寄せ集めのケツァルコアトル族
「え、そんなこと言った?」
お腹減った、とステラが皿によそったリゾットを受け取るククル。
「君、本当に大丈夫なのか?」
「心配したんですよぉ」
マティアとステラが言う。
(一時的な記憶の混乱だったのか……?)
別人格が、表に出てきていたような様子だったが。
「怪我もたいしたことなかったし、マティアさんの判断が良かったんだ」
助けてくれてありがとう、とお礼を言うククルに
「急に、どうしたんだ?」
「お礼は大切だろ」
ちょっとは成長した証だよ、とククル。
「アズールを助けるには、黒の楽譜が必要になる」
竜王フナブ・クーに謁見して、心当たりの場所を教えてもらう必要がある。
「まだまだ力不足だろうけど、オレは一人でも探しに行く」
「ククル君……」
年下の少年が急に大人びたように、ステラは感じた。
「……一つ、聞きたいことがある」
真剣な表情のマティアを見て
「オレの体のこと?」
ククルは溜息をついた。
「まあ、見られたら……隠す必要もないか」
「すまない。その、深く干渉するつもりはなかったんだが……」
「どうせ、外傷を確認しようとした医者がなげたんだろ。オレとウィツィを作った奴はともかく、他の医者はこれを見たら引くレベルだし」
オレとウィツィには自分のモノが一つもないけど、これはもう自分のものだ。
「だから、奪ったやつらに悪いとは思わないよ。まあ多少は、寄せ集められたパーツの記憶に流されることもあるけど……」
ウィツィの方は安定しているようだが、自分の方は気を失うと流されることが多い。
「どうやって戻ったのか、よく思いだせない」
「ミルカちゃんが、話してる最中に眠っちゃったって言ってましたからぁ」
それが刺激なったのかも、とステラが言った。
「リゾットの香りが、空腹にしみる」
リゾットをスプーンで口に運ぶククルの隣で
「それだけ、テスカポリトカには君たちの存在が重要ということか?」
マティアが尋ねる。
「オレたちは、テスカポリトカが新たな世界を創造するために必要なケツァルコアトル族のパーツに繋ぎ合わせて形にされた……それくらいしか聞いてない」
「……そうか」
休息をとったことで、体力もだいぶ回復した。
「一度、竜都へ戻ろう」