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目の前には魔王がいた  作者: 八雲紅葉
新世界は異世界
31/38

~雇用~

ちょっとgdgd回。

更新時間もgdgdした所為で遅くなってもうた

 起床。そのまま冷蔵庫にしまっている棒ナッツの材料を取り出して移動する。

 昨日仕込んだ量は400本ほど作れる量だと思う。これも売り切れてしまうのだろうか?

 そんなことを考えながら今日も移動。今日も移動が完了した。

 もし、店が建て始まったらその場所をしっかりと覚える必要があるからその日が近づいたら、その時は教えてもらおう。でなければ移動出来なくなってしまう。

 しっかりと更地に移動が出来たので、早速自分の店に向かう。

 店に着くと、周りの店に店員がちらほらといる。俺と同じで仕込みが必要な商売なのだろう。

 まだ開店まで時間があるので、出店街を少しぶらつくことにした。

 と、いっても今ここにいる人達、ほとんどが飲食系なので、作業風景をただぶらぶらと移動しながら眺めるだけだ。

 それでもなかなか楽しいもので、一人の人が一生懸命モノを作っている。それは見ているだけで勉強にもなる。

 軽くぶらついてから自分のスペースに戻る。俺も皆に負けずに準備を進めるとしよう。

 昨日は準備もなにも無しに開店してしまったからてんてこ舞いになってしまった。だから今日は今から準備を始める。

 缶の中にしまった油を鍋の中に移して熱する。その間に俺はタネを形成する。

 といってもただ生地を伸ばして氷で作った簡易冷蔵庫で保存をする。しかし、そんなに大きな冷蔵庫なんてものは作れないのでそんなに準備なんて出来るわけない。簡易冷蔵庫の大きさなんて生地が10個ほどしか入らない大きさだからすぐに一杯になる。

 一杯になってからは油の中へドボン。その音や匂いを嗅いだ人達がわらわらとまた集まってくる。これでは昨日の二の舞だ。


 しかし、今の状況でそれを打破出来るような人手はないし、策もない。昨日と同じようにただただ棒ナッツを揚げ続ける。

 今日も休む隙など与えぬ。と言わんばかりに迫りくる人の波。その波に飲み込まれないように必死に棒ナッツを作りまくる。

「やぁ。店主。なんだか忙しそうだね」

 匂いを嗅ぎつけたのか、それとも暇で俺がいる事を知ったのか、特別保安官様が銀貨を片手に並んでいた。

「すまないが、会話をしているほど暇じゃないんだ。何か用があるならば閉店後にしてもらいたいんだが」

 ミラを無視した時のことを考えればいまここでしっかりと返事をした方が良いことを思いちゃんと返事をする。

「あぁ。仕方ないな。と、いってもそんな用はないんだ。私はただここに新しく出来た店の商品を買いに来た客だ。それ以上でもそれ以下でもない」

「それだったら銀貨をそこの箱に入れてこれを受け取ってくれ」

 彼女は銀貨を賽銭箱の中に入れた後に揚げたての棒ナッツを受け取る。

 いつもの彼女ならば、俺のツケでなんとかしてくれ。などと言いそうだが、他の人の視線がある手前そんなことは出来ないのかもしれない。彼女は保安官よりも上の立場の特別保安官なのだから。

「まいど。……これからこれが食べたいんだったら店を閉じた後に来てくれ。続きは言わなくてもわかるだろ?」

 最後の言葉は後ろに並んでいる人達には聞こえないように小声で。その言葉を聞いたミラは嬉しそうな顔をして店を後にした。


 その後も俺は棒ナッツを生産する機械のごとく働き続けた。それこそ休憩なしで閉店時間まで。

 昨日はネタ切れが理由の閉店理由だったので、営業時間は昨日の方が短かった。だが、今日の閉店時間は昨日よりも一時間長いだけ。今日もネタ切れが閉店理由だ。400個でも売り切れる。これは500個必要になるのだろうか?

「にいちゃん。あの特別保安官と仲が良さそうに見えたんだが」

 今日も目の前に店を構えているおっちゃんが話かけてきた。自分の店は大丈夫なのだろうか?

「えぇ。あのガブリオンファミリー壊滅事件の時にお世話になりまして」

「ってことは、にいちゃんがあのファミリー壊滅に関わっていたあの店の店主だったのか。こりゃ大物だ」

 大物って。そんなに大きなファミリー、、、確かに大きなファミリーなのかもしれない。金貨300枚ほどの利益が俺の懐に入ったわけだし。

 それにしてもミラはこのカロニチンでは有名な人って事を再認識した。あの時も保安官を顎で使っていたわけだし。

「まぁあの時は本当に助かりましたよ。店はまだ半年ほどかかるみたいですけど、開店sた時は一杯ひっかけに来てくださいね。サービスしますから」

「そうだな。行ってみるとするよ。それじゃ俺はここで失礼」

 おっちゃんは自分の店に戻ってから仕度してから店から離れていく。


 さて、俺もこのまま残っていても仕方がないので俺も帰り支度を済ませる。

 缶の中に油を戻す。氷の簡易冷蔵庫は油や鉄鍋の熱気で解けて足元の土は湿っている。

 今日も御賽銭箱な順調に太って重くなっているだろう。確認しようと見てみると、それにしがみついている一人の人型がいる。

 俺と視線を会わせたくないようで俯いているので顔はわからない。

 だが、服装は男物だ。その男物の服はあちらこちら汚れていて傷も付いている。スラム街に住んでいるのだろうか?

 高粘性の水が手にもついてしまったのか、俺と目が合って逃げようとしているが手が離れないようだ。ゴキブリホイホイに代用出来るんじゃないか? これは。

「……ひとまず話をしよう。ひとまず逃げ出さないようにお前の腕を拘束させてもらう」

 両手首に不可視の糸を巻きつける。水の効果はもう切っている。

「まぁ、お前がした事は犯罪だな。ここ最近のスリはお前の仕業か?」

 コイツの事なんか知ったことではないが、毎日食べることでさえツライ生活をしていることなど簡単に想像が出来るほど細い体をしている。

 俺が質問をしても返事は帰ってこない。そっぽを向いたまま動かない。


「だんまりか。このまま保安官に連れて行ってもらっても良いんだぞ?」

 その一言で子供はコッチを向いた。頬は痩せこけ、肌は土などで黒く汚れている。

「お、お願い。保安官にだけは言わないでください。そうじゃないと弟達が何かを食べる事が出来なくなる」

 鈴のような声。性別は女性のようだ。ぱっちりとした大きく二重のエメラルドグリーンの瞳。そしてエルフの血を受けているのか先が尖った耳。

「そうか。だが、俺が一日、身を粉にして働いて手に入れた金をお前が持っていくことを俺は許さない」

 別に俺が今ここで彼女の弟達に飯を与えるとしよう。そうすれば彼女の弟たちは助かるだろう。だが、そこで終わりではない。一回助けてしまったら彼女の弟達はまたここにきてしまうだろう。それ以外に弟達以外の人達もこの店に食べ物を求めてきてしまうだろう。

 俺にそんなことを求められても困る。俺にそんな財力はないのだから。

 だが、俺は目の前にいる彼女の家族を見捨てるほど残酷な心の持ち主ではない。と思っている。

「ごめんなさい。ごめんなさい。なんでもしますから許してください。お願いします」

 必死に泣きながら地面に頭を擦りつけて謝っている。その必死になっている姿は何もかも許したくなってくる。

「ん? なんでもするって言ったか?」

「はい!! 私なんでもしますのでどうか許してください!!」

 俺が返事をすると、彼女はがばっと顔を上げて俺を見る。


「じゃ、とりあえず俺の店で働け。そしたら小遣いをやる。良いな?」

 彼女がどれだけ使えるのかわからない。でも、従業員が他にいないよりかはマシだと思いたい。

「はい。分かりました。ありがとうございます。ありがとうございます」

 保安官に連行されることがないと分かった途端に安心したのか、地面にへたり込んでしまう彼女。

「それで、お前を明日から雇うわけだが俺はお前のことをまだなにも知らない。教えてくれないか?」

「あ、はい。私はシェリーと言います。歳は今年で15になります。宜しくお願いしします。えーっと」

「あ、俺は雅彦だ。よろしくなシェリー。で、シェリーの家族が一日喰っていくのにどれくらいの金が必要なんだ?」

 俺の名前を知らないので困って、俯いてしまったので俺も自己紹介。

「はい。雅彦さん。宜しくお願いします。それでですね、私達家族は子供だけで私を含めて5人で過ごしています。一日だと銀貨5枚ぐらいで何とか暮らしています」

「そうか。それじゃ今日はコレで何かを食べろ。給料は一日働いて銀貨5枚。それで良いか?」

 自分の財布から銀貨を5枚取り出して手渡す。

 5枚でなんとか食いつないでいる。というわけだからおまけとして銀貨6枚で雇おうと思ったが、一枚増えたとしてもすべて食費になるだろう。だからなにか非常時の時のために俺が貯めておこう。でも、日給が4800円。日本じゃ考えられない賃金。すこし少なすぎだろうか? 城に帰ったらシリルにでも聞いたみるとしよう。


「あ、ありがとうございます。私しっかりと働きますので」

「あぁ。今日はもう帰ってもいいぞ。早く帰って弟達に飯を食わせてやれ」

 彼女はペコリと一礼して店から出て行った。

 それにしてもシェリーは一日でどれだけスリで稼いでいたのだろうか? 大手の所ではしっかりと防犯をしているだろうし、やはり狙い目は俺が出店している周辺の小金を稼いでいる店なのかもしれない。てか、この出店街で大金なんかを稼ごうと思う方がおかしいのかもしれない。

 片づけはすべて終わっているので、自宅に帰っていくシェリーの後をつけて彼女が住む家を見に行く。

 彼女の暮らしがどのようなものなのかに興味があったからだ。

 スリを行わなければ生活が出来ないくらいの暮らし。銀貨5枚ほどで本当に生活が出来るのだろうか?

 出店街を抜けてスラム街。そこでぼろいながらもちゃんと建っている一軒家。そこにシェリーは入っていく。あそこがシェリーが住む家なのだろう。

 家の中にいる彼女達に見つからないように窓からのぞく。

 シェリーの帰宅を待ちわびていたようで、小さな子供たちは彼女の周りに集まっている。

 親はいないようだ。家の中には見当たらない。

 子供達の服装もシェリーと同じであちらこちらに穴があいている。

 それでも彼らは笑顔で幸せそうだ。こちらの心までもが癒されるようなそんな雰囲気。

 いつまでも他人の家の中を覗いているのは趣味が悪いだろう。

 元来た道を戻って賽銭箱などを回収して帰宅。今日は色々と疲れた。


「ただいま。アルバイトを雇ったんだが、日給っていくら位が妥当なんだ?」

 帰ってきてすぐに報告。というか質問。

「……なんだいきなり。そうだな、雅彦がやらせる仕事内容は知らないが、飲食店の仕事ならば日給銀貨10枚ぐらいじゃないか? いや、仕事内容で色々と変わるけれどもな?」

 銀貨十枚ってことになると、仕事時間からすると時給千円くらいか。普通に俺と同じ時給だな。

「そうか。分かった。それぐらいに設定しよう」

「それでどんな人を雇ったんだ?」

「エルフっぽい少女だよ。スラム街に住んでて、今日の売り上げを盗まれそうになったんだ」

 それを聞いたシリルは俺の胸倉を掴んで睨んでくる。どうやら怒らせてしまったようだ。

「盗まれそうになった!? そんな奴をお前は雇ったというのか?」

「いや、まぁ、なんだ。人手が足りてなくて、銀貨5枚でも雇わせてくれって感じだったからさ」

 ひとまず、今日起こったことの報告。それを聞いた彼女は呆れた顔をしている。


「……とりあえず、お前の好きなようにしてくれ。私はその事にはノータッチなわけだし」

「あぁ。すまないな。ひとまず今日の売り上げを一緒に確認してみようか」

 賽銭箱の中身を机のぶちまけて計数を始める。合計213枚。今日も予定よりも売り過ぎてしまった。やっぱり手作業だから難しい。

「……コレで今日の純利益はどれくらいなんだ?」

「材料費と人件費、土地代を抜いたら大体200枚ってところだな。まぁ今のうちだけだよ」

 呆れ顔というか、何やら驚いているというか、なんというか。目の前の銀貨の多さにも驚いているのかも知れない。

「それじゃ、この金を金庫にしまって明日の準備もしてくるよ」

 報告も済んだので明日の準備をするとしよう。

 今日の売り上げで400本以上。それに完売した時刻は大体15時ぐらい。つまり後一時間ほど余裕があるのだ。販売開始時刻は10時。5時間で400本以上。1時間で大体80本ほど売れているのだろう。

 だから500本ほどが作れる量のタネをこしらえておけば大丈夫だと思う。

 でも、今の俺は商売人。限界まで売れるポイントが知りたいから600本売れるほどのタネを作る。たぶん売れ残ると思うが、それはシェリーの弟達にでもあげよう。

 タネを仕込み終わった俺は早めにベッドの上に寝そべった。




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