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第五章 森の中での出会い 2話

「こっちだ、アカネ。」

サーシャとフェアリーの案内で、無事他の薬草も採取が終わり、陽が真上にきた頃になった。

昼食にしようかと話したら、サーシャが良かったら私の家で、と誘ってくれたのだ。

エルフ族の集落なんて見たことない私は、ぜひ!と誘われるまま着いていくことに。

フェアリーは何か用事があるらしく、また遊ぼうね!と約束して森の中へ溶けるように消えていった。アメリが前足でバイバイしたのが可愛すぎた。

その為、現在は私達3人で集落へ向かっている最中だった。

「(サーシャの集落の長は、アグシュかしら?)」

「はい、そうです。まぁ、村長はエルフ族の中でも変わり者ですから、お名前を存じてましたか。」

変わり者、と言われた村長の話で盛り上がる二人。私は適当に相づちをうちながら、周囲を見る。

先程から何か背中辺りがもぞもぞする感じがあるのだが、二人はそんな素振りすら見せないので、私だけのようなので、気にしないでいる方向にした。

「さぁ、そろそろ着くぞ。」

サーシャの言葉通りに、視界が開けて道が広がった。大きめの道の先には、山小屋が点在しているエリアがあった。

「ようこそ、我が家へ。」

サーシャの言葉に、私がなんだが感動しちゃって声が出た。アリスは久しぶりにきた、と呟いていた。

集落というが山小屋の数はかなりあるので、ちょっと大きい村位の規模だ。サーシャがいうには中規模の集落らしい。

集落内を歩くと、エルフだけでなく、人間やドワーフ族、獣人族と他種族が集まり、かなりの賑わいがあった。

「活気があるんだね、質素なイメージがあったよ。」

「普通のエルフの集落ならそうだな。この集落はさっきもいった変わり者のエルフが長をしているせいか、他より賑わいがあるんだ。」

サーシャはそういえば、と私とアリスを見る。私は美人なエルフさんに顔をみられ、ん?と見返す。

「長に一応挨拶しておくか?」

確かに挨拶は大事だね、とアリスと話すとそのまま村長の家に向かった。長の家は、集落内での一番立派だという。

実際に向かった家はかなり大きかったのだが、ぶっちゃけると何故か窓ガラスがヒビ入ってるし、二階の窓がなかった。

「えっと、サーシャ?」

「言いたいことは分かるぞ、アカネ。長の家らしくない、だろ?」

聞く前にバレバレのようだった所から察すると、これは日常茶飯事なのかな?と思った。

「長はな、こういうことには無頓着でな。家族もいないし、誰も言えないんだ。」

サーシャは頭を抱えつつ話す。あー、よく長が務まってるなぁ。

「長様、いらっしゃいますか?」

声は響けど返ってくる答えはなく、今は留守のようだった。

「いなそう?」

「あの方は気まぐれに行動したりするからな。仕方がない、出直そうか。」

先にサーシャの家で昼食にしようか、と話し合って威厳の欠片もない長の家を後にした。




サーシャの家は比較的に近かったので、すぐに到着した。私とアリスがお邪魔すると、内装は質素だが生活感があるリビングに通された。

「昼御飯は持ってきてるか?ないなら、私が何か作ろうか?」

「あ、大丈夫。おにぎり作ってきた。」

「おにぎり?」

サーシャはマナリスにはない日本食の代表、おにぎりに興味があるようで、私はリュックからおにぎりを出して見せる。

「一個あげるから、サーシャのご飯と交換しよ?」

「いいだろう。アリス様はいかがされますか?」

「(私はお腹すかないし、飲み物だけでいいかな?)」

アリスの言葉にサーシャはかしこまりました、とこちらから見えないがキッチンに向かった。エルフの食事って何が出て来るか楽しみだな。

しばらくすると、サーシャが精霊魔法を唱えたのか、炎の精霊が現れた気配を感じた。すると美味しそうな匂いがして、サーシャが皿やカップを持って戻ってきた。

「私の自信作だ、味わうと良いぞ。」

私の目の前に現れたのは、日本でも見覚えがある料理だった。

「ピザ、かな?」

「ほぉ、異世界にもあったのか!こちらではエルフの代表食のミヤニャ、と言うんだ。」

言いづらそうな名前だったそのピザはマルゲリータみたいだった。チーズもトマトソースもあるが、バジルだけでなく他の葉もかなり乗っていた。

「アリス様には、こちらのハーブティを。お口に合うと良いのですが。」

「(ありがとう、サーシャ。)」

ハーブティを楽しむアリスの横で、私とサーシャは昼御飯の交換をし、一緒に昼食を頂く。

「んっ、んまぁ。」

ミヤニャは香草の香りとチーズがマッチしてて、なかなか美味しかった。サーシャも私が作った梅入りおにぎりが気に入った様子だった。

「米というのか、こちらにも似たものがあるな。再現可能だろうか。」

「大丈夫、むしろその米はこっちの材料だから。」

サーシャはぜひ教わりたい!と言うので、今度家に招待することになった。

「アカネより凄い魔導師達にも会いたいしな!」

「一人、こないだ初等学校に行ったばかりだけどね。」

ほぼ赤ん坊ではないか!と言うサーシャ。エルフから見たらそうなんだろうけど、魔導師から見たら十分実力のある魔導師でもあるのが、うちの愛娘ミズハなのだ。

「楽しみだな。」

サーシャの笑顔に嬉しくて私まで笑顔になる昼食が、

「魔物が出たぞ!怪我人がいる!守人集合!」

悲痛な叫び声で終わりを告げた。




集落の広場には守人のエルフ達だけでなく、冒険者らしき人間や獣人達の姿もある。

「長!」

サーシャと共に私達が駆けつけると、長と呼ばれたアグシュとその場に寝かされ、痛そうな表情の人間の男性がいた。

「サーシャ、来たか。ん?」

アグシュは私とアリスを見て、一瞬顔を歪めたが、今はそれどころではないと気持ちを切り替えたようで、

「精霊王夫人アリス様、今は簡易的な礼儀で失礼します。」

と長の言葉に周りにいたエルフ達と共に、一礼だけした。そして、アグシュは私を見た。

「異世界人の魔導師殿だな。」

「はい、アカネと申します。何があったのですか?」

こんな時にも簡易的とはいえ、きちんと挨拶してくれるアグシュ。私も軽く会釈のみにして、状況を聞く。

「ここから比較的に近い場所で、突如地中から瘴気が溢れ、近くにいた無害な動植物を巻き込んで、魔物化したらしい。」

瘴気、そう聞いて周囲にいた全員がざわついた。私は最近習った魔脈に関する勉強の内容を思い出す。

マナリスの魔力の根源は、魔脈と呼ばれる目に見えない線だ。

大地深くに、あるいは自然にあり、場合によっては動植物に、人にすら宿ったりするそうだ。

その魔脈が稀に自浄力を駆使して、悪い気を吐き出すことがあるんだそうだ。それが瘴気だ。

この瘴気が生命体に触れると悪影響を及ぼし、最悪は魔物化してしまうそうだ。

「長、最近頻繁していませんか?3ヶ月前にも発生しましたよね?」

近くにいたエルフがアグシュの後ろから話しかけた。日付的には私達が移住する前だが、長い年月を生きるエルフにとっては、つい最近なんだろう。

アグシュは悩みこんだタイミングで、怪我人の男性が痛がる声がしたので、私はそちらに意識を向ける。

男性は私より年下のようで、若い男性だった。重厚な鎧は一部は破損し、刺さってるはずの剣は鞘しかなかった。

「この方の治療が先ですね。」

「ああ、だが癒し手のエルフがまだ来ていなくてな。」

「なら、私が代わります。」

私は杖を構え直し、左手で男性の手をとり、得意な分野でもある聖光魔法を唱える準備を始める。

まずは相手の状態を確認する魔法から。

「【診察開始(ラベリア)】」

左手から相手の状態を魔力を通して確認する。怪我の具合は外傷はあるが、特に内臓関連がかなり酷かった。貫通の形跡が見られたので、私は相当魔力を使うと判断した。

「アメリ、アリス、ちょっと手を貸して。」

「(わかった。)」

「なっ!!」

アリスに軽い感じで頼んだせいか、アグシュを含め周りのエルフ達は驚いたようだが、すぐサーシャが説明したようだ。

なので、無視して聖光魔法を続行する。ウェストバッグから液体の入った小瓶を取りだし、男性に与える。半分残し、それを私も飲む。ちなみに味はさっぱりとしたリンゴ味だ。

「(アカネ、いつでもいいわ。)」

アメリは肩から杖に移動、アリスも杖を掴んでいるのを確認し、私は深呼吸後に聖光魔法を唱える。

「【治療開始(ミザリア)】、【聖水共鳴(エベルド)】、【臓器再生(アッシェル)】。」

男性に飲ませた液体を私の魔力でリンクさせ、内側からの治療を行う。痛みが和らいだのか、男性の呻き声が収まる。治癒したのを確認してから、続けて外傷を癒していく。

「【皮膚再生(フィアレ)】、【血液変換(ブラリア)】、【診察開始(ラベリア)】、【治療終了(ミザリア)】。」

外傷が癒せたら、次に先程の聖水を失った血液に変換し、補充。最後に一通り確認して、聖光魔法は終了となる。

息を吸うことを思い出したかのように、ぶはっと呼吸した所で周囲から歓声が上がった。

聖光魔法は連続詠唱、魔力は大量に使う為、使い手がそもそも少ない。精霊魔法にも治癒はあるが、かなり緩やかな回復を促すので、間に合わない場合がある。あと病魔ごと癒しちゃったりする可能性ある。それとは違い、医者のように原因を探り、病原を取り除き、一瞬で治癒する聖光魔法は、まさに奇跡と変わらないのだ。

始まりから終わりまで一気に聖光魔法を使ったのは初めてだったから、いろんな意味で緊張したが、成功したようだ。

「うっ、あ。」

男性が目を覚まし、私は左手を離して、アメリとアリスに礼を言う。男性は怪我をしていたのを思い出して、傷を探したが見つからず混乱していた。

「大丈夫です。聖光魔法で全て完治しましたよ。」

私がそう声をかけると、男性は真っ直ぐ私を見て、驚愕の顔がみるみる嬉し涙に染まる。

「感謝します!!」

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