表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/41

03 眠い

「ねむ~……」


 翌朝、渡良瀬愛依は学校に着き、席に座るなり大あくびをする。

 彼は寝不足だった。

 今までは「明晰夢を見る」と意識しない限り明晰夢に突入することも少なかったが、最近は、無意識に明晰夢に突入することが多くなっていた。

 明晰夢を見るデメリットとして、"脳が休まらない"という点が挙げられる。

 週に何度か見る分には問題ないが、毎日続くと寝不足になるのは当然だ。


「あ、愛忌ちん、おはようっしょ~……」


 六斎堂愛忌が静かに教室に入り、席に着く。

 すると、渡良瀬愛依は反省もなく、六斎堂愛忌に絡む。

 勝手に夢の中で許された気でいるところが、明晰夢に毒されていることを証明していた。


「…………」


 当然、六斎堂愛忌は喋らない。

 そう思ったが、


「……ご」


「?」


「……ごめ、さ、い。一昨日、から、ほと、ど、……寝、られて、なくて」


「あれ~? 夜更しはお肌の大敵っしょ~!」


 継続は力なりとはよく言ったものだ。

 こんな適当なコミュニケーションに、六斎堂愛忌は応えようとしている(拒絶反応ではあるが)。

 お互いにコミュニケーション能力がマイナス方向に振り切れているのが掛け合わさって、プラスに転じたのだろうか。


「…………ぐう」


 その日一日、六斎堂愛忌はうとうとと頭を上下に揺らしながら授業を受け、後ろに座る渡良瀬愛依の集中を掻き乱した。




挿絵(By みてみん)


「み、三日連続は、さすがに運命じゃ~ん……」


 案の定、この日の夜も明晰夢だった。

 そして、渡良瀬愛依の夢の世界にいる人物もまた、案の定六斎堂愛忌だった。


「……僕達は唯一関わりのあるクラスメイト。夢に出てくるのは必然。ただ、ちょっとしんどい」


「……何もしないほうがいい?」


「非常に助かる。しかし、普通に散歩するくらいなら問題はない。脳に余計な負荷をかけなければお話をしてもいい」


 夢の中の六斎堂愛忌は、意外にも人懐っこかった。

 渡良瀬愛依も、三日連続で奈落の底から目覚めるのは勘弁なので、今日は六斎堂愛忌に従うことにして、二人で校舎内を散歩することにした。


「……俺、この学校全然知らね~んじゃん……」


 二人は校舎内をうろつく。

 現実で見覚えが無く再現不能な箇所は、近接した補完できる箇所に合わせた色が置かれる。

 視界の端に一度でも映った景色については、正確ではないがぼやけたイメージが反映される。

 渡良瀬愛依の見る景色は、そういった曖昧な景色で埋め尽くされていた。


「……あっれ~? 職員室、入ったことあったっけ……?」


 教室のある五階から二階まで降りていくと、大抵の部屋の内観はところどころ再現不能な状態になっていたが、何故か職員室だけは細部まで再現されていた。


「……ところで、なんて呼んだらいい」


「ん? 俺の名前~? 愛依でいいぜ~っ」


「承知した。これからは渡良瀬くんと呼ぶ」


「……あれ? まあいいけど~……」


「名前で呼ぶのは特別な時。言葉には言霊が宿る。無駄撃ちはしない」


 六斎堂愛忌は、意外と堅物である。


「……ま、なんにせよ~……現実でもこれくらい、ふつ~に話してくれたらいいんだけどね~」


「話したいことは頭の中にたくさんある。しかし口には出せない」


「え~っ、全然トークしちゃおうよ~! どんなトークでも傾聴しちゃうよ~」


「……現実の渡良瀬くんには人格が存在する。本物のあなた……、渡良瀬君は、今のように僕の下僕として存在しているわけではない。僕が話せばきっと傷付く」


「いや、もう傷付いちゃったけど~……」


「そういうこと。僕が喋るといつもそうなる。僕のコミュニケーション能力は絶望的。切れたナイフ」


「……ま、そこは否定できないっしょ~……」


 そうは言っても、奇跡的に噛み合うのがこの二人であり、その後もなんだかんだで話が弾み、二人は久々に平和な夜を過ごした。




「あ、おはようさん、愛忌ちん~?」


「お、……おはよう」


 三日目にして、ついに六斎堂愛忌が挨拶を返した。

 少し照れた顔は隈が目立つが、それでも、昨日よりかはいくらかマシに見えた。

 尚、当然ではあるが、その後いくら渡良瀬愛依が話しかけても、六斎堂愛忌が返事をすることは無かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ