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目の前には魔王がいた  作者: 八雲紅葉
新世界は異世界
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~購入~

 目が覚める。床で寝ていたせいか、少しだけ背中が痛い。やはりなるべく早いうちにベッドを用意したほうが良い。

 ココはまだベッドで寝息を立てている。

 さて、今は何時だろうか? 外を見る限り7時くらいなのだが、この部屋には時計はないのだろうか?


 ひとまず俺は顔を洗い厨房に向かう。厨房には時計があるので見てみると7時30分だった。

 昨日の続きでビーフシチューをもう一煮込みさせる。ココに言われたことは料理人にとっては悔しいことこの上ないので、昨日よりも美味しく仕上げたい。

 ビーフシチューを煮込んでいるだけでは時間の無駄なので、今作っているもの以外のビーフシチューを作っておく。

 煮込み始めるとココが降りてきた。まだ眠そうに目をこすっている。


「……おはようございます。なにか私にできることはありますか?」

「おはよう。眠いならまだ寝てて良いよ」

 あくびをしながらココは聞いていて、まだ眠り足りないのか階段を上っていく。仕草が可愛い。

 俺はココを見送って、新たな料理に着手する。その料理は……どうしようか。適当に作っても良いが、売れ残るのは嫌だ。そういや、昨日来たナルシスとか冒険者は昼飯とかはどうしているのだろうか?

 泊まっている宿屋が用意とかをしてくれているのだろうか? もしそうでなければ弁当業でもいけるかもしれない。まぁそれはナルシスが来たときにでも聞いてみよう。


 それよりも、今日のメニューだ。簡単にフライドポテトとかが無難か? いや、酒のお供ということだから揚げ物全般が無難だ。ということだからその揚げ物に使えるソースを作ってしまおう。

 と、思ったがそのとき必要な分だけ作ったほうが良いと思って作りおきをするのをやめた。少しばかり気まぐれな俺だ。

 レシピの中を探ると、スイーツがまったくないことに気づいた。酒場のレシピの中にあるわけがない。と思ったが、何かあっても良いと思うのだが。

 まぁ昼間に喫茶店としてこの店をあけて商売するとしよう。デミグラソースの匂いを嗅ぎながらスイーツなんか食べたくはないだろう。

 外で売るという考えも出来る。外にはショーケース1台ぐらいは置けるスペースはあると思う。考えてみるのも良いかもしれない。

 オーブンはあるわけだし、客層を広げるのもありだと思う。


 話が逸れすぎてしまった。メニューを考えるのは難しい。何かメニューを決めたほうが良いのかもしれない。

 ひとまず、ビーフシチュー、フライドポテト、牛肉の香草焼き、エビボール、魚のトマト煮、から揚げ、お好み焼きとかで良いか。

 7品をどうやって、客に知らせるかだが、俺は読みしか出来ないからココに書いてもらおう。


「雅彦様。おはようございます」

 結局寝なかったのだろう。眠そうだった顔は、水で引き締めて眠気を排除したみたいだ。服装はパジャマのままだが。

「おはよう。今日は市場に行って食材の相場が知りたいんだ。それと、メニューを書いてもらいたいんだがお願いできるかな?」

「メニューとはなんですか?」

 この世界にはメニューというものが存在していないのだろうか? ココは首を傾げてしまった。

「そうだな。この店ではこういうのを取り扱っていますよ。ってものなんだよ」

「そうなのですか。私にできる事でしたら頑張ってやりますので」

 ココは書くものを取りに上に戻っていった。


 あぁ。メニュー書きは後からでも良いんだが。ココが戻ってきたので、先に市場に行く。料理の値段を決めるのには食材の値段を知っておかなければいけないから。

 そしてやってきたのは小物屋。値段を調べるのに、筆記具が無くては意味がない。

「主人。手のひらよりも少し大きな手帳と、ペンはあるか? 出来れば何回もインクをつけるようなタイプじゃないほうが良いのだが」

「このペンで良いかね?」

 店の主人は地球で言う万年筆のようなものを出してきた。ちゃんとこの世界にも似たようなものがあったんだな。と感心。

 握り心地は書き加減といい、妙にしっくりくるので即決。手帳もあわせて銀貨3枚という値段。

 とりあえず、メモは出来るようになったので、市場に向かう。


 市場は人がごった返している。日本でこんな状態だったら黒い頭がうようよとしているのだが、この世界では髪の色はそうそう誰かとかぶるようなことはないぐらい様々に色の頭をしているのでカラフルだ。

「まずは魚介類から見させてくれ」

 メインで使われることが多い畜肉と魚介類。まずは使う種類が多い魚介類から見ることにした。


「この市場では何尾、などで買うのではなく、かごに盛られた量で売買が行われています。ただ、大きすぎる魚ですと一尾でいくら。というかたちになりますが、基本的にはかご売りです」

 つまり、店側の人間が無造作ではなく、良いものと悪いものを一緒くたにまとめて売ることが出来る、消費者が不利な商売が行われているようだ。

 そうなれば消費者も自力で目利きが出来るようにならなければいけなくなる。俺も基本的な鮮度チェックを覚えているが、それが通用するかどうか。


 まず、最初に連れられてきた店は少し見ただけで商売の質が低いと思えた。

 その理由として、商品の魚がどうもぐったりとしている。目も赤くなっているものが多かったし、値段も安かった。

「ココ。この店では買ってないよな? 流石にここで買うのは最終手段ぐらいという形だけだよな?」

 もし、必要な材料が足りなかったときは、やむなくここの店を使う。というレベルだと思う。

「はい。そうです。雅彦様はちゃんと目利きが出来ているようなので安心です。それでは次に行きましょうか」

 ココの試験にも突破できた。俺が考えていることはちゃんと当たっているようだ。


 次に案内された場所は、買い物が出来るぐらいの混雑具合。魚を見る限りではさっきの店よりかは上のランクだろう。

「目は濁ってない。エラの中身も濁ってない。なかなかの魚だろう。これは。ここの店はキープしておこうか」

「残念ですが、この店はあまり使っていません。雅彦様が手に取った魚はいつ見ても新鮮そうに見える魚なのです。あのアビリを見てみてください」

 アビリ? 聞いたことがない魚だ。どれだろう? というか、俺が手に取った魚は、外見がアジなのだが、そんな特徴はなかったと思うが。

 アビリという魚を探していると、ココは指をさしてその魚を教えてくれた。サバだった。どうやら呼び名は変わっているようだ。もしかしたらアジもアジではなくほかの名前が付いているかもしれない。

 そのアビリを手にとって調べてみると、確かに鮮度は落ちている。

「それじゃあココはどこで買い物をしているんだ?」

「いまからそこに案内いたしますね」

 そう言い、彼女は市場の中心部から出て行き、港の方まで進んでいった。


「おじさん。こんにちわ」

 ココは船の中にいるおじさんに挨拶をしだした。

 その男は齢60近くになっているのだろう。白髪が髪の半分以上を占めていて、顔には無数の皺がある。

「おぉ。ココちゃん。今日はこれぐらいだけどどうかね? 買っていくかい?」

「これからは私の仕事じゃなくて、雅彦様の仕事になりましたので、私からは何も言えません。雅彦様。この方はミハエルさんと言って、店で出しているすべての魚介類をミハエルさんから買っているんです」

「そうなのか。はじめまして。雅彦と言います。よろしくお願いします」

 俺は頭を下げてミハエルさんに挨拶をする。

「アンタがココちゃんの借金を払ったって人か。悪いことを考えていそうな顔をしているわけじゃないから、ひとまず安心だよ」


 昨日の一件はもう噂になっているのか、そんなことを言われる。

 まぁ借金を抱えた若い娘の借金を肩代わりする奴なんて、普通に考えればその道の人だろう。俺はその道もなにも異世界人だが。

「それで兄ちゃん。今日はどんな魚が欲しいんだ? ここにあるものだけだが、市場に並んでるものよりも安くしてやるが」

「それじゃあ、ダシが良く出る貝。両手に収まらないくらいの白身魚。後は赤身の魚を4種類くらい買わせてくれ」

 俺がそう言うと、ミハエルさんは俺の言うとおりの魚介類を用意してくれた。その量はざっと見積もって40kgほどだろうか。

「そうだな。これで銀貨30枚。といったところかな? 予算は大丈夫か?」

 銀貨30枚。つまりは24000円か。ぼろ儲けさせてくれるミハエルさんとはこれからも仲良くしていきたいものだ。

「あぁ。ありがとう。もう少し高くなると思っていたが安いに越したことはない。それでいて鮮度も良好。嬉しいね」

 コイン入れから銀貨を探し出して彼に手渡す。

「そうかいそうかい。そんじゃ、こんど店に顔を出しに行くよ。」

 彼はそういい残して港の詰めより所の方へと歩いていった。

「それじゃ、荷物も出来たことですし、一回家にでも戻りましょうか」

 ココの提案で俺達は店に帰ることにした。

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