第二章 お姫様とのお茶会 4話
お茶会は終わり、部屋からでた後、屋敷を後にした私達の目の前で、ザイアスとロッズは馬車の中で燃え尽きた灰のような状態だった。
「生きた心地しませんでしたよ。」
「意外と話が弾んじゃって。」
オフェリアとのお茶会は、焦る場面は最初だけで、会話している限り、本当に異世界のことに興味があるただの少女とのお茶会だった。
「一応、王族に繋がりのある方ですから、これでもう貴族達からのお誘いは収まるでしょう。」
「まぁ、また来ますって話にはなっちゃいましたけどね。」
私の言葉に、またしても深いため息が聞こえてきた。
「日本の書物を見たい、でしたっけ?」
「字は読めないけど、見てみたいからって。」
あの調子なら日本語は余裕で覚えるだろうな。早くて10日だな、とカズトは呟いた。
「オフェリア様は日本でいうところの文武両道ですからね。」
「そんな言葉、どこで覚えたの?」
帰りの馬車は、比較的に安堵の空気が漂っていた。軽くお茶会での話をして、馬車は私達の屋敷についた。
「さて、私達はこのまま中央都市に帰ります。」
ザイアスとロッズは馬車からは降りずに、私達に向けて話す。
「そうですか。今日はありがとうございました。」
カズトが礼をいうと、あまり役に立ちませんでしたが、とザイアスは笑みを浮かべた。
馬車は中央都市への街道に向かって、ゆっくりと走り去っていった。
私達はローブを引きずりながら、屋敷に帰りついた。
「おかえりなさい!」
ミズハの愛らしい声を聞いて、ようやく私は心の底からホッとするのだ。
夕飯を済ませ、オフェリアからもらった土産の菓子をデザートに、私達は夫婦の寝室でくつろいだ。
「ローブは一応返すんだったっけ?」
「ああ、とりあえず持っていていい、とは言われたぞ。」
なら、明日洗濯しとくか、とローブを畳んで洗濯かごへ入れた。
肩が痛むのか、カズトが腕を動かし、肩を回し始めた。
「痛むの?」
「いや、こった。そりゃ、こんなん着たらなぁ。」
改めてローブに付いていた飾りを見るカズト。私のローブよりも豪華で重かったらしい。
私はそんなカズトに近づき、肩を揉み始める。
「今日はお疲れ様。」
「ああ、次までに着付け、覚えないとな。」
オフェリアからのリクエストもあり、次回は着物でお茶会となった。
そのために、しばらくは講義を含めた勉強に着付けも加わる羽目になった。
「しかし、普通よね。」
私が肩を揉みながら、オフェリアの印象を呟いた。
「確かに、顔や身なりは完璧にお姫様、って感じだけど。なんか、暗い所がない感じ。」
「王位継承権ないんだから、暗躍することもないだろ?」
それだけが理由なのか、私には解らなかった。ただ、一抹の不安が何故かよぎる。
「王族なんてでっかい権威を持つ人間なんて、そばにいなかった身としては、判別つかないかぁ。」
私はとりあえず肩もみを終え、ベッドに潜り込んだ。
「はぁ、疲れた。もうねる。」
夫婦共に、早めにベッドに潜り、いつもよりも早い眠りの波に飲まれていった。
----------声が聞こえた。
何かを呼び掛ける声。次第に、それは叫び声になった。
苦しくもがいている、まさに苦悶の声。
声をたどると、少女がうずくまっている。
見覚えのある金髪の少女に、私はそっと近づき、抱き締める。
「アカネ?」
「うん、大丈夫?」
相手も気づいたのか、私の名を呼ぶ。
「何でアカネが?」
「呼ばれた気がして。」
周囲を見回しても暗い空間が続くだけ。
「いつもと違う。」
少女は言う。私がある一点を見つめ、凝視した。
かすかに、見覚えのある何かがあった。
「!!!!」
ベッドから飛び起きた私は、まるで息をすることを思い出したかのように、息を吸い込む。
「ゆ、夢?」
あまりにもはっきり覚えていたので一瞬疑ったが、周りを見てようやく理解した。
「オフェリア。」
夢の少女は間違いなくオフェリアだった。
酷く悪い想像がよぎるが、深く考えないようにして、再びベッドの中に潜った。




