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第5話『存在したものを受け取ること』著:女将【読者地図】
『存在したものを受け取ること』
著:女将
物語は、
声を持つ者だけの
ものではない。
言葉にできないもの。
届かなかった声。
誰にも見つからなかったもの。
そして、
もう消えてしまったもの。
それでも、
そこに在ったことまで、
なくなるわけではない。
誰にも語られなくても、
誰かに覚えられていなくても、
確かに、
そこにあった時間がある。
だから私は、
無理に言葉にしなくても
いいと思う。
話せないなら、
話せないままでいい。
届かないなら、
届かないままでもいい。
ただ、
そこにあったものを、
誰かがそっと受け取る。
それだけで、
物語は始まるのかもしれない。
温かいものを、
次の人へ渡すように。
――物語とは、
「語ること」だけではなく、
「存在したものを、
誰かが受け取ること」なのだと思う。




