90話:現状認識
「やっと見つけた」
こちらに気づいたレッサーベアが四足歩行で駆けてくる。倒さないように気をつけないと。
「俺が止めたら言うから、それまでは攻撃するなよ」
剣を握り直してレッサーベアを待ち構える。
接近してきたレッサーベアは立ち上がり、二足歩行の形になり攻撃を仕掛けてきた。
振り下ろされる爪に下から斬り上げた剣をぶつける。
ガーンッ
思ったよりも私の力が強く、レッサーベアは腕を大きく弾き返され、体勢を崩した。
「いいぞ」
これくらいの強さで弾いていけば問題ないだろう。両腕を振り回して攻撃してくるが、どんどん弾き返す。
その合間にヴェロニカが背後に回り込み、腕が横に大きく弾かれた所で止まった。ノクスが魔法を使ったか。
そのタイミングでヴェロニカの攻撃がレッサーベアに繰り出される。
いつもは後ろ首を狙っているが、レッサーベアの大きさから後ろ首は当てにくかったのか、ヴェロニカは脇腹へ右拳を放つ。
まだレッサーベアは動き出さないため、そのままヴェロニカは何発も殴っているが、ヴェロニカの顔が歪んでいる。
「離れて!」
ノクスの声に反応して、ヴェロニカはレッサーベアから離れる。
すぐにレッサーベアは動き出し、私に腕を振り下ろす。何度やってもやられることはない。少し力を入れた事で身体全体が後ろへ倒れそうになった。
「もうやめるか? もう一度攻撃するか?」
「もう一度やらせて!」
ヴェロニカに確認するともう一度やりたいということなので、レッサーベアの攻撃を弾き返し続ける。
ノクスの魔法が使えるようになるまでヴェロニカは動かないようだったが、レッサーベアはもう爪で攻撃しても効かないと思ったのか、急に噛みついてきた。
これも弾き返さないとな。剣の平をレッサーベアの鼻に当てるように振り抜く。
ちょっと強く振りすぎたのか、レッサーベアは倒れないようにフラフラしながら後ろへと数歩歩いていく。
「ヴェロニカ!」
ノクスが声をかけたので、ヴェロニカが再びレッサーベアへ接近していく。
そしてレッサーベアの足が止まり、後ろへと倒れていく。また良いタイミングだな。
倒れたレッサーベアを目がけて、ヴェロニカは飛びつき右拳をレッサーベアの顔面へ。
ドスッ!
顔面への重い一発の後、顔面と首へ怒涛のラッシュ。拳を引く度に血が飛び散る。
「ヴェロニカッ!」
再び響くノクスの声。それに反応して離れるヴェロニカ。
離れてすぐにレッサーベアは立ち上がる。顔と首から血は出ているが、まだまだ死にそうにはない。
「さて、今日はここまでだ」
近づいていき、振り下ろされた腕を避けて、剣を振り下ろす。
斬り裂かれた腕から大量の血が吹き出し、続けざまに胴体を一閃。更に後ろに回り込み、背中を大きく斬り裂く。
前へと倒れ、手をついた所で首を斬り落とし、レッサーベアが消えていった。
『All is Moneyの効果が発動しました。
経験値と素材がお金に変換されました。8,400Gを獲得しました』
「さて、帰りながら遭遇したモンスターは2人で討伐してもらおうか」
レッサーベア以外なら問題ない2人だ。
私は手を出さずに討伐していき、夕方に街へ戻ってきた。
「セリアさん、ディックスです。今時間よいでしょうか?」
「どうぞ、お入りなさい」
夕食後に院長室にいるセリアさんの元を訪れる。
1人ではなく、ヴェロニカとノクスも一緒だ。
「ヴェロニカとノクスも一緒ですね。
では、今日の活動の報告を聞きましょう」
「2人から説明してもらいます」
2人と順番に目線を合わせると、ノクスが話し出した。
「前半は複数体のレッサーウルフを探しながら、ヴェロニカと2人で倒していきました。
途中で3体のレッサーウルフを見つけて、2人で倒しました。
そこで終わりと思っていましたが、ディックスからレッサーベアと戦いに行くと言われて森の奥に向かいました。
レッサーベアを見つけたらディックスが先頭に立ってレッサーベアの攻撃を防いで、その間にヴェロニカが攻撃、僕がレッサーベアの動きを止めるという役割で戦いました。
ただ、ヴェロニカの攻撃はレッサーベアの脇腹にはほぼノーダメージ、首と顔面への攻撃は多少は血が出ましたが、倒せるほどの出血にはなりませんでした。
その後はディックスが倒してくれて、街に戻りながら2人で出会うモンスターを倒してきました。以上です」
「ヴェロニカからは何かありますか?」
「レッサーベアへの攻撃は、籠手についている突起が脇腹には刺さらなくて、顔と首は少し刺さったけど浅くて。
全然2人じゃ倒せそうになかったです」
「ノクスも同じ意見ですか?」
「はい。縛れる時間が今から倍くらいになっても、ヴェロニカの攻撃力を上げないと消耗戦になって負けると思います。
僕も攻撃魔法が使えれば……」
「ディックスから訂正や補足はありますか?」
「そうですね。ウォードさんのパーティーの時と同じです。
レッサーベアにダメージを与えられる攻撃力が必要だと思います。
少なくともレッサーウルフを2発で倒せるくらいの威力が欲しいです」
「攻撃力ですか。2人はどうですか?
攻撃力を上げる方法について、考えはありますか?」
「僕はとにかく使える魔法を増やすことです。
あとはレベル上げでしょうか」
「私はディックスから言われた魔法を使えるようになることかな。
あとは私もレベルを上げて、パンチ力を上げて、深くまで刺さるようにしたい」
「ディックスの考えは?」
「概ね賛成です。レベル上げについては私も協力しますが、ヴェロニカは筋力が低いので結構上げないと厳しい気がします。
魔術師であり、魔術師なのに敏捷が高いですから、筋力は上がりにくいですね」
「レッサーベアに挑戦するタイミングについての考えはありますか?」
「先ほども言いましたが、レッサーウルフを2発で倒せるようになることでしょうか。
パンチでもいいですし、魔法でもいいですし」
「そうね、そうしましょうか。2人とも分かりましたね。
あと、2人はまだ祝福を与えられてから4か月も経ってません。
それでレッサーウルフを倒せているのは、かなり早い方ですよ。
焦らずにしっかりと強くなって下さい」
「分かったわ、院長先生」
「分かりました、頑張ります」
「ギルドの受付さんにも言われると思うけど、腐らずに努力を続けていけば大丈夫だから。
あと、レッサーベアを倒すことだけに気を取られずに、色々な魔法を使えるようになって欲しい」
新しい魔法を作ってもいいわけだし、2人だけの強みを見つけて欲しいな。
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