トゥーラの意思
「……ここは」
クロスフォード子爵邸の客室で、マティアは目を覚ました。
「マティア様、よかったですぅ」
横には、涙を浮かべているステラ。
「あれから、そうだ……ククルは、アズール殿下はどうなった!?」
「落ち着いて下さい」
ウェルテクスの報告では、黒い竜となったアズールはあのまま南へと向った。
父から竜王騎士団の方へ連絡を入れている、とステラが説明。
「ククル君も隣の部屋で……」
「一体、なんなんですかあれは」
荒々しい声。
「さわがしいな……」
よろめいたマティアを、ステラが支える。
「何かあったんでしょうか」
ククルの居る部屋から「汚らわしい」と出て行く医者。
「お父様、一体何が?」
ステラが訪ねると
「彼の体のことだ。さすがに、私も驚いている」
クロスフォード子爵は、額に手をあてた。
目を覚まさないため、外傷がないか服を脱がせて確認した。
ベッドに横たわるククルを見て
「これは……」
マティアは眉を寄せ
「っ……」
ステラは言葉を失う。
身体のあちこちに、縫い目の後がある。
まるで、他人の一部を繋ぎ合わせて作られた身体。
(私は、彼のことをあまり知らない)
ケツァルコアトル族の竜奏医師
テスカポリトカを殺すために、黒の楽譜を探している。
<パーツのスペックが違う>
マティアは、ウィツィの言葉を思い出す。
(だったら、彼もククルと同じように……)
マティアは首を横に振ると
「ククルが何者でも、これからも変わらない」
「そうですよね、ククル君はククル君ですぅ」
頷くステラ。
「……トゥーラ、第一等市民アルブム公爵家の血縁を確認」
ククルは薄っすらと瞳を開く。
「データは全て、破損しました。コアトリクエ市長に再登録の要請をお願いします」
普段の生意気な口調とは違い、機械的な抑揚のない言葉が発せられる。
「おい、からかってるのか。うちの父は男爵で……」
「コアトリクエ市長への再登録を要請します」
さっきから、壊れた機械のように同じ言葉しか口にしない。
「マティア様、ククル君……どうなってしまったんでしょうか?」
不安そうな表情のステラに
「分からない。だが、コアトリクエ校長ならば何か知っているかも知れん」
急いで竜都に戻るとマティアは告げるが、ふらついている。
「マティア様、まだ無茶をしてはいけませんよぉ」
隣の部屋でもう少し休んでください、とステラはマティアの体を支えた。




