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目の前には魔王がいた  作者: 八雲紅葉
新世界は異世界
21/38

~指導~

 今日は朝早く起きて朝食の準備。メニューはすでに決めているのでその通りに作るだけだ。葉物。野菜室にはホウレンソウに似たものがあったのでそれを使ってみる。見た目は本当にホウレンソウなのだ。だが、魚でもあったがアジが別の名前だったりしているので不安だ。

 まぁとりあえずそのホウレンソウっぽい葉物をぐつぐつと煮えているお湯の中に赤く色づく方から入れる。そしてすぐに色が変わってくる。鮮やかな緑になる少し手前でお湯から出してキンキンに冷やした水の中でしめる。キンキンに冷やした水は冷気の魔法で凍らせた水を凍らせて氷にし、その氷を水の中に入れて冷やした。

 そして冷やしたものを素手で水気を絞る。決してすべての水気を絞ってはいけない。適度の水気がないと、抜けた水分を補うために後から垂らす醤油をすべて吸ってしまうからである。そうすれば塩分を多めに摂取してしまうからだ。

 絞ったものを食べやすい大きさにカット。この世界に鰹節というものは存在していない。その代わりといってはなんだが、食用の黄色い花びらを2枚添える。あの鰹節の味や匂いを表現するのではなく、色合いを足して目で楽しむ食を提供する。



 次に出汁を取る。もちろん鰹節はない。この世界で鰹節を製造するには本当に鰹節の事を理解しなければいけない。ただカビをつけて鰹の水分を飛ばして、そんな工程は決して簡単ではないだろう。やはり地球は便利すぎる。

 鰹節はないので別の出汁を取ることにする。昆布で取る。この世界ではコリブンと呼ばれている海草だ。もちろん見た目は昆布。味も試食したけれども昆布だった。動物性の出汁を取りたかったのだが仕方がない。植物性の出汁で我慢しよう。

 水の状態で取りたかったので、夜寝る前に水に昆布をいれて置いたものがある。時を扱える魔法があれば料理がかなり簡単になるだろう。

 まぁボヤいていても仕方がない。そんな魔法はチートもいいところだろう。

 昆布だしから昆布を出してその出汁に野菜。人参、椎茸。里芋。こんにゃくは、まぁまだこの世界にはないらしい。あれを作るには凝固剤が必要だし、そんな科学的なものはこの世界にないだろう。

 椎茸や里芋はそのままの名前で存在している。陸で生息している植物の名前は変わっていないのかもしれない。

 そして出汁で野菜を煮る。味付けは醤油。まぁ基本の煮物だ。特別な煮物なんか作らなくても良いんだ。栄養価のバランスが取れているものを提供すれば良いんだ。

 残しておいた出汁にワカメやネギを入れる。味噌というものはこの世界には流通していて、味も普通の味噌だ。ただ手前味噌なので味わいは変わっている。その味噌を汁で溶いて味噌汁の完成。米は普通に炊いてようやく朝食が完成した。



 その朝食はあっという間に消え失せる。これは本当に員数が欲しい。

「シリル。新しい人はいつ来れるんだ?」

 朝食を一緒に取っている魔王様に聞く。ワカメがちゃんと切れていなかったのか口からはみ出ている。すぐに気付いたのか恥ずかしそうに急いで口に入れる。

「そうだな。ミランダが急いでくれればすぐに来るんだが」

 まぁ移動手段はミランダしかいないと思っていたがやっぱりそうか。いつになったら来るのか。

「やぁやぁお久しぶり。おやおや。見知らぬ人もいるみたいだ」

 食事中の俺達の前に深い深い。光が辿り着かないほど深い海底の水の色をした髪を持った女性が現れた。

「あぁ。早いな」

 シリルは彼女の正体を知っているみたいだが俺は知らない。一体誰だろう?


「やぁ雅彦。久しいな。これは私の仮の姿だ。こうすればわかるかな?」

 その女性は俺に近づき棒っきれみたいに細い右手を上げた。するとその右腕は俺の胴周りぐらいの大きさにまで膨れる。指の先端には鋭く尖る爪。そして髪の毛と同じ色をした滑らかな鱗。

「……あぁ。ミランダか。驚かせてくれるなよ。いきなり化け物が現れたのかと思ったよ」

「化け物って酷い言われようだな。なんだか少し見ない間に男らしい顔つきになったじゃないか」

 ドラゴンの腕を元に戻しミランダは人間の姿に戻る。褐色の肌。少し胸の脂肪は少ない気がするがそこは触れないようにしておいた方が良いかもしれない。今いる女性陣の中で一番胸囲が無いのだから。

「それよりも新しい人を教えてくれよ。私はドラゴンのミランダ。よろしくな」

「あっ、ココと言います。雅彦さんには色々と助けてもらっています」

 初対面の二人は互いに自己紹介をした。ミランダの厨二病にココは付いていけるのだろうか?


「でだ。ちゃんと連れて来たのか?」

「あぁ。それはもちろん。追加されて合計3人。ちゃんと連れてきたさ。もちろん料理経験者だ」

 ミランダが視線で合図をすると白いコートを来た3人の女性が現れた。一人ぐらい男が欲しいのだが。なんだか俺の居場所がどんどんなくなっているような。針のむしろ?

「いきなり料理経験者をくれって言うからなにを思っているのかわからなかったけど、雅彦が居るなら合点がいくよ。なかなか色々なことをしているみたいだしね」

 含み笑いをミランダがして俺を見る。

 俺がしたことを何故か知っているミランダ。風の便りなどをフルに使って情報を仕入れているのだろうか?


「……まぁ、そういうことだ。この城にもちゃんとした厨房係が必要だと思ったのさ」

「それじゃ私は帰るとするよ。でもなんだか美味しそうな匂いがするからそれを食べてからにするとしよう」

 と、俺にアイコンタクトで食事の催促をするので用意する。幸いにも残っていたのでそれをすべてミランダに提供する。

「ふむ。これはなかなか。私も雅彦が欲しくなってくるぞ。ではごちそうさまでした」

 あっという間に平らげたミランダは腰を上げる。

「ありがとう。急な要件だったのに」

「なに。魔王の言うことに逆らうわけにはいかないさ。それじゃまた今度」

 なんだか今日は厨二成分が少ない感じだ。仕事モードだったからなのだろうか?


 とりあえず、残された俺達はお互いに自己紹介をすることになった。

 そしてその後は彼女らの実力を図るために今日の昼飯を作らせることにした。今日の昼飯はそこまで難しくない飯として炒飯にすることにする。

 レシピは簡単だ。まずは赤々と燃え続ける炎で重厚感のある黒光りする鉄鍋を熱する。そこに油を水滴を垂らすと爆竹が爆ぜるような音が鳴るまで熱する。

 温度が高まったら細かく刻んだネギとニンニク。すりおろしたニンニクを炒める。油にネギとニンニクの匂いを移す。さっと炒めると食欲をそそる香ばしい匂いが厨房を包む。

 そのまま鍋の中に溶いた卵を投入。熱々の鍋の上に卵が流れると表面がすぐに固まる。それを鉄製のお玉でくずす。だが細かく崩さないのがキモだ。さっくりと。ほとんどオムレツの状態でも良い。それに火を完全には通さない。半熟よりもユルイ状態で火から離す。

 卵を取り除いた鍋に油を流す。卵を炒めた時よりも少し多めだ。そこへ炊いた米を入れる。そこからは時間が勝負。米粒一つ一つが繋がらないようにお玉を動かしながら炒める。

 しかしお玉を動かすといっても米粒を切断したり潰すのは御法度だ。米を傷つけないように炒める。ある程度パラパラしてきたら、ちいさくサイコロ状に刻まれた烏賊やエビなどの具材を入れる。今日は海鮮炒飯である。そしてこの時に米と具材とを混ぜる時に決してやってはいけないことがある。鍋を振ることだ。

 鍋を振るということはその瞬間、火から離すということ。鍋の温度が下がるということにつながる。火力が重要なポイントの中華料理。その行為一つで料理の味を落としかねないのだ。だから混ぜる時はお玉を使って混ぜるのだ。

 具材にも火が通ってきたら最初に炒めた卵を入れる。卵を入れたらさっくりと混ぜる。そのあとに塩、胡椒で味を調えて海鮮炒飯の完成だ。


「さて。今日の昼飯のレクチャーはこんな感じだ。それじゃあ各自、行動開始」

 俺の言葉で皆は一斉に動き出す。なんか良いものだな。俺が一番上の立場ってものは。

 と、まぁ余裕をかましていられるのはここまで。これからは各自の能力を見極めてその能力に合わせた育成をしなければいけない。

 俺の育成方針として短所・長所は人それぞれ。十人十色だ。そこで重要なのは伸ばす事が出来る短所なのか。それを見極めてそれぞれを訓練させることだ。

 短所を補うために長所を伸ばすのも良い。だが、そのマイナス分をすべてプラス分が補えるのかというと、そうではない方が大多数だ。150%の長所があっても40%の長所があれば合計で-10%になる。これでは駄目だ。

 なので40%の短所を少なくとも10%伸びるかどうかを見極める。もし伸びないのならば他の能力を伸ばす。全体でプラスにしてしまえば良いのだ。


 ひとまずココは万能型である。もともと人間の街で店を出していたこともあって動きに無駄があまりない。ココは全体的に伸ばしていった方が良いかもしれないが、この城で働くのは俺と同じ1年間。ココには自分ひとりで訓練してもらう形になるのかもしれない。

 新しく入って来た一人のケイト。彼女はなんだろう。まず特徴的な耳。ネコ耳だ。ネコ耳属性のない俺でさえ誘惑するその耳は一度触ってみたいものだ。そして褐色肌で金髪。気温の高いところの産まれなのだろうか? それとも洋風なところ? まぁそれは後々聞くとしよう。料理の腕前は本当に経験者なのだろうかと疑いたくなるよな腕前だ。火を見ると驚いたように後ろにのけ反る。ネコ耳を持っているから火が苦手。というのだったら彼女は切りもの担当になるのかもしれない。包丁の扱いはとても巧い。なるべく野菜の繊維を傷つけずに切っている。


 そのケイトがのけ反ると心配そうに声をかけるのが彼女の隣にいるマリーだ。彼女はエルフ耳。ここの厨房は耳フェチにはたまらない場所なのではないだろうか? マリーは薄い水色の瞳の持ち主。髪も瞳と同じ色。髪は染めているんじゃないかと思うほど奇抜だ。もしかしたらピンク髪もこの世界では普通なのかもしれない。

 料理面では、マリーはココと同じ万能型なのかもしれない。彼女もそつなく仕事をこなす。が、少し緊張しているのか。それともケイトがあげる声に驚いているのかビクビクと震えながら仕事をしている。ビビリさんなのかな?


 そのマリーの隣にいるのは無表情娘。エメルダ。彼女もエルフ耳。肌はとても色白でシリルと同じぐらい白いのかもしれない。胸もそこそこあるみたいだし。これは個人レッスンとか言って無理やりするのが面白いかもしれない。……まぁ、そんなことをやってみよう。シリルにボコボコにされるのが目に見えている。

 エメルダは鍋・お玉捌きは巧い。鍋担当にでもしてしまおうか? まぁ包丁の扱いがすこし残念ではあるが。まぁ包丁の扱いなどは教えることが出来るだろうから、それ以外の箇所も修正していけば良いだろう。


 俺もただ見ているだけでは兵士全員分の昼食なんて作り切ることは出来ない。時間をかけない方法で俺も奥の手を使うことにする。もちろん糸魔法をフル活動の調理だ。

 米を傷つけない繊細な動きをするにはかなりの魔法力を使ってしまい用意が終わるころにはもうヘトヘトである。魔力の回復ってどれぐらいするんだろう? 数値化されていないと結構難しいものだ。感覚で判断しないといけないから。

「とりあえず、今はお疲れ様。兵士が全員食べ終わったら俺達も食べちゃおう」

 兵士達が食べ終わったものを片づけた後俺達は昼食を取った。


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