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逃避
「コアトリクエ校長が、講堂で刺された」
グランの執務室に呼ばれた、セノーテとアズール。
その言葉に、戦慄する。
「そんな……校長先生の容態は」
「今は、病院の集中治療室に運ばれている」
エーテルが体から漏れているため治療が難航している、とグランは言った。
セノーテに抱えられている黒猫アズールは
「なぜ、一人で講堂に……」
「ロス殿の話では、手紙を受け取ったそうだ」
そして、講堂に落ちていた血の付いたナイフと
「これが、残されていた」
グランが机に置いたのは、羽飾り。
「アズール、これは……」
「ああ……」
ククルが身につけていたものだ、と二人は動揺する。
「な、何かの間違いですわよね?」
「あいつ、部屋には?」
(昨日から様子は変だった……)
グランは首を横に振ると
「今朝から、姿はない」
クロノスを持って去った可能性が高い、とグランは続ける。
「私も、彼が犯人だとは思っていない。だが、真実を確かめる必要はある」