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ページの外側

ユリコは空に浮かぶ星を見た後、"扉"がある方面に視線を写した。

あの向こう側には、愛娘一家が暮らしている。

移住して10ヶ月が過ぎた、気分的には海外にいる位なのだが、距離はそれこそ世界を越えているのだ。容易に会えないのは事実だ。

「百合子。」

久しぶりに名前を呼ばれて、振り返れば最愛の夫のミツルがグラスを持って現れた。グラスにはウィスキーが注がれていた。

「ザイアスからもらったウィスキーにしたぞ。」

「ありがとう、あなた。」

ユリコは受け取ると、再び星を見上げる。満天の星空が見える空を同じく眺めて、ミツルが話す。

「明日だったな、"扉"の。」

ユリコはまた不安な表情へとかわる。

愛娘からの手紙には、"扉"を維持する為に大掛かりな魔術を使うらしい。

「命に関わらない程度に頑張るけど、もし何かあれば、ミズハだけでも母さんたちに預ける。」

まるで遺言に近い愛娘からのお願い。ユリコはあまりにも不安になり、思わずカズトの大叔母にあたるカスミさんへ電話したのだ。

愛娘達は知らないが、実はユリコは愛娘がまだお腹の中にいた頃に、安産祈願をしに神森神社へ何度か足を運んでいたのだ。

その際に神主のカスミさんと知り合っていた。趣味のコーラスもあり、親しい仲であった。

縁はすでに、ここで結ばれていたのだった。

「詳しく話せないけど、あの子達だったら大丈夫。私もちゃあんとお祈りするから。」

カスミさんはそれだけしか話してくれず、心配なら一度いらっしゃい、と神森神社からさっき帰って来たばかりだった。実際に会ってもお守りをくれただけで、やはり話してくれなかった。

「カスミさんが大丈夫って言ったんなら大丈夫だろう。」

ミツルは能天気に話すから、ユリコの不安は募る一方だ。

「もうあなたはいつもそう。」

「私達には何も出来ないだろう?代わってやりたい、なんて我が儘を言える歳でもないだろう。」

至極真っ当な答えに、ユリコはウィスキーを一気飲みする。それを見て、ミツルは苦笑する。

「思えば、無茶なお願いがきっかけだったな。」

ミツルはザイアスと出会った時を思い浮かべる。

異世界移住で豪華なセレブ生活!と謳ったパンフレットが、ポストに入っていた時は詐欺を疑った。

しかし、愛娘達が借金に追われ、絶望的な状況で今にも死を選ぶのではないか、といてもたっても居られないミツルとユリコは、すがる思いでパンフレットに記載された電話番号にかけた。

「はじめまして、ザイアス・シルフィ・エレノールと申します。」

電話で応募したいとかけ、書類を送り、ようやく会えた異世界人招致担当責任者の姿は驚いて言葉もでなかった。

だが、それでも、愛娘達を助けたい。

今思えばとんでもない博打にかけたものだ、とミツルはウィスキーを喉に流し込む。

事情を話し、土下座をし、ザイアスの目の前に渡せるだけの現金を積んだ。

「貴方達は、とても子供想いの、素敵なご夫婦なのですね。」

そう微笑んだザイアスは、協力を買ってくれた。愛娘達には内緒で髪の毛を採取し、ザイアスに提供してから数日は生きた心地もしなかった。

「魔術師として、かなりの才能をお持ちでした。これなら救えます。」

ザイアスから電話で話された直後は、年甲斐もなく夫婦で大泣きした。愛娘達は助かる、確信を得られた時は涙と興奮は一晩中続いた。

だがそれも束の間、愛娘たちが無理心中を図ると遺言と称したメールが届き、慌ててザイアスに連絡し、彼に向かってもらう時も、生きた心地もしなかった。

現地で話し合いがされ、愛娘達が納得し、移住を決めたと知るまでは一切寝れなかった。

「母さん、父さん。本当にごめんなさい、ありがとう。」

死を選ばす、異世界で生きることを決めた愛娘からのメールが来て、ユリコがベッドに倒れ込むように気絶したことを、ミツルは鮮明に覚えている。

「今度もきっと大丈夫ね。」

「そうさ、あの時、あの子達は死ぬことを選ばず、世界を越えても生きると決めた。その気持ちはきっと背中を押してる。」

再び、互いのグラスにウィスキーを注ぎ、乾杯をする初老の夫婦の姿は、さながら映画のような美しさを見せていた。

「ミズハだって頑張る、といってるんだ。絶対に大丈夫だ。」

「じじバカねぇ。」







「--------?」

小さな少女は目の前の"扉"を見つめる。

何故か、大好きな祖父母が笑ってるような気がしたからだ。

最終章の前に挟むか悩みましたが、

やはり盛り上がるかと思い、割り込み投稿します。

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