ベスト8
この物語はイジメを助長する目的ではありません。この話はイジメを含む一部作者の体験を織り交ぜたフィクションです。精神的に不安定な方や気分を害す方、感情的になりやすい方などは閲覧を控えてください。
登場人物
早川イサム(勇)
一卵性双生児の兄。弟より小柄で気弱な面もあるが努力家。父のサッカーに憧れる。
早川マサル(勝)
一卵性双生児の弟。明るくて素直な活発な少年。気弱な兄を支える優しい子。いつも兄と勘違いされている。
早川ソウスケ(宗佑)
双子の父親。サッカーJ2リーグのプロ選手。遠征中に不慮の事故で命を落とす。
早川ヨウコ(陽子)
双子の母親。フリーのカメラマン。取材の時に宗佑と出会い結婚。双子を出産している。2人の子供が成長したことで、仕事を再び始める。
山本ナツミ(夏実)
朝比奈学園中等部3年。サッカー部のキャプテン。大柄でぽっちゃりとした優しそうな先輩。口調も性格もおっとりしている。
夜桜イオリ(伊織)
朝比奈学園中等部2年。サッカー部のエースストライカーで長身イケメンだけど言葉遣いが荒いのがちょっとネック。関西弁なので余計にきつく聞こえるが実はすごく後輩思い。
柴谷マモル(護)
朝比奈学園中等部1年。野球部で捕手、マサル親友。お調子者だが友達思いの優しい少年。
朝比奈学園のサッカー部過去の記録を塗り替える快挙に学園中がお祭り騒ぎになっていた。今まで注目されていた野球部もエースを失って困惑していた為、久々の喜ばしい報告だった。
野球部所属だったマサルはと言うと本人が思っていたより肩、肘、手首の炎症は酷く疲労骨折手前だった様で痛みが感じていないのが不思議なくらいと医者から驚かれたくらいだった。
最低3か月は安静と医者からの通達されているので左腕を敢えて吊ってもらい動きの制御を自らかしていた。周囲からはそこまで酷い怪我だったのかと思われたが、マサルは早く治す為に腕を使わない様にしている事を話していた。
不便なのは利き腕が左なので授業のノートや食事の時に苦労はしていたが徐々に右手が使える様にはなっていた。
「お前の兄貴すげぇな、ベスト8まで朝比奈の学校押し上げた立役者だろう、同じ1年ってだけで誇りに思えるよ」
「う…うんそうだね」
同じクラスメイトにそう声をかけられて嬉しい反面、自分は何をしているんだろと言う考えがよぎる。そんな中、マモルが割って入ってきて
「マサルくんだって凄いんだからね、このまま投げ続けると完全に腕が駄目になるから今休んでるんだから」
「分かってるって早川の事になると柴谷は熱くなるよな。好きなのか」
同級生がからかうが、マモルは動じずに
「好きだよ、友達だもん当たり前じゃん」
と平気で言い返されるのでマサルも少し照れてしまうくらいだった。
『今頃もう試合始まってるんだろうな、学校なかったら応援行けるのに…』
マサルは物思いに耽りながらマモル達と談笑していた。
その頃イサム達はアップも終えて作戦会議に入っていた。残った8チームは朝比奈学園、乙舞中、久保中、水鳥中、林島中、加賀中、福富中、そして優勝候補の六芸館清秀だ。トーナメントを見る限り六芸館に当たるには決勝戦、2勝すれば対戦できるのだがまずは1回戦の乙舞中をくださないと先には進めない。少なくとも決勝大会に上がって来れるチームを軽くいなす事は出来ないだろう。
乙舞中の選手は大柄な選手が多い中、朝比奈は大小様々入り乱れている。サッカーは体格だけで決まるスポーツでは無いが当たり負けする懸念も含め作戦は立ててきたが、目の前にすると朝比奈側の選手も身体が強張っているのがわかった。
夜桜はそんな選手達を鼓舞するが緊張と恐怖を抑えれるはずもなく身体が固くなっているのが伝わってきていた。
『不味いな、コイツらガッチガチや…何とかせぇへんと…』
夜桜がそう考えている時に後ろでド派手にイサムがこけた。心配して全員がイサムに集まった。
「大丈夫か早川!」
「あはは、緊張しすぎて脚が絡んじゃいました」
そう言うと選手全員が笑い始め一気に緊張が解けていった。頭を掻きながら立ち上がるイサムは夜桜に軽くウィンクを送った。
『コイツ、一発で皆んなの緊張ほぐしよった。すまんな早川』
夜桜はイサムに感謝しつつ自分も気合いを入れ直した。
「ほないくで、オレらの闘いはこっからやで!」
掛け声に応える選手一同、ベスト8初戦に挑む体制は整った勝利を目指しただひた走るだけだった。




