~魔法~
えっと、すいません。色々とやることが多かったせいで更新が遅くなってしまいました。
これからも送れることがありますが、なるべく週一更新を目指したいと思います・
いつの間にか寝ていたようだ。窓からは太陽の光が差し込んでいるし、隣ではシリルが寝息を立てている。
黒い髪を撫でるとサラサラと砂が手から零れ落ちるように髪が手から滑る。
昨日の掃除やソーセージ作りの疲労がすべて抜けきっていないようで、腕が重く感じる。体の節々も動かすと痛みを感じる。筋肉痛です。本当にありがとうございます。
筋肉痛のまま城の中をうろうろと練り歩くのは自殺行為にも等しい行為だろう。だから今日はこのベッドの中から極力出ないような自堕落な生活をしていたいものだ。
俺もこの調子だからココも筋肉痛になっているだろう。彼女もまたベッドの中で今日一日を過ごすのだろうか?
それにしても俺はこの世界の魔法を使うことが出来るのだろうか?
俺が今使える魔法と言えば、この世界では存在していないといわれる移動魔法だけだ。それも使っている俺は正確に使いこなしていない。
今のところこの移動魔法を使うのには全能の石という、いつの間にか所持していた真っ赤な石。その石が原因なのだと思っていた。
しかし、2回目の移動からはシリルから貰った指輪が必要になった。指輪というよりかは指輪の装飾として使われている透明の宝石が重要なのだと思う。
そして移動したい場所の事を強く祈ること。それが必須条件みたいだ。魔法陣や詠唱をする必要はないみたい。
昨日この世界で魔法を使う動作を初めて見たが、白いチョークらしきもので床に魔法陣を書いていたし、小声でぶつぶつと呟いていた。
あれがこの世界の魔法の定義なのだろう。魔法陣と詠唱という工程をこなしてからようやく使えるのが魔法。それを俺はすべてをすっとばして移動魔法が使える。
その原因としてあげられるものはただ一つ。全能の石だ。
本来は魔族の持ち物として、人間の俺が手にしていることがあり得ないという程の代物らしいし、人間5人分の価値があるらしい。
そもそもこの全能の石というものがどういうものなのかをちゃんと説明されていない。
この石を利用することで俺がどんな事を出来るのかを突きとめたい。
まず、今このなにもないベッドの上で魔法が使えるか。それを確かめようか。
全能の石を左手で握りしめ、どんな魔法を使うかを決めてしまおう。
このベッドの上で繰り出す魔法。当然火を出す魔法なんて使った時にはこの部屋は火事になるだろう。やめておこう。
そのほかだとすると、水の魔法か氷の魔法だろうか?
水の魔法だとすると、そのままなにもないところから水が現れるのだろうか? 昨日の魔法使いは魔法陣が描かれていた場所の中央に置いていた容器の中に出現させていたし。
水の魔法は簡単に想像がつく。だけれども氷の魔法はどんなものなのかが想像がつかない。冷気を操るのだろうか?
だとしたら今ここで試すのには良いかもしれない。冷気を操るということは魔法を使えば気温が下がるということだろう。
では、頭の中で冷気を出現させるイメージを作ろう。大きさはシャボン玉。そのシャボン玉の中に出来るだけ低い温度の空気を作る。場所は右手の掌の上。
そんなイメージを起こすと、握りしめた赤い石が熱と光を発する。光で視界を遮られ、熱で硬く閉じていた左手は開いてしまった。
だが、右手には冷たい空気が触れているのが分かる。ひんやりとした冷凍庫の中にいるようなものではなく、じかに氷に触れているような感覚。
右手を見てみると本当にシャボン玉の大きさのものが浮かんでいる。普通ならただの空気だからわかるはずもないのだが、その球は竜巻のように空気の移動がはっきりと目に見える。
空気中の水蒸気が冷気で凍り、小さな氷の粒が気流に乗ってそうさせているのだろう。
まさか本当にこの俺が魔法を使えたということに驚きを隠せない。もしかしたら他にも色々な魔法が使えるのかもしれない。という想像が頭の中で広がる。
でも魔法を出現させるまでは良かった。だが、この魔法を消すにはどうしたらよいのだろうか?
空気玉に触れてもいないのに氷をじかに触れているように感じてしまうほどの温度だ。氷点下なのは確実だ。そんな空気をこの部屋で開放してみようものならばシリルになにを言われるかわかったものではない。
ではどうしたものか? 答えは簡単そうで簡単ではない。
冷凍庫に解放してみるのも良いかもしれないが、その範囲がどれほどまでのモノなのかを見誤ればこの城ごと凍らせてしまう事も不可能ではない。もちろんそんなことはないと思うけれども。
ではこの城の外で開放してみる。これも冷凍庫の件と同じでどれほどに影響するのかが分からない。困ったものだ。
と、ここまで考えたのはただ冷気を解放するだけを考えていたが発想を変えてしまおう。
この球の空気が冷たいならば、暖かい空気を足して中和させてしまえば良いのだ。
だとすると熱魔法で良いのか? だが、どこに出現させようか? 左手の球の中にそのまま魔法を加えれば良いのか? だが、水蒸気で爆発したりしないだろうか?
じゃあ今度は左手に作ってしまおう。だがそうすると石をどこで所持しておけば良いのか? 魔法は色々と悩むことが多くて頭が疲れる。この騒動が終わったら糖分を接種したいものだ。
とりあえず、石は口の中にでも入れておこうか? でも左手を開いてしまうほどの熱だ。口の中を火傷してしまうだろう。
それに熱の魔法を出すにしても左手は火傷しないのだろうか? 右手でも冷たいんだ。そもそも右手の細胞は壊死してしまう。
それはやばい。早くどうにか右手の温度を上げなくてはいけない。どうする? 考えろ。俺。
ひとまず左手に熱の球を出すのは後回しだ。右手に何かオーラ的な膜を張ってしまおうか? ひとまずやってみよう。
また頭の中でイメージ。右手と球の間に膜を張る。それも暖かい膜をだ。熱の魔法をここで練習として使うのはどうかと思うがこれをやらなくては俺の右手が凍ってしまう。
頭の中でイメージしたものをシャボン玉を出したときと同じようにそのまま発現させる。左手がまた熱かったが、光の方は目を瞑っていたのでなんとか防げた。
目を開くと、右手にはややオレンジがかった膜が覆っている。イメージがそのまま発現してくれた。
そのイメージの通り、冷気を完全に遮断してくれているし、逆に少し暑いくらいだ。真夏に軍手を二重に装着しているような感じ。だが、動きは遮られるようなことは一切なく快適だ。
そして、熱魔法も使うことが出来た。こんな簡単に使えることに驚きを隠せない。俺に魔法が使えるという喜び。驚きと喜びが入り交ざっている。
では、本来の目的である冷気を中和してしまおう。石を口の中に入れる。その際に石の周りに冷気を発生させる。そうすれば魔法を使う時に生じる熱を感じて口の中を火傷することが無いだろう。
左手に意識を集中させる。冷気を作ったときと同じようにイメージを作る。左手が異様に熱い。真っ赤に熱せられた鉄板に触れているかのように熱い。もちろんそんなことは冷気の時に学習しているのですぐに左手にも膜を張る。
これで二つの球が完成した。ここまではまぁイメージ通りやれば良いだけだったから何とかなると思っていた。問題はここからだ。どうやれば中和が出来るかどうかだ。
ただ普通に二つを混ぜ合わせることが出来るならばそのまま試してもよい。ただ、それが失敗するとなると水蒸気爆発が起こるだろう。
だとしたら暖気の方の温度を出来るだけ下げて複数回同じことをすれば大丈夫だろう。だが、俺がその暖気を何回も作れるかが重要になる。いくら石があるからといっても何回も出せるわけでないだろう。
それならばもう一度きりの勝負をしてしまおうか。勝負と言っても無神経に二つを合わせるようなことはしない。防御の魔法が使えればやっても良いのだが、そんな魔法があるかわからないし、それを俺が使えるかどうかもわからない。
2本の絹糸を撚りあわせる様にやってみる。たぶん行けるはずだ。うん。前向きにいこう。そうすれば行けるはずだ。うん。やろう。
それでは開始しよう。二つの球から一本。絹糸のように細い紐が顔を出す。笛を吹いて壺からでてくるコブラのようにゆらゆらを体を左右に揺らしている。
その二本の紐を螺旋状に絡ませる。この絡ませる時が緊張する。失敗すればそこでボンだ。俺やシリルの体は弾け飛ぶだろう。
ゆっくりと。繊細な動きを要求される。失敗は許されない。出来るだけ視界による情報で集中力が乱されることが無いように目を瞑ってイメージだけで操作する。もう爆発が分かる時は俺が死んだとき。
イメージのなかではもう二つの球は一つの球になっている。現実でもそれは成功しているのだろうか? いや。大丈夫なはずだ。うん。
目を開くと球は一つになっていて、両手の中に君臨していた。うん。成功した。大丈夫だ。じゃあ最後にこの球を解放しよう。もう室温とそうそう変わらないだろう。
と、解放してみる。
やっぱ解放しなければ良かった。
その球を解放したところから突風が吹いた。
俺はその突風をモロに受けてベッドから飛ばされた。シリルも一緒にだ。その衝撃で目を覚ましたようだ。
「……おい雅彦。どういうことだ? 説明させてもらうぞ?」
鋭い目つきで睨まれた後、俺を下敷きにして落ちてきた。
「……あぁ。その、ちょっと魔法を使ってみたんだ。ちょっと加減を間違えたけれども」
「……加減を間違えたで済まされるようなものじゃないぞ。今日は魔法の使い方を教えるから」
俺の上から立ちあがったシリルは再びベッドの中に戻って行った。俺も体の力がうまく入りにくくなっているのでベッドに戻ってもう一度寝ることにした。
これからも応援をお願いいたします。
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