新しいスタイリストさん。
西嶋さんとの再会から一か月半。家族の理解と協力の甲斐あって、思ったよりも早くアレルギーの症状が治まってきたので、久しぶりにまた美容院へ。メイクもまたできるようになったの。あとは、ネタさえ浮かんでこれば言うことないわね。
今日の担当は誰かしら?西嶋さんがいなくなったから、新しい固定スタイリストさんを見つけるために、指名なしで予約したの。
席に案内されてから、雑誌をパラパラとめくりながら待つこと数分。
「こんにちは。今日、担当させていただきます。青山です。」
聞きなれない声に顔を上げると、なかなかのイケメン君が鏡越しにお辞儀をしている。
「こんにちは。初めまして、でいいですよね?」
ルックスは合格ね。年齢は、西嶋さんと同じくらいか、少し上かしら?今日の出来しだいでは、この人をご指名にしてもいいわね。鏡越しにペコリと頭を下げる。もちろん、笑顔は三割増しでね。イケメンには自然に笑顔が出るってもんよ。オバサンだから。
「お話するのは初めてですよね。だいぶ良くなられましたね。」
「あ。じゃあ前回のときにもいらっしゃいましたか?」
「はい。実は。西嶋の後任でチーフになりました。よろしくお願いします。」
これはこれは。新しい店長さんだったのね。技術面も期待できるわね。
カウンセリングもカルテを確認しながら髪のコンディションと照らし合わせていく。今回も念のため、リタッチは刺激の少ない薬剤で。そしてメニューとしては今回はパーマはせずに、リタッチとカットに決定。
シャンプーの段階では、先日のケアリストの田中さんが担当。この人がスタイリストだったら今回、指名していたところだわ。
「だいぶキレイになりましたね。良かったです。」
田中さんもアレルギーのことを気にかけてくれていた。仕事とはいえ、こうして気にかけてもらえるってうれしい。
「おかげさまで。ずいぶん、家事も(いつもに増して)手抜きして、のんびりさせてもらったから。」
「そうでしたか。もうメイクも大丈夫なんですか?」
「なんとか復活しました。」
「それは良かった!折り入ってお願いしたいことがあるんですよ。」
「アレルギーのビフォーアフターの記録とか?」
「ワハハ!それもいいですね。平日はお時間の取りやすい曜日はありますか?」
「事前に言ってくだされば何曜日でも大丈夫ですけど。一体、どんなことを?」
田中さんが耳元に顔を近づけ、声を潜めて言った。
「ウェディングドレスを着ていただけませんか?」




