帰還
目覚めると、白い天井。
「……アズール、大丈夫?」
同じ顔の姉セノーテが、不安そうに覗き込む。
「俺は……」
身体中が痛い。
「竜装したんだ、無理はしないようにな」
クシャクシャと、兄のグランがアズールの頭を撫でた。
この感覚は記憶にある。昔、セノーテと喧嘩して竜の姿になったことがあった。
その時の暴走は、竜奏医師が百人がかりで止めたと聞いたことがある。
人間の姿に戻った後は、ベッドの上。身体中が痛くて、三日は起きられなかった。
その時も、こうしてセノーテが心配し、兄に頭を撫でられた。
「お前は竜装を嫌っていると思ったが……」
使ったのは友達の影響かな、とグランが口元を綻ばせる。
「仲間を助けたいという熱い気持ちが、アズールの情熱を駆り立てたんだ」
青春だね、と茶化している兄の言葉を
「まあ、そうでしたの」
鵜呑みにしているセノーテ。
「兄上、やめてください」
ベッドの上で顔を顰めるアズールに
「照れるなよ。だが、お前は不安定で暴走させたのも事実だ。今は、無闇に使うな」
グランが警告。
「申し訳ありません」
「だが、そ無謀に救われた少年がいるのも事実」
「先ほど、レイスさんがお見舞いに来てましたわ」
そう言って、セノーテが空の菓子箱を見せる。
「……なんで、空箱?」
セノーテはため息をつくと
「その次に来たククルが、食べていきましたわ」
「……あの、馬鹿」
あいつのバイオリンの音だけは、耳に残っている。
(竜装をうまく使えるようにするには、もしかして……)
ケツァルコアトル族である、ククルの協力が必要になるかもしれない。




