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ドラゴン・ドクター  作者: 西谷東
アルメニアへ
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ファティマへ

「ククルのにおいは、ここで途切れている」


ラピスがアズールとセノーテを下ろしたのは、大きな鳥の巣がある崖上の近く。


「この移動距離、ちょっと異常では?」


アズールはどう思います、とセノーテが隣を見ると


「にゃー、にゃー」


珍しく蝶に、夢中になっている。


「アズール! いけませんわ!!」


セノーテは慌てて、蝶からアズールを引き離す。


「俺は、また……」


我に返ったアズールは、しゅんと項垂れた。


「巣を見てきたが、これは神獣アウィス・ラーラのものじゃ」


おそらく餌としてククルは運ばれてきたのだろう、とラピス。


「だが、巣の中に人の気配はない。それにアウィス・ラーラも居ないようじゃ」



✳︎✳︎✳︎


「仕留めるの、手こずりましたね」


ため息をつくエベルに


「まあ、新米にしては上出来だろ」


タバコを咥えたネヘミヤは、後輩の背中を叩いた。


「グロロロロ」


相棒の飛竜の方は「油断するな」と嗜めるように鳴いた。


「お前は、厳しいな」


肩を竦めたエベル。


「なあ、あの白い部隊服ってアルヴム男爵家のだろ」


何か知っているか聞こう、と黒猫アズールが提案。


「そうですわね。ラピス、下までお願いしますわ」


黒猫アズールを抱え、セノーテはラピスの背に乗った。


「うむ」


ラピスは翼を広げ、アルヴム男爵家の神獣討伐部隊と接触する。


「隊長、すごい綺麗な竜ですね……」


エベルが見惚れていると


「馬鹿、ありゃ竜都の双剣の片割れだ」


頭を下げろ、とネヘミヤは言った。


「ええ!?」


「どうか、顔を上げてください」


ラピスの背中から降りた少女を見て


「ひょっとして、セノーテ殿下ですか」


ネヘミヤは竜都で行われた合同訓練の際、王族の観客席に座っていたセノーテを一度見たことがある。


「隊長、王族を目の前で見るのは初めてで……」


目を輝かせ興奮している後輩に「落ち着け」とネヘミヤは制した。


「すぐに旦那様に取り次ぎを……」


「あの、その前に……この辺りで王立アカデミーの生徒を見ませんでしたか?」


「それでしたら……」


ネヘミヤは、事情を話してククルの運ばれた病院へと案内した。


✳︎✳︎✳︎


竜奏医師(ドラゴン・ドクター)の居る竜舎で、ラピスを休ませる。

そして、セノーテとアズールは病院へと向かう。


「せ、狭いな……」


セノーテの鞄に入れられた黒猫アズールが、ちょっと顔を出す。


「仕方ありませんわ。病院の中だと目立ちます」


詳しい事情をしらない人たちに説明するには難しい。


「父上、どうしてですか!!」


女性の怒鳴り声。


「彼は、犯罪者だ」


冷ややかな男性の声。


その騒ぎを聞いて


「あの……」


セノーテは顔を出した。


「セノーテ殿下、どうしてこちらに」


驚いた顔のマティア。

アルヴム男爵は「ネヘミヤから、事情は聞いています」と頭を下げた。


「娘にも申し上げましたが、合わせることはできません」

彼は竜都の使者に引き渡す、と続ける。


「ですが、このままでは……」


「マティアさん、落ち着いて」


リディアは娘を落ち着かせると


「旦那様も頭が固すぎです」


「しかし……」


眉を寄せるアルヴム男爵。


「友達に会いたいということに、理由は必要ないでしょう」


「……くっ」


ただし見張りはつける、と言ってアルヴム男爵。


「ありがとうございます」


頭を下げるマティア。


鞄から顔を出した黒猫アズールは


「……尻に敷かれてるな」

「あら、かかあ天下も悪くありませんわ」

そう言ったセノーテに

「お前の結婚相手は苦労する」


ベッドに横になったまま、天井を眺めているククル。


「さっさ、寝ろ」

黒猫の肉球に頬を叩かれた。


「その声、アズール……それと」


心配そうなマティアとセノーテを見て「結局、追いつかれた」と溜息をついた。


「どうして、眠らない?」


マティアに聞かれ


「また……同じことをしそうだから」


ずっと起きていた方がましだ、とククル。


「イラマテクトリか?」


アズールの言葉にククルは小さく頷く。


「オレが熱を出した時、校長先生と話をしただろ」


存在が消されてしまうーーそれが、イラマテクトリを怯えさせた。


「……それが、怖い」


「貴様、やっぱり少し寝ろ」

疲れている、とアズール。


「えーと、人の話聞いてた?」


マティアとセノーテは顔を見合わせ

「ええ、聞いていましたわ」

「そのイラマテクトリというのが出て来たら、黙らせればいいのだろう」

物理的な解決。


「それって、ヒドすぎ……」

安心したのか、寝息が聞こえる。


「眠ったか」

安堵するマティア。


それから、入れ替わるように「彼女」は出て来た。

ククルの怪我の影響で、身体は上手く動かせない。


「一体なんのつもり」

ククル顔で、女の声。


違和感を感じながらも、マティアは「彼女」向き合う。


「君がコアトリクエ校長を……」


「何が悪いって言うの。わたしは二度も死にたくない……黒の楽譜が弾かれれば、わたしたちは存在出来なくなってしまう。だから、だから……」


それに手を貸そうとしたコアトリクエに手をかけた。


「なんなのよ、この感情は」

ククルの目からは、涙が溢れる。


「それは、悲しいってことですわ」

セノーテが言うと

「自分がやったことを、後悔しているってことだろ。貴様は、裁かれるべきだ」

アズールが続ける。


「……」


イラマテクトリは、押し黙る。

そして、逃げるようにククルの深層に引きこもる。


「なんだか、彼女……当分、出てこない気がするな」


マティアが言うと


「そうですわね。アズールが、厳しく行ったから」


セノーテが頷く。


「オレが悪いのか!?」


それから、アルヴム男爵の屋敷に竜都のグランから連絡があった。


廃村ファティマに竜奏医師(ドラゴン・ドクター)は集合。


ククルの体調が回復すると、向かうことになった。







































いつ読んでくださって、ありがとうございます。

不器用ながらも、終わりまで頑張ります。

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