第二章 お姫様とのお茶会 3話
入った部屋もまた、豪華な造りで赤や金が散りばめられた、まさに王族が住まう場所といえるような部屋だった。
部屋の中央には円卓があり、一つの席には女性が座っていた。
金髪に薄い水色の瞳の10代の美少女、優雅な見た目なのだが、驚いたのは、彼女は赤地に花柄の浴衣を着ていたのだ。
「さぁ、入って。お話をしましょう。」
オフェリア・エレナス・ヴァンフォレア、現国王の姪にあたるお姫様は笑顔で迎え入れた。
「本日はお招き頂き、ありがとうございます。」
カズトが覚えた挨拶をすると、オフェリアは少し眉をつり上げた。
「堅苦しい挨拶もいらないわ、その帽子やベールも脱いでしまいなさい。」
そう言いながらオフェリアは、私達から帽子やベールを外しにかかる。帽子はあっさり奪われたが、ベールは時間がかかりそうはので、私も手伝って外した。
「あの、失礼します。」
ようやく席につくと、オフェリアは満足げに座る。
「こちらの自己紹介は省くわ、オフェリアでいいからね。」
「カズトと申します、隣が妻のアカネです。」
相手がいい、と言うならとあっさりとした自己紹介を済ますカズト。まぁ、相手がいいならと私は軽く頭を下げる。
「前にきたソーリダイジン?は、ほとんど国王が付きっきりだから、話が出来なくて。」
紅茶をつぎながら、オフェリアは愚痴り出した。
そりゃそうだろうねぇ、国王そっちのけでは話にならない。
「色々聞かせてね!えっと、まずは何から聞こうかしら。」
長丁場必至の状況に、私は内心はヒヤヒヤ。だが、そんなこと顔にすら出ないカズト。
「私達も知らないことは答えられませんので。」
「ああ、そうよね。大丈夫、難しい話じゃないわ。」
そういうと、オフェリアはあっと声をあげた。
「そうよ!まずは趣味を聞くべきね!」
まさに初めて顔合わせする見合い状態からのスタートになった。
「へぇ、カズトは本を集めてるのね。」
「はい、文学に興味がありまして。」
オフェリアとカズトが会話しているのを見ながら、私は相づちをして参加する。
「アカネも文学が好きだったのよね、学者か先生なの?」
マナリスでは本はあまり多く流通しておらず、集めてるという言葉にオフェリアは、恐らくそう考えたのだろう。
「日本で、いや、あちらの世界では製本や印刷等の、本を大量生産できる環境が整ってまして、かなり身近なものです。」
「大量に!?すごい、なら私でも手に入るのね!」
とても興奮した様子で話をするオフェリア。
「ただ、やはり言語が違いますから、読めませんね。」
「ああ、そうよね!言葉が通じるからてっきり大丈夫かと思ったのに、残念だわ。」
オフェリアは少し残念そうにうつむくが、
「私達が半月ほどで言語を覚えましたから、オフェリア様ならあっという間に覚えますよ。」
と私のフォローに、オフェリアは頑張るわ!と意気込んだ。
「ちなみに、どんな本がお読みになりたいのですか?」
気になってジャンルを聞いてみた。
「恋愛ね!冒険譚も好きよ!」
意外と女子っぽいとこがあるご趣味だった。
「なら、アカネ。漫画を貸したらどうだろう?」
カズトから言われて、確かにと同意する。漫画、という言葉に興味津々に訪ねるオフェリア。
「あー、絵本に近いですが、一枚のページに複数の絵を描いて、順番に読む形です。」
「ほぅ、実際に見てみたいものだ。」
説明が苦手な私の言葉にも興味を持ってくれたようだったので、次に来るときに持ってくると約束した。
「私の好きな恋愛物、お持ちしますね。」
「楽しみにしているわ!」
こうして、何とか円満にお茶会は進んだ。
なお、恋愛から派生して、私達夫婦の馴れ初めや娘の出産エピソードにも話が及び、結果、昼から夕方まで長引いた。




