番外編:勇者の結末
※世でいうBL的な表現が軽く入ります。苦手な方は回れ右をして下さい。残念ながらエロ要素はありません。
【視点:加賀美浩介】
目の前に広がっていた魔物の大群が次々と丸焦げになっていく光景に、俺は、ただただ、呆然としていた。
「あの姉ちゃん、やるぅぅぅうう!!」
興奮するロイトの視線の先には、神獣に跨がる東雲悠理と姫川麻里がいた。
「凄えな。俺たちの出番ないんじゃね??」
「ちぇ。でも、面白いものが見れたな」
次々と消えていく魔物達に討伐隊の連中もどこか苦笑している。
結局。俺は、英雄としての役目を一つも果たすことができなかった。
「そんなに落ち込むな。犠牲者が一人も出なかったんだ。喜べよ」
項垂れる俺をロイトが励ましてくれた。
「そうだよな……」
ロイトのこの一言だけで俺の心は救われる。
「それにしても流石ルイが選んだ女性だけはあるわぁ。お前、ユウリと同郷なんだろ??」
同郷という言葉に背筋に冷や汗が流れる。
「……」
「ん? 違うのか?」
「…い、いや、そうなんだが……」
今までの自分の行いにどうしても歯切れの悪い態度になってしまう。
ふと脳内に、日本にいたときの俺の彼女に対する態度を、ロイトが知ったらどうしようという思いがよぎる。
ロイトにとって、ユウリは命の恩人だ。したがって、ロイトはユウリに好印象を持っているに違いない。
「…コウスケ、過去は変えられないぜ」
「…分かって、いる……」
ロイトの言葉が俺の心に突き刺さる。
「お前がユウリにしたことは…大体予想はつく」
「……そうか」
他でもないロイトに指摘されるのが苦しかった。
「ユウリは俺の命の恩人だ。ユウリがいてくれたからこそ、俺はこうしてここにいることができる。そんな俺にとってお前は嫌悪の対象でしかなかった」
「っ……」
嫌われているとは思った。それでもそれを言葉にされるとでは精神に与えるダメージ量が違う。
「…自分のことは、自分が一番分かっている…つもりだっ」
視界が滲み出す。高校生にもなった男が涙を流すことに抵抗は感じる。そうと分かっていても、好意を抱いている相手から「嫌い」と言われたら、流石に泣けてくる。
「ふっ、なに泣いてんだよ」
ロイトが優しく俺の背中を撫でてくる。
ロイトは優しい。そして酷く残酷だ。
こんなことされたら、勘違いしてしまうではないか……。
ん? い、今、俺はなにを考えていた??
「は、離せよっ」
俺は慌ててロイトの手を振り払った。
俺の恋愛対象は女だ。なに血迷ってるんだ、自分!!
俺はなんとか起動修正をしようと試みる。そんな俺の心情などお構いなしにロイトが俺の手に自分の手を絡ませてくる。
「そんな傷ついた顔すんなよ。もっと泣かせたくなるだろ?」
「はあっ!?」
ロイトの意味深な言葉に、俺は思わず素っ頓狂な声が上げてしまった。
「馬鹿だよな、お前。まあ、そんなところがいいんだけどよぉ」
何を言っているんだ、こいつ??
いつの間にか涙が止まっていた。
「よーし、涙は止まったな。お前は何も考えずに俺の隣まで這い上がってこい」
「……」
「そしたら、俺が……」
「……ロイトが?」
「お前を貰ってやるよ」
「バ、バカなことを言ってるんじゃねぇええええ!!!!!」
顔に熱が集まっていくのが分かる。
「そもそもっ、俺たちは男同士だろうがっ!!」
「それがどうした?」
「なっ!?」
どうやら、ロイトは男同士の恋愛に対して全く抵抗がないらしい。
まあ、俺もないけど……。
好きになったのがたまたま男だっただけ、ただそれだけだろ??
「……ロイトは俺のことが嫌いじゃなかったのかよ」
ついつい可愛くないことを言ってしまう。
「最初はそうだったわ。だが、お前が必死に変わろうとしているのを見て、好意を持った。お前も俺のことが好き。問題ねぇな」
「問題大有りだわ!!!」
俺の声が森中に響き渡った。
それから数年後、二人の騎士が世界中にその名を知らしめた。
二人の騎士はお互いにお互いを支え合い、その力は一国の軍に値した。
二人の騎士は生涯独身を貫く。だが、不思議なことに二人には愛してやまない息子二人がいた。
二人の騎士が恋仲にあったことは誰もが知る事実。
そんな二人に感動した女神が、彼らに子供を授けたのではないかと言われている。
そして、この二人の騎士の影響なのかは定かではないが、同性同士の恋人は住みやすい環境となったのであった。
※これ以降の番外編は、今のところ、執筆しておりません。
また、新しく投稿した小説があります。こちらは、ファンタジーなので恋愛要素は少なめです。




