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星願未遂 ふたりの長いものがたり リマスター版  作者: つくね


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34/52

― スナイパー ―


 わたしは晴れて高校生。

 あのあと、ふたりがどうなったのか、私はちゃんとは知らない。

 でも、空気って、案外バカにできない。

 何かあったなってことだけは、私のアンテナがちゃんと拾ってる。


 お兄ちゃんと凜ちゃん。

 ふたりの間に流れる空気が、なんか変わった。


 たとえば、凜ちゃんが家に遊びに来てリビングで3人でテレビを見てるとき。凜ちゃんが前よりちょっとだけ、リラックスしてる。

 お兄ちゃんはそれを見て、すっごく自然に笑うようになった。


 でも、目が合う時間が増えた。

 無意識っぽく見せて、ちょっと意識してる感じ。

 いや、絶対してる。

 こういうの、普通の友達だったらしないやつ。


 私が台所にジュース取りに行ってる間に、なんか空気が変わるときがある。

 戻ってくると、ふたりともやけに静かで、でも顔はほんのちょっと赤い。

 なにそれ? 恋愛ドラマ?


 でもさ、そういう嘘って、気づく方はすぐ気づくんだよね。

 別に問い詰めたりはしない「やっぱり、そうなんだろうな」って、思ってる。


 でも――

 私は、決定的な瞬間を見たわけじゃない。

 キス、したのかもしれないし、してないのかもしれない。

 けど、たぶん。

 ううん、絶対にした。


 それくらい、凜ちゃんとお兄ちゃんの表情がやわらかくなったし、

 この前なんて、凜ちゃんの名前を呼ぶ声が、前よりちょっとだけ、優しかった。


 凜ちゃんも気づいてると思う、あの呼び方の変化。

 たぶん、ちょっとだけ照れてるんじゃないかな。

 だから私は、気づかないふりをして、ソファにダイブして、お兄ちゃんの顔を見上げながら聞いた。


「ねえ、凜ちゃんって、お兄ちゃんのこと好きなの?」

 わざと軽く。ちょっとだけ意地悪に。


 お兄ちゃんは、コーラ飲みかけて、むせてた。

 凜ちゃんは顔を真っ赤にして、私の頭をクッションで叩いた。


 うん、確定だな。狙い通りターゲット的中。


 私、知らないふりするの、たぶん得意なんだ。

 昔から、空気読むのがクセになってる。

 だから、ふたりが本当は特別な関係になってることくらい、言われなくてもわかる。


 でも、聞かない。

 今はそれがちょうどいい。


 いつか、ちゃんと教えてくれるかな。

「あのとき実は……」って。


 そしたら私も言おう。

「あのとき、全部バレてたよ」って。


 その日が来るまでは、私は、ただの妹を演じてる。

 ちょっと大人ぶった、でもまだ子どものふりをした妹。


「ねえ、ふたりってさ、ほんとに何もないの?」


 今度は、そう聞いてみようかな。

 もちろん、また笑ってごまかすと思うけど。


 それでいい。

 ふたりがふたりらしくいられるなら、私はこの心地よい空間が好きだから――

 私は、ふたりがやっとくっついてくれたことが、本当に嬉しいの。


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