詳しく聞く。
施術後にお会計を済ませ、言われるままに待合席のソファーに案内され、詳しく話を聞いた。
開店準備期間でモデルさんを探す時間がないこと。できれば知っている人にお願いしたいこと。撮影はこの店とその周辺の場所で行うので、私の負担が少ないこと。新郎役は青山さんだということ。ドレスはできるだけ私の好みで選ばせてもらえること。などなど。撮影の日時に関しては、店の定休日ならば昼間でも夜間でもOK。他の日ならば夜間でお願いしたいということ。
かなり負担が少ないように組まれている。撮影の時間帯に関しても、私の場合は定休日に合わせられるので特に問題はない。
この優遇ぶりにかなり心が動いた。それにウェディングドレスを着たい気持ちは、今でもあるの。それに、コレは小説に使えそう。そんなワケで即OKしたいところだけど、返事は保留にして帰宅した。
やはり、夫に一応は相談したほうが良いと思ったので。その写真が私のまわりの人の目に入る可能性は低いから、黙っていればバレないだろうけど。
「お前、からかわれているんじゃないの?」
夜になって、帰宅した吾郎に話すと案の定、言われた。
「私もそう思ったんだけどね。」
「いいトシしてウェディングドレスなんて…。もう返事したのか?」
「保留してきたわよ。吾郎がダメって言うなら断るし。やってみたいんだけど、ダメ?」
「まあ、別にいいけど。写真がこの周辺で使われるわけじゃないみたいだし。ところで本当に大丈夫なのか?」
「ホント?いいの?」
「ああ。また結婚式やりたいなんて言われるよりマシだしな。まあ、変な勧誘には乗るなよ。」
「ありがと!楽しんでくるね。」
そうね。この機会に化粧品なんかを売りつけられる可能性も否めないわ。気をつけないとね。それでも、いぶかしがりながらも許可をくれた吾郎に感謝だわ。
そう。私は過去に「もう一度ウェディングドレスを着たいから結婚式をしたい!」と言って、挙式付きの海外旅行を予約しようとして、吾郎に「頼むからやめてくれ。やりたいならほかの男と挙げてこい」とまで言われたのよね。結婚式を挙げていないから、というならまだしも、結婚式をしたのに、また海外挙式をするために旅行というのは、男の側にしてみれば面倒なことらしい。




