学んだことを生かすこと
「こういうのはできる人に任せて役割分担したほうがいいと思います」
「役割分担も大切だよね」
スウと話しているとネブがお茶を飲み、スウも続く。
「ネブさんもそう思いますよね?」
ルタもお茶を一口飲んで、会話を静かに見守っていたネブに問いかける。
「そうですね。そういう考えもありますね」
「ほかにもあるんですか?」
「チャンスを逃すって考えもありますよ」
ネブが頷いていたルタに言う。
「チャンス、ですか」
「自分を磨くチャンス、ですよ」
お茶の香りを楽しんでから、ネブはルタの質問に答える。
「スウさんと同じことを言うんですね」
ルタは少し、強い口調で話す。
「大事なことですから」
ネブはスウを見つめ、その視線にスウは微笑みを返す。
(やっぱりこういうことは、できた方がいいのかな)
ルタはまたお茶を口に含み、少し考えてから針を手にした。
針で指をさしつつも、ルタは繕いを続け何とか縫い終える。
「できました!」
「お疲れ」
ねぎらいの言葉をかけるスウ。
「そろそろお昼寝も終わる時間ですし、またお願いしますね」
ネブに見送られ、ルタとスウは仕事に戻る。
「お姉ちゃん、エプロンどうしたの」
「片方はきれいなのにもう片方はボロボロ」
子どもの素直な言葉がルタの胸をえぐる。
「ほーら、こっちでボール遊びしよっか」
スウの声に子どもの何人かが向かう。
(もっと練習して、上手くなろう)
ルタは心の中で決意してスウや子どもの輪に加わった。
日が傾きだしたころ、親が迎えに来る。
手をつなごうと手を差し出す親に顔をそむける子どもいた。
「なら私が手をつなぐー」
差し出した手を取ったのは姉だろうか。
顔を背けた子は複雑な顔をして親の手を見る。
反対側の手を差し出す親。
子どもはその手を取って、親と三人家路に向かっていった。
「ようやく終わりました」
最後にいた子どもがルタやスウに手を振ったあと、ルタは大きく息を吐いた。
「お疲れ、休めるときは休んでおいてね」
スウの指摘を受け、ルタは気づく。
「はい。適度に気を抜いて、できること増やしていきますね」
「うん。今まで学んだことを応用しても良いからね」
ルタとスウはそれからしばらくして、ネブに挨拶をして仕事を終える。
「今日はありがとうございました。次は海向こうの話とか聞かせてくださいね」
「お先に失礼します」
ネブにあいさつした後、ルタとスウは雑談を交え、帰路に就いた。