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第21話『まだ、見えていなかっただけ』著:雇い主
『まだ、見えていなかっただけ』
著:雇い主
私は、ひとつの物語を書いたつもりだった。
始まりを決め、
終わりを決め、
そこにいる人たちの行き先まで決めた。
けれど、
気がつけば、
その物語から別の場所へ線が伸びていた。
別の時代へ、
別の人生へ。
私は、それを
「世界が広がった」と思っていた。
でも、違ったのかもしれない。
世界が広がったのではない。
私が、見ようとしていなかった場所が、
少しずつ見えてきただけなのだ。
そう考えると、
私にも、
この地図のすべては見えていない。
ならば――
この先に何があるのかを決めるのは、
私ではないのかもしれない。
まだ見えていない場所へ、
誰かが線を引く。
私はただ、
その線がどこへ続くのかを、
見届けてみようと思う。




