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新人戦

登場人物


早川イサム(勇)

一卵性双生児の兄。弟より小柄で気弱な面もあるが努力家。父のサッカーに憧れる。


早川マサル(勝)

一卵性双生児の弟。明るくて素直な活発な少年。気弱な兄を支える優しい子。いつも兄と勘違いされている。


早川ソウスケ(宗佑)

双子の父親。サッカーJ2リーグのプロ選手。遠征中に不慮の事故で命を落とす。


早川ヨウコ(陽子)

双子の母親。フリーのカメラマン。取材の時に宗佑と出会い結婚。双子を出産している。今は専業主婦になっている


柴谷マモル(護)

朝比奈学園中等部1年。野球部で捕手、マサル親友。お調子者だが友達思いの優しい少年。


 夏休みも終わり新学期が始まる。課題に追われたマモルの目の下にはクマができていて少し眠そうにしていた。


「結局終わったの?」

 マサルの声かけにマモルは課題のテキストの塊を自慢気に見せてくるも

「読書感想文が出来てない…最悪」

 マサルもさすがに写させる訳も行かず苦笑いしていた。


 その日の課題提出で複数人出来なかった者は放課後残って課題を終わらせる様にと先生から告げられマモルは落ち込んでいた。

「最悪だ、新人戦近いのに居残りなんて…」


 本を読むことが少ないマモルにとって、読書感想文は初等部の時から苦手としていた。マサルとしても自分の投げ球を受けれるのは、マモルしかいないため手伝う以外の選択肢はなかった。


「キャプテンに言って来てボクも補習を手伝うよ…」

「ありがとう持つべきものは友だなあ」

「昔から苦手だもんね…感想文。それじゃあ休み時間に図書室行こうね」


マモルは嫌そうに頷いたがマサルの協力もあり、その日のうちには終わらせる事ができた。


「マサルくん本当にありがとうこれで明日から野球に専念出来るよ」

力強く感謝を告げるも


「気持ちは分かるけど授業の方も集中しようね…」

とマサルにツッコミを入れられていた。


 思いのほか感想文が早く終われたので、放課後の練習に途中参加で加わった。軽いアップのストレッチとジョギングを終えると投球練習を始める。マモルがマサルの投球フォームに違和感を感じて

「マサルくん投球フォーム変えた?」

「いや、変えて無いよ。何で?」

「右脚の踏み込みと左腕の振りのタイミングがいつもと違うなって思えて」

「気のせいじゃない?」

「…ならいいんだけど」


 マモルはそれでもフォームの違いが気になっていた。

『マサルくんはああ言ってるけど右脚の踏み出すタイミングが早いんだよ。速球の伸びは良いんだけど腕が引っ掛かる様な投げ方になってる様に感じる…』

 マモルの心配もよそにその日は何事もなく練習を終えて帰宅する。


 夕飯を終えたマサルは

「ちょっとランニングしてくるね」

 そう言うとジャージ姿でサッカーボールを抱えて家を飛び出した。


「サッカーボール持ってランニングって…まさかあいつ…」

 イサムの予想通り近くの公園で1人、サッカーボールでボールコントロールやドリブルの練習をやっていた。その様子だけを確認するとイサムは1人帰宅した。


父を亡くしマサルも思う所があるのだろう。イサムはそう思いベッドに横になってスマホの写真を開く

「父さん…」


イサムは父の写真を見ながら感情のコントロールができず、目から涙が溢れ出した。家族の前や、友人の前では気丈に振る舞っていたが、父とマサルの背中が合わさってイサムの涙へと変えていった。


これの出来事は中学野球の新人戦が始まる3週間前の話だった。

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