が伸びることは嬉しい

この施設を出るまでは前向きさが必要だ


そして、能力は高ければ高いほどいい

努力を続ければ、現状よりも進歩することは間違いない



「次は武器術、付き合ってくれる?」


「オッケー」


俺達は訓練を続けた




・・・・・・




次の日


教官に呼ばれて行くと、廊下でタルヤに会った


「ラーズも呼ばれたの?」


「ああ、エントランスに来いって」


俺達が向かうと、他に三人の被検体が来ていた


「ラーズじゃないか!」


「あ、フアン。お前も呼ばれたのか」


前回、俺と一緒に「下」に降りたギガントのフアンだ


そして、なんとアイアンカップルがいた

アイアンカップルは、ステージ2で凄い実力を持つと言われていたカップル

鉄拳のハンクとアイアンメイデンのアーリヤだ



「集まったな」

待っていたのはトラビス教官だ


「次はこの五人でパーティを組んでもらう」


ついに、またダンジョンアタックか…


「このパーティを組むにあたって、最初に言っておくことがある」

トラビス教官がフアンを見る


「はい?」



トラビス教官が闘氣(オーラ)を発動して、フアンを拳で殴り飛ばす



ドッ…、ゴガァッ!!


「…がっ……!?」



闘氣(オーラ)で強化された速度と硬度から繰り出されるパンチ

ギガントであるフアンの体が一撃で壁まで吹き飛ばされた


「ダンジョンでの行動を確認した。このゴミ虫が…、考えを改めさせてやる」


「う…あ……」

フアンが、血反吐を吐いている


ギガントの強靭な腹が拳の大きさに凹んでいる

やはり、強靭な体というだけでは闘氣(オーラ)には勝てない


「強化兵は、どんな状況でも冷静に判断して任務を遂行する必要がある。時に、自分の命を使ってでもパーティや部隊を生還させなければならない!」


「う…」


「今回はラーズの機転で生還できたようだが、足を引っ張るような不穏分子は必要ない。…これが最後のチャンスだと思え」


「ひっ…」


トラビス教官から発せられる威圧感に、フアンが委縮する

確かに、フアンの行動は部隊を危険に晒す行為だった


だが、それは慣れていなかっただけだ…、と思う

俺だって、軍に所属して最初の戦闘は恐怖にかられた



トラビス教官が俺達に向き直る

「…聞け。我が施設は、このダンジョンの制覇を成し遂げた被験体を未だに作り出せていない」



ゾクッ…


トラビス教官が闘氣(オーラ)のプレッシャーを強める



「今期で、必ずダンジョン制覇を成し遂げる。私の沽券にも関わるからな」


…いや、お前の実績とか知ったこっちゃないんだけど


「今回は期待のメンバーだ、結果を楽しみにしている。…期待を裏切るな」

そう言い残して、トラビス教官は行ってしまった



「おい、お前達。俺達の邪魔だけはするなよ」

「…」


ハンクとアーリヤは、悶えているフアンを見下すように言って去っていった


「…フアン、大丈夫か? 医療室に行こう」


「ラーズ、すまない…。俺、モンスターに襲われて怖くなって…」

フアンが半泣きになっている


「誰だってそうさ。フアンはモンスターの恐ろしさを体験した。次は大丈夫だ」


「ラーズ…」


「俺もタルヤもフォーローできる。お前一人だけで戦うわけじゃないから安心して頼れ」


「う…、すまん…」

フアンがさめざめと泣きだす


お前、ごつい体してるのに打たれ弱いな!


そして、そんなフアンをタルヤが優しく介抱する

精神的に追い詰められている奴を放っておけないのかもしれない


フアンを医療室に連れて行き、ナースさんの回復魔法を受けさせた



…出発は明日の朝を指定された

それまでは自由時間だ


「ねぇ、ラーズ。あのポッド、どうだった?」

フアンの治療を待っている間、タルヤが話しかけて来た


「椅子は柔らかいけど乗り心地はよくなかったね。行きも帰りも寝ちゃったよ」


「行きは落ちる感覚が凄かったんだけど、帰りは魔力を感じたのよね」


「魔力? 魔法で戻って来てたってこと?」


「うーん…、私も寝ちゃったからなんとも言えないんだけど…」


「ダンジョンって地下にあるんだよね。何で帰りだけなんだろ?」


「だから、もしかしたら異世界とか別の場所の地下なのかもって思ったんだけど…」


「転送されているってこと? でも、それなら行きも魔法が必要になるしな」


「そうなの。だから、違和感を感じたのよ」


タルヤは魔法が使えるエスパーだ

俺はチャクラ封印練によって魔法が使えないため、魔力の感知はできない



「終わったわよー?」

医療室からナースさんが呼んでくれた


「フアン、大丈夫か?」


「ああ、ナースさんが回復魔法で直してくれたよ」

フアンは元気そうに言う


「フアンは私がこれからケアしてあげるの。でもその前に…」

ナースさんが俺を見る


「え?」


「定期健診の注射だけ打っちゃいましょうか」

ナースさんが注射器を取り出した


「え、あー、やらないとだめですか?」


それ、ナノマシンシステムの停止用の溶液だろ?

知ってるんだからね!?


「やらないとー、だ・め・よ? その代わり、頑張れたら…フアンの次にケアして、あ・げ・る…」

ナースさんが俺の顔を胸に埋める


「もがっ…、ちょっ…、ナースさん!?」


ナースさんの香りが…!

空気が薄い…!


「…ラーズ、早くやっちゃいなさいよ」

そして、タルヤにジロリンチョされる


「はい、動かないでねー」

そう言って、ナースさんは俺の左肩に停止溶液を注射した



「…それじゃあ、フアン。また明日な」

「お大事に」


俺とタルヤは、ナースさんの胸に顔を埋めたフアンに声をかけて医療室を出る

男は女性の胸の魔力からは逃げられない、間違いない


「注射、大丈夫なの?」


「戻って来てビニールは挿入しておいたから大丈夫だと思う。抜き出すの手伝ってよ」


「ええ、早くやりましょう」


訓練場に行き、鎖骨の下辺りに挿入しておいたビニールのシートを取り出す

タルヤが消毒したナイフを刺し、中から引きずり出した


「うっ、痛い…」


ビニールが受け止めていた透明の液体と共に、俺の血も流れ出る

また停止溶液を体外に排出することができた


多少は体内に残るだろうが、ナノマシンシステムのコアの活動は止まっていない

地道に、ナノマシンシステムの素材を集めながら復活を目指していく


だが、心なしかタルヤのナイフが雑になっている気がした


痛いんだよ?

結構痛いんだよ?


タルヤは頬を膨らませていた




アイアンカップル

二章~6話 選別の反省

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[一言] タルヤも可愛いんだけどなぁ…フィーナが許してくれるかどうか…
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