魔装の乙女の純情
かなり遅くなったがなんとか帰って来れたです…!待ってる人なんていないと思いますが!
あ、誤字脱字は修正し始めます。
その手に魔装を持ったハジメは普通ではありえない様な速さで襲いかかってきた。
完全に毒漬にされたのは確実だろう。魔装に手を掛けてから、その顔から表情が無くなった。ただ、冷たい瞳で此方を見据えるだけ。
「………」
「く、ぁ…!」
振り下ろされる右の剣を自分の魔装である片刃剣で受けたものの、受け止めれずに弾き飛ばされる。
ありえない。そんな次元の攻撃力だった。
普通、片手剣で大剣を攻撃して相手を弾き飛ばす事が出来るだろうか。否、不可能だ。
「「………っ」」
「邪魔だ」
ハジメの背後上空からネロウによる大鎌の一撃。だが、それはいとも容易く左手に握った剣によって弾かれる。追撃の蹴りをくらい、ネロウが数メートル吹き飛ぶ。
入れ代わる様にリーファとラーズとフーザがハジメに攻撃を仕掛けようとする。
「………解った」
「………?」
ハジメが、誰ともなく小さく呟いた。恐らく、魔装に何か言われたのだろう。
チラリと此方に目を向け、また口だけを動かして何かを言う。
『本当に、ごめん』
そう、読みとれた。毎回、口の動きだけで何かを言う時にハジメはこっちを向いている。
だが、そんな事を言うのなら--
「……もう、止めてよ」
「…っ」
「意識があるんなら、止めて」
そう、ハジメに声を掛ける。ハジメは、辛そうに表情を歪める。
「ハク、悪い」
何かを小さく呟く。それと同時に魔装を鞘に落し、その場で勢い良く跳躍して、普通ではありえないほど飛び上がり屋根を伝って逃げた。
普通なら追いかけるのだろうが、今はとてもじゃないが無理だ。
「ハジメ…」
誰ともなくそう呟く。数日前に一緒にいてくれることを約束した少年はもうダメなのか、と思ってしまう。
だが、ハジメに私の声は届いた。私達を攻撃するのに辛そうな表情を見せた。なら、推測できるのは、一つ。
「………自ら、魔装に協力している」
「なにか、理由があるのかな…」
それは誰もが知りたい答えだった。だが、それが解るのは本人と魔装だけだ。
騎士団が駆けつけてくる。皆が皆、驚いた様な顔をしている。私達が負けたからだろうか。
何故だか無性に奴当たりしたい気分が募ってきた。これは不味いと思い、私達もその場から離れた。
* * *
「はぁ…」
(お疲れ様)
頭の中にハクの声が響く。戦闘に集中した後に聞く鈴の様な声は、頭を急速に冷却して行く。
「さっさとあいつ等のとこに戻らないとな…」
(戻れると、思ってるの?)
「あぁ」
(ハジメお兄さんに私が切り捨てられる?)
「それは無理なんじゃないかな…」
ハクの過去を若干聞く…というか勝手に見当をつけただけだが今更切り捨てるなどと言う事は出来ない。出来れば皆に受け入れてもらえると一番良いのだが…。
「……都合が良すぎる話だしな」
(え、何か言った?)
「いやなんでも…。 それより…」
(騎士に囲まれちゃったね)
「俺もう疲れた。 ハク、よろしく)
俺は手に持つ魔装を放り投げる。何処から現れたのか、その魔装は銀髪の少女が受け止めた。
「殺しても?」
「それはダメだ」
「じゃ、半殺しで。 ハジメお兄さんは先に戻っといてくれる?」
「はいはい」
あまり魔装と離れるのは良くないのだが、ハクの言う事は聞いておこう。下手に逆らってまた毒漬けにされたら堪らない。
背後から騎士の呼び止める声が聞こえる。その中にナーザの声も含まれていた気がしたが、無視して歩き出す。聞こえてくる金属同士がぶつかる音も無視して歩く。
それから数十歩進んだ時、声が聞こえた。
「ハジメお兄さん」
「もう終わったのか?」
「うん、一応ね」
チラッと背後に目を向けると、全員無力化されたのか地面に倒れ伏す騎士達が見えた。
「あれ死んでないよな」
「死んでないよ。 私は魔装だから、主の命には従うよ」
「半場お前が主化してる気もするんだが…」
「別に主になってあげてもいいよ?」
頼むからそんなドSスマイルでこっちを見ないでくれ…。
「さて、と…。 この調子で騎士団を弱体化させていけたら楽なんだけどな」
「要は弱体化させろと言ってるのか…」
「さすがハジメお兄さん。 話が早い」
「面倒なんだが…」
「じゃ、魔装姫と騎士の全力を一人で止める?」
可愛らしく後ろで手を組んで下から覗き込むようにこちらを見てくるハク。
「それは、無理かな…。 後、一人じゃなくて二人な」
「私は魔装だよ?」
「人型の癖に何を今更」
「ぅー…。 もう人型にならない!」
何故か怒って剣に戻ってしまった。地面に刺さってしまったので引っこ抜いて鞘に落とす。
「……ん? 人型にならないなら俺が精神的に抵抗を続けてたら皆の所に戻れるんじゃ」
『心まで屈させて上げてもいいんだよ、ハジメお兄さん?』
「ぐっ…」
ハクからの精神干渉を受けて気分がマイナス方向へと向けられる。…やばいこれ鬱になりそう。割とガチで…。
「解ったらか、もうやめ…」
『絶望の崖から突き落として、私以外頼れる人がいないように洗脳してあげても良いんだよ』
「ごめんなさいもうやめて…!」
ふと心が軽くなった。心が軽くなったってなんだって話だが、気にしてたら負けな気がする。
しかし、ハクの精神干渉の力って意外とすごいのな…。これじゃ本気でどうにもならない気がする。
『そもそもどうにかしようとするのがダメなんだよ』
「何故心の中が読まれたし」
『ハジメお兄さんの中にいるようなものだからね』
「もう本格的にやばい気がする」
『あははっ。 そもそも抵抗しようとするのがダメなんだよ』
いや、そんなこと笑いながら言われても…。
ふと気配を感じた。これは魔装姫の気配か。
『ハジメお兄さん、解ってるよね』
「解ってるけど逃げたい。 疲れてるし…」
『ならせめて私を此処に置いていって。 殺すから』
「だからそれはさせないって」
『ハジメお兄さんなんて直ぐに精神操作で操れるんだよ。 そんなに操られたい?』
駄目だこいつ、ローザとは違う意味で何とかしないと。
……なんとかローザ達と戦わなくて良い様にハクの戦意を喪失させなければ…。それか動揺させるか。
うん、後者で行こう。
「ハク」
『何、ハジメお兄さん』
「好きだ」
『…………………………は? え、えぇ? き、急になにをっ!?』
よし、なんか相手が心を読むタイミングが解らないけど取り敢えず成功。めっちゃ動揺してる。
今の内に…!
「全速前進だ!」
『あっ、は、ハジメお兄さん、嘘吐いた!? 乙女の純情を弄ぶなんて、絶対に許さない! 後悔させてあげる、絶対に!』
やばい、気を逸らせたけどこれじゃ俺が死ぬ。魔装姫に向いていた矛先までこっちに向いた気がするんだけど…!
『あ、あははっ。 ハジメお兄さんの色々、奪って後悔させてあげる。 あは、あははははっ』
こ、怖いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!
後なんだ色々奪って後悔させるって!貞操の危機を感じるんだが!?
隠れ家に着くまで終始頭の中にハクの壊れた笑い声が響き続けた。




