表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

44/394

二章~2話 選別のバージョンアップ

用語説明w

ドラゴンタイプ:身体能力とサイキック、五感が強化されたバランスタイプの変異体。背中から一対の触手が生えた身体拡張が特徴


ヘルマン:ドラゴンタイプの変異体。魚人のおっさんで元忍者、過去に神らしきものの教団に所属していた


朝方、選別終了の放送が入った


夜の間響いていた戦いの音で全然眠れなかった…



俺はヘルマンに声をかけて食堂に向かう


食堂も、ステージ1と内装は変わらない

ただ、メニューは日替わりで統一されていた


ステージ2は全員が完成変異体となっており、被検体の強制進化の進行度によってメニューを変える必要がないからだろう



「ステージ1より飯はうまいですね」


「そうだな」


ヘルマンと朝食を食べると、すぐに移動

一番大切な準備のためだ


向かったのは運動場


ステージ1の運動場は体育館のような作りだったが、ステージ2の運動場は道場のような内装となっている


壁際には、たくさんの武器が置かれていた

中央には打ち込みようの丸太や巻き藁、的などが設置されている


ステージ2の運動場は、体を動かす場所ではなく訓練をする場所として作られているようだ


そして俺達の目的は、選別に備えるための()()()()()()


「武器はどんなものがあるんだ?」

ヘルマンが言う


確かに気になるな

俺達が探したところ、全部近接武器だった


「刀、ナイフ、大剣…、鎖鎌、槍、斧、いろいろありますね」



…トラビス教官が説明した、選別の説明


「ここで使える武器は、近接武器や投射武器だ。銃や火薬類、杖などはない」


「近接武器?」


「先に、お前達強化兵の運用目的を話しておこう」

教官が話を始める



変異体による強化兵士の運用目的


それは、極地戦闘だ

ジャングル、砂漠、雪山、火山などの極端な環境を含む、どんな環境にも対応可能

そして、補給を必要とせずに長期間活動でき、目的を達成する



「…だからこそ、このステージ2においては銃器や魔法は一切禁止だ。近接武器であれば、現地調達が可能、弾薬などの補給も必要としない。そして、強化された身体能力をいかんなく発揮できる」



魔法は、杖が無ければ威力が極端に落ちるが、杖を現地調達で作るのはほぼ不可能だ

そして、魔力探知に引っかかりやすく居場所を特定される

銃器もサイレンサーが無ければ銃声が響き、更に弾薬の補給が必要になる


その点、近接武器であれば継続使用でき、隠密性も高い

変異体のギガントやドラゴンの筋力、エスパータイプのテレキネシスであれば、充分な殺傷能力を持つ


更に、現地において即席で近接武器も作れるため継続戦闘能力も高い

変異体の生命力を生かしたゲリラ戦のプロを育てるつもりのようだ



「ラーズ、いつ次の選別が始まるか分からない。とりあえず武器だけ決めておこう」


「そうですね」


俺とヘルマンは武器を選ぶ


ここの武器は好きなのを持っていっていいらしく、欲しい武器が無い場合は職員に言えば用意してもらえるようだ

更に自分で加工することも可能だ



「お、ジャマハダルがある。俺はこれにする」


ヘルマンは、二本のジャマハダルを両手に持つ

ジャマハダルは拳の先に刃が来る手甲のような武器で、前腕でのガードもできる


「それじゃ、俺はナイフと、片手剣と…」


「ラーズは剣が使えるのか?」


「一応、ドルグネル流の剣術と槍術を学生時代に習っていたことがありまして」


「龍神皇国の流派か?」



ドルグネル流


龍神皇国騎士団でも採用している剣術

世界的にもメジャーな流派だ


習ったと言っても、道場に通ったわけではない

学生時代にセフィ姉に教わった程度だ

だが、セフィ姉は達人級の腕を持っており、指導者としても優秀だった

そして、俺自身もセフィ姉に認められたいと、意欲と下心で頑張れた


俺は軍時代に、ハルバートという槍の先に斧が付いた武器を使っていたことがあり、その扱いに大いに役立った



俺は、槍、ショートソード、ナイフ、そして小ぶりのハンマーをチョイス

ベルトに取り付けた


とりあえず、いろいろ使ってみよう

軍では銃器がメインだったため、あまり近接武器は得意ではない

モンスター相手に近接武器で挑むとか罰ゲームだ



ピーーーーピーーーーピーーーー!!


ピーーーーピーーーーピーーーー!!



「…っ! 何だ!?」



「只今より、選別が開始されました。活躍を期待します。繰り返します、只今より……」



区画内に一斉放送が響き渡った


「せ、選別!? 今朝まで選別をやっていたのにもう次の…!?」


「開始はランダムって言ってたな…」

ヘルマンが唸る


「状況がわからない、この運動場で迎え撃ちましょう」


「出入り口は二つ、逃げ道もあるからちょうどいいな」

ヘルマンが頷いた



「フーー………」


俺は落ち着くために、一度肺の中の空気を全て吐き出す



冷静に

落ち着いて


戦場を思い出せ

出来ることをやるだけだ


俺の目的は何だ?


生き残る、そして強くなること

教団を潰すための力を得ること


…それが、一人だけ生き残ってしまった俺の仕事だ


俺だけ生かされた

そんな自分が、弱いままじゃ許されない



「…っ!?」


不意に感じる


何かが近づいてくる()()

音がしない、忍び寄る歩き方だ



ヘルマンの顔を見ると、頷いて入口を指す

俺とヘルマンは運動場の入口のドアで待ち構える



ギギィ…


入口のドアがゆっくりと開く


入って来たのは、軍服を着た男だった



ドシュッ…


「ぐはっ…!」



一瞬で間合いを詰めたヘルマンがジャマハダルを喉と腹に突き刺す

変異体じゃない、つまり選別の敵ということだ


廊下にはもう三人、同じ軍服がいた



「ヘルマン、杖だ!」


「…っ!?」



俺は、跳び出そうとしたヘルマンを止める

軍服の一人が杖を持っている


俺達は、すぐに入口から離れた



バチバチバチーーー!!


雷属性範囲魔法(小)が発動し、ドア周辺に雷を巻き散らす



汚ねぇな!

こっちは魔法禁止で、敵はありなのかよ!?


魔法の発動は、障害物を無視する

魔法の大きなアドバンテージだ



軍服二人が運動場に侵入

俺とヘルマンでそれぞれを迎え撃つ


俺はショートソードを抜き、右の軍服に斬りかかる



ガンッ!



軍服が前腕でガード、おそらく金属製のプロテクターをつけていて刃が通らなかった

軍服がナイフを引き抜いて斬りかかる


バックステップでナイフを躱す

同時にショートソードを投げつける



「…っ!?」


ガッ!



軍服が焦って両手でショートソードをガード

俺はそれを予想して一気に間合いを詰めていた


引き抜いたハンマーで、ナイフを持った腕、返して顎への打撃


軍服の動きの止まった!

ダメ押しで全力の前蹴りを顎に叩き込む



ゴキッ!


「なっ…!?」



なんと、軍服の首がのけ反るように折れた


な、蹴りで首の骨を叩き折った!?

変異体の身体能力か…!



一瞬動揺するが、もう一人の杖を持った軍服の動きで我に返る


力だけじゃない

ドラゴンタイプ特有の五感の強化が感じ取れる


杖を持った軍服の呼吸、体臭、体温、空気の動き、大地の震動

第六感ともいうべき電磁波の動き、精神の力である精力(じんりょく)の動き


ドラゴンタイプの感覚器(センサー)とは、こんなにも鋭くなるものなのか…!



杖の軍服の視線で、発動魔法が範囲魔法と判断

発動予想地点を飛び越えて一気に接近



「なっ…!!」


驚いて隙だらけだった腹をハンマーで突く



軍服は意識を失って倒れた




「やるじゃないか、ラーズ」


振り向くと、とっくに軍服の一人を倒していたヘルマンが俺を見ていた


「ええ、体の調子はいいですよ。よすぎて力加減を失敗したくらいです」


「トラウマの影響も完全に無くなったな」


「ええ、やるべきことが明確になりましたから」



ヘルマンと話しているとまた放送が入り、選別の終了がなされた

今回の選別は、ほんの三十分ほどで終わった


だが、ステージ2の選別はステージ1とは別物だった


いつ始まるか分からない選別

どこから、いつ襲われるかも分からない闇討ち前提の戦いだ


そして、ステージ1とちがって壊れていない敵

おそらく戦い慣れた、熟練の兵士が相手だ


難易度が桁違いに上がっている



身体能力の把握、そして使いこなすための訓練

テレキネシスの訓練に、武器術の訓練と格闘術の訓練


生き残るために、やるべきことは多いな





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 「軍服は意識を失って倒れた」 ちゃんと止めを刺しておかないの。敵は、減らしておいた方が良いでしょう。
[一言] お!相手も強くなって面白くなってきた!にしても煩くて寝れないのは嫌だなぁ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ