砂嵐の中で
「若、そろそろポイントですね」
アルドルの言葉に頷き
「ああ、そろそろ着陸しよう」
「む、あの三角錐の建物は何じゃ?」
ラピスに聞かれ
「あれは、ピラミッドです」
昔の偉い人の墓です、とセトが説明。
「墓に入れられた、宝飾品目当てに盗掘も多い」
まあ、ルプスの餌になる奴がほとんどです、とセトが肩を竦める。
砂嵐の発生ポイントに着陸。
「姫さん、水分補給」
セトから水筒を渡され
「ありがとうございますわ」
セノーテは水を口に含む。
「ククル、アルドルとラピスに青を弾いてくれ」
「わかった」
バイオリン・クロノスの音で、アルドルとラピスの体力を回復。
「ふむ、なかなかじゃ」
「若の気遣いに……感動です」
成長されましたね、と言うアルドル。
「どうですか? ラピス様!! 惚れそうですか!?」
視線向けたセトに
「自分で言う辺りが、ダメ男じゃのう」
ラピスが鼻で笑う。
✳︎✳︎✳︎
「風が……」
変わったような、ククル。
黄砂が巻き上がる。
「若、これは……」
「ああ、砂嵐の兆候だ。俺たち、ツイてるぜ」
二人とも目をつぶって伏せろ、とセトが指示。
「きゃあ」
「つーか、開けてられないって」
「妾たちの下へ入れ、少しはマシになる」
風で黄砂が巻き上げられ、太陽の光も遮られる。
(これで本当に、ゲゼル神殿に辿りつけるのか……?)
砂嵐の中で耐えながら、ククルは思った。