~関門~
ファークライ3が楽しすぎて投稿するのを忘れていました
穴に飛び込んだ俺は綺麗に着地することなく首から行った。有名な落ち方。
糸の魔法を出さなかったら即死レベルだ。良くあんな落ち方をして生きていられるものだと思う、あれが漫画の力というものなのか。
目を開いて周りを確認する。部屋の中に光が少なく、周りが確認できない。
「最終関門。この私を倒してみろ」
急に明るくなる。その光が俺の網膜を焼く。視界が真っ白になってなにがなんだか分からなくなる。
「最終関門。私の事を倒してみろ」
「いや、2回目は良いんで、この光をどうにかしてくれませんか? このままだと戦うことすらできないんですけど」
「おっと。それは失礼」
すると、光の強さが一気に弱まり、これから戦う相手の姿が良く見えるようになる。
相手は黒いフードのついたマントで顔を隠しているので良く分からない。
あまりにも素直すぎると思った。普通に俺の言うことを聞くって普通じゃないだろう。
「それで、お前は誰だ? それでシリル達をさっさと返してもらうぞ?」
「私の正体が知りたいだと? だったら私の事を倒してみろ」
その声の後、相手の前に拳ぐらいの大きさの火の玉が無数に現れる。
その火の玉が一斉に俺に向かって飛んでくる。俺は急いで水の壁を出現させて逃げる。
お互いの魔法がぶつかり合い、蒸気が部屋に充満する。
この状態で俺も沢山の火炎玉を出現させ放射状に発出する。隙間が出来ないように。そうすれば必ず当たるだろう。もちろん半球状にだ。
「どう考えてもそれは人間の魔力じゃないだろうに。魔法力は合格。次は白兵戦だが、どうかな?」
魔法には当たった。だが、短い感覚の足音が聞こえる。だんだんと音が大きくなってくる。こっちに向かってきている。
相手の足が俺の頭を狙って右側から飛んでくる。
俺はしゃがんでそれを回避して足を払う。足を払われて相手の体は後ろに倒れる。
そこで俺は糸を出して相手の手足を拘束してとどめを入れようとする。
が、糸は相手に辿り着く前に切り刻まれて逃げられてしまった。
強い。不可視の糸だから何とかなるとは思っていたがそれが通用しない。だから俺の接近戦はどうにも出来ない。
「糸の魔法。なかなか面白い魔法を使うんだな。だが、脆い。脆すぎるっ!」
そう言って、相手は距離を詰めてくる。
糸が使えないという恐怖。どうして相手には効かなかったのだろうか? それにどうして触れる前に切られてしまったのだろうか? わけがわからない。
どうってことのない普通の白兵戦。ただ、その攻撃がいちいちするどい。かわすので精一杯だ。少しでも避けるのが遅ければ簡単に俺は吹っ飛ぶ。
そう、吹っ飛びながら考えてる。痛すぎる。てか、蹴られたところの服がビリビリというレベルじゃないほど裂かれている。糸の鎧なんて役目を果たしていない。ものすごく痛い。
たぶん、体の周りに凄い風圧があったとかなのだろうか? これも魔法の応用ということなのか?
「おいおい。弱いなぁ。今のは後ろに下がって回避するのが一番だったろ。反撃狙いだったならまぁ仕方ないがそのまま飛ばされては意味が無い」
もうわけがわからない。どうして戦っている相手にそんなヒントというか助言をしているんだろうか?
「なに。対策はいま考えた。次は行くぞ?」
そこで上半身をぐるぐると右回りに回転させながら攻撃の機会をうかがう。見様見真似のデンプリーロール。カウンター狙いなのにデンプシーを使うのはどうかと思うが、この際なんでも良い。攻撃が当たるならばなりふり構わない。
「こざかしい。私の攻撃は絶対に防げない。さぁ、これでどうだ!!」
相手の右拳。思いっきりパワーを貯めてからの右ストレート。軌道は読める。狙いは俺の顔。出来るだけ攻撃を引きつけて、俺も右拳に力を貯める。そして殴る。
体の周りに風圧があるのならばそれを無くしてしまえばいい。それに、体が吹っ飛ぶほどの威力なら体を地面に固定してしまえばいい。顔のダメージが怖いならば、何かで顔を覆えばいい。
かなりの風圧だが、それ以上の風圧をこっちが作ってしまえが相殺出来るだろう。吹っ飛ばないようにするに、床の地面と靴を同化させる。そうすれば吹っ飛ばないだろう。きっと。顔には鉄で出来た仮面をつける。もちろん風圧を展開する。
また再び攻撃を喰らう。かなりの威力だ。その威力だけで首が吹っ飛びそうになる。
だが、今度は吹っ飛ばされなかった。足を固定したからだろう。それに仮面は壊れなかった。壊れなかっただけで仮面の形は崩れたが。
そして、俺のグーパンチは相手の顔にヒットする。威力は分からない。でもヒットしたのは確かだ。ツバメが天に向かって急上昇をするように。俺の右腕もその軌道で相手の顎に当たる。
「ジェットアッパー!!」
相手は吹っ飛んだ。そして首から落ちる。鈍い音が響く。そしてそのまま動かない。
あれ? 音も変な音が鳴ったし、本当にやばいんじゃないか?
「な、なかなか良いパンチだったぞ? ただ、すこし手加減をしてほしかったかな。カウンターでアッパーなんか酷いにも程があるだろう」
ヨロヨロと立ちあがる相手。かなりのダメージを与えることが出来たのだろう。でも倒せてはいない。そもそも倒す。というのはどれくらいの程度なのだろうか? 殺してようやく倒したということなのだろうか?
「白兵戦も合格。まぁこんなものかな。そろそろ私も自己紹介をするとしよう。私はミカーテ。大魔王だ」
マントを脱いで素顔をさらす。
目の前にはシリルがいた。
いや、シリルではない。シリルと同じ顔をした人が目の前にいたのだ。
角も同じように見えるが、ところどころに傷が付いているし、背もこっちの方が高いような気がする。
でも、だ。どうして大魔王が俺と戦っているんだ? それにシリルやココをどうして連れ去ったんだ? どういうことだ?
現状を受けれたいのだがどうも理解が出来ない。なんでなんだ?
「う~ん。ネタばらししたいけど私ともう少し遊んではくれないか? ここまで力を出せる相手を久しく見ていなかったからな」
さっきのは大したダメージを与えてはいなかったようだ。今はしっかりと力強く二本の足で立っている。
「俺は遊んで戦っているわけじゃない。さっさとシリル達を返してもらうぞ」
糸が駄目ならば鎖にすれば良い。もちろん風圧対策は万全だ。
鎖は大魔王に巻きつく。手足に3本ずつ使って縛った後に、10本の鎖で全身を縛る。これで身動きなんか出来るはずはないだろう。
「ふふふ。成長するということは良い。この成長度合。流石は人間と言うべきなのか。それとも雅彦が特別なのか。だが、私には効かない!!」
絡みついた鎖をすべて壊し、右腕をグルグルと回しながら一歩ずつ近づいてくる。これはヤバイ雰囲気がプンプンする。
「私の本気受けてみるか? しっかり受け止めてくれよ? これを喰らって立った奴なんて今まで誰ひとりとしていな、、、、あ、いたわ。私の夫だった。とにかくこれを喰らった人ほとんどが死んでいるんだから」
おいおい。お前の旦那は凄い奴だな。てか、その攻撃が俺に当たったりしたらヤバイだろ。どう考えてもDEADENDだろ。
どうやって逃げよう。てか、逃げ切れるのか? あのジェットアッパーだってまだ相手が手加減していたから当たったものだろうし、今回のは本当にきついんじゃないか?
非力な俺が彼女に対抗するのには一体どんな策が必要なんだろう? どうする? 魔法を連発であてても止まることはないだろう。何が出来る?
「逃げ回らないのか? ではどうする? 死ぬのか?」
力を貯め終わったのか、大魔王の右腕が光っている。本格的にヤバイだろう。どうにかして逃げなければいけない。どう考えたって勝ち目はない。
でも、アレをすれば何とかなるかもしれない。でもアレが成功するかなんてわからないし、失敗した時の代償もやばいのだと思う。
しかし腹をくくるしかない。このまま死ぬか、失敗して死ぬか。だったら失敗して死んだ方が後悔は少ないだろう。
魔法を発現させる。その魔法で出現させたものに大魔王は攻撃をした。魔法を攻撃した大魔王は目をひんむいて驚いているようだ。
「……おい。それは流石の私でも驚く魔法だぞ。どうしてそんな魔法が使えるんだ?」
「……無から人間を作るのは禁忌。だが、俺が今作ったのはただの人型。内臓もないし骨もない。ただのハリボテ。それを俺の背後に作って、そのあとに場所を移動させただけだ」
禁忌を行うことは俺だって怖い。だから俺は人間を作らなかった。ただそれだけだ。
「まぁいい。そんなモノを使われちゃったら私に勝ち目はない。消耗戦になってしまったら勝てるわけないだろうよ」
お手上げということで、両手を上げて座りこんでしまった。
俺も疲れたので座る。魔力を結構使ってヘロヘロだ。
「いや~良かった。俺もあれが成功しなかったら死んでいたわけだし。まぁ今回は俺の勝ちで良いんだよな?」
「あぁ。お前の勝ちだ。雅彦。ちゃんとシリル達に会わせてやるよ。と、言ってもあいつはこの戦いを見ていたようだが」
何かの魔法を解いたのだろうか? 指を鳴らす大魔王様。すると、ドタドタと足音が聞こえる。
「雅彦~。お前はどうしてあんな無茶が出来るんだ。あんな普通だったら死ぬ攻撃なんだぞ」
シリルが飛び込んできた。かなりの突撃力で飛びついて来たために、シリルが俺の事を押し倒したような形になる。
「……別に娘の相手は強い男だったからなにも文句は言わない。だが、時と場所を考えてくれないか? 母親の目の前でやるとか、かなりの度胸があるんだな」
「そ、そうじゃない! 勢いがあまってこうなっただけだ」
シリルは恥ずかしがって俺から離れる。それよりも母親? 娘? どういうことだ?
「えっと、まず、聞きたいんだが、お二人のご関係は?」
「「親子だ」」
なんてこった。魔王族の親子が目の前にいる。
「いや、どういうことだよ。魔王族は魔王じゃないんだろ?」
「ん? それは雅彦が私の事を聞いただろ? 私は大魔王じゃないが、母は大魔王だ。そもそも大魔王は立候補者全員によるバトルロワイヤルを経てからのトーナメント。そして選挙によって決まるんだ」
そうだったのか。ともかく、いままで戦っていたのが大魔王。シリルの母。流石魔王族なのだろうか? 手ごわいというレベルではなかった。死を覚悟したわけだし。
「お、おう。まぁそれで、どうしてこっちに来ていたんだ? 城に誰もいなくて心配したよ」
「いや、なんだか資金繰りが大変みたいだったから全兵士やら城関係者を私が匿っただけだ」
「……ちょっとな。雅彦の前では言えなかったが、ここのところ赤字が続いていたんだ。それで母にその事を相談したらこっちに連れてこられたわけなんだ」
そうなのか。とりあえず、シリルが無事で良かった。
それにしても赤字か。どれくらいの赤字なのだろうか? 大魔王に頼るくらいなのだから簡単に返済が出来るほどの赤字ではないのだろう。
「で、いくら赤字なんだ? そんでその赤字が一体いつからだ?」
「……もうずっと赤字だ。情けない話だ。特に何か商いをしているわけではないから赤字は溜まる一方なんだ」
もうずっとということは本当に溜まっているんだろう。俺の所持金なんか足元にも及ばないかもしれない。
「……で、それを返済するにはどうすればいいんだ?」
「まずは軍力の縮小。というより、シリルからあの城を出て行ってもらう。あそこには別の一族に管理してもらう」
当然と言えば当然の処置なのかもしれない。利益の出ないところにはある程度のテコ入れが必要。今回はそのテコ入れが所有者が変える。ということなのだろう。
「それで、シリルはどうなるんだ?」
「ここで過ごしてもらう。雅彦やココもだ。お前達二人は軍に所属しているわけではないからな」
それはそうだが、下の者がそれを納得するのかが問題だろう。いきなり仕える主が変わるんだ。すぐに納得する方がおかしいだろう。
「でも、それを納得する人達は少ないんじゃないか? そこらへんはどう考えているんだ?」
「なに。そこに関しては雅彦に頑張ってもらおうと思っている。むしろ雅彦が頑張ってもらわないと困るんだ」
大魔王は何か面白そうな考えているのだろうか? なにやら顔に笑みが含まれている。
「不満がある兵士と一対一で勝負をしてもらう。もちろん兵士側が勝ったら赤字を出来るだけ減らすように各々頑張って稼ぐ。そしてシリルとの婚約を解消させてもらう」
……流石は大魔王なのだろう。兵士の不満に同情し、わざと負けるようなことをすれば婚約の解消をするという脅し。策略だ。時代が時代ならば多くの領土を手にしていたに違いない。俺の想像だが。
「あぁ。分かった。と言いたいが、なんで俺なんだ?」
「そりゃ、シリルの男だからだ。それにちゃんと戦って婿になったわけじゃないんだろ? だったらいまここで証明した方が良いだろ? それにその事を快く思っていない兵士だっていると思う」
「……すんなりと分かった。なんて言いたくはないけれども、それが条件ならば俺は鬼となる。心を無くし修羅となる。それで良いんだろ?」
「ま、雅彦! お前は本当にアイツらを切ることが出来るのか?」
シリルはこんな状況でも俺や兵士の事を心配してくれる。たぶんその優しさが赤字を大きくしてきたのだろう。
「あぁ。もちろんだ。その時は心を遮断する。その時俺は人型になるだけだ」
「ただ、殺すのだけはご法度な。それを破っても婚約は解消だ」
彼女の狙いは一体何なのだろうか? さっきから俺の事を試すようなことばっかしてきているような気がする。
「それじゃあ早速やってもらおう」
いつの間にか俺達3人を囲むように兵士が陣形を組んでいた。四方八方から攻撃が来る陣形。そして兵士全員の目が血走っている。どうやら戦闘モードになっているみたいだ。
「良いか。何人でも攻撃をしてきても良い。ただ、それでお前らが納得するのならばの話だがな」
その一言で兵士達が冷静になったような気がする。でもその言葉の所為で少しだけやりづらくなった。理性のない突撃は単調でかわしやすいのだが、理性のある突撃は変幻自在に変わるのでやりにくい。
そして、兵士一人一人とのタイマンが始まった。




