58話:護衛依頼③
レッサーベアを倒した後、街に戻っていく。
途中で出てきたモンスターをどうするか聞いたが、レッサーベアへの再戦のためにももっと強くなる必要がある、ということを解体しながら3人で話していたようで、しっかりと連携して倒していった。
メルティさんもいつもの石つぶてで攻撃をしていたので、冷静さは取り戻したようだ。
街に戻ってきたのは、少し陽が低くなり始めた頃だった。
いつもよりかなり早い時間だったが、3人は街に入ると道の脇に座り込んでしまった。
帰りの道中での戦いは問題無かったが、気を張っていたのだろう。
少し休憩をしてからギルドに向かい、レッサーベアの牙と爪を納品していく。
「すみません、納品はしますがランクアップはしないで下さい」
ウォードさんが受付さんに納品をしながら伝えていた。
受付さんは不思議そうな顔をしていたが、疲れ切った様子の3人を見て何かを理解したのか、何も聞かずに淡々と処理を続けて、支払いを済ませた。
「セリアさん、ただいま戻りました。
お話があるので院長室に来てもらえますか?」
「無事に戻ってきましたね。
何があったのか詳しく聞きましょう」
孤児院に戻って、3人は一旦部屋に着替えに行った。
その間に私はセリアさんに声をかけて、2人で院長室に向かった。
「失礼します」
しばらくして3人が院長室に入ってきた。
「さて。何があったのか聞きましょうか。
誰が話します?」
「…じゃあ俺が話します」
他2人の視線もあって、ウォードさんが話し始めた。
レッサーベアに出会って、いつも通りメルティさんの魔法で先制攻撃をして、ウォードさんが防御しながら、エマさんがヒットアンドアウェイで攻撃して。
でも、メルティさんの魔法が全然効かず、エマさんの攻撃も大きなダメージにはならず。
ウォードさんもなんとか耐えていた状況で、ウォードさんが崩された所で私が突然現れて、投げナイフでレッサーベアに攻撃をしたことで追撃をされずに済んだ。
そこからなんとか立て直そうとしたが、攻撃力不足でジリ貧状態の所で、私から倒すのか逃げるのかと問いかけられて逃げることを選択した。
そうしたら私が参戦して、レッサーベアを無力化してしまった。
そこから3人それぞれが全力で攻撃して倒した。
「そうですか。まず3人とも無事で何よりです。
逃げる選択をしたのも間違いではないですので、そこを悔いたりしないように。
ディックス、ありがとうございました。
お願いしておいて良かったです」
「ディックスがいたのは偶然じゃなくて、セリア先生が頼んだんですか。
しかし、一体どういうことでしょうか?」
「あなた達のパーティーがレッサーベアと戦うにはレベルも経験も足りないと思っていました。
なので、ディックスに何かあった時にはサポートに入るようにお願いしていたのです」
「誰かに頼むのはまぁ理解できますが、なんでディックスなのでしょうか?」
セリアさんは一旦こちらを見た。
話して問題ない?という確認なのだろう。
問題無いですよ、という意味を込めて頷いた。
「ディックスはレッサーベアを毎日倒しているからですよ。
祝福を受けてから早すぎるので、まだ冒険者ギルドにも隠している状態ですけどね。
それはディックスが実際に戦っている所を見た3人なら理解できるのではないですか?」
「確かにすごかった。
レッサーベアに接近する速さ、攻撃の威力、投げナイフからの一連の流れのスムーズさ。
呆気にとられてしまいました」
「そういうことよ。
今年いっぱいは隠しておくつもりだから、それまではこのメンバーとスワンさん以外には絶対に話さないでね。
じゃあ状況は分かったから、ここからは次に向けた反省点と課題を3人にはそれぞれ教えてもらおうかしら」
そこから3人は順番に話していく。
ウォードさんは受け流し技術の向上、エマさんは深く踏み込むことを恐れないこととそれによる攻撃を受けるリスクを減らすための回避技術の向上、メルティさんは攻撃力の高い魔法を使えるようになること。
私が感じたことと違いは無いな。
「ディックス、3人の考えを聞いて何かあなたから意見はありますか?」
「いいえ、それぞれその通りだと思います。
あとは、メルティさんの新しい魔法が使えるようになるまでは、レッサーベアへの挑戦は避けた方が良いと思います」
「3人の意見はどうですか?」
「同意見です。
ちょっと強くなった程度では倒せたとしても危険性は高いので、レベルアップと同時にそれぞれの技術の向上、魔法の習得ができてから、セリア先生に相談してから挑むようにします」
「ええ、それがいいでしょうね。
まだまだあなた達には時間があります。
焦らずにしっかりと努力を続けて下さいね」
セリアさんの言葉をもって、この報告会は終わりとなった。
「ディックス、ちょっといいかしら?」
ウォードさん達の後に続いて院長室を出ようとした所で、セリアさんが呼び止めた。
「何でしょうか?」
「本当にありがとうね。
何か褒美というか報酬を用意しないといけないわ。
何か希望はあるかしら?」
「そんな気にしないでいいです」
「ダメよ。あなたもチタン達に依頼をした際には報酬を渡しているでしょ。
何か考えて下さい」
「じゃあ今日から毎日渡している肉の量を増やしますからちゃんと受け取って下さい」
「え?それじゃあ報酬にならないでしょう。
報酬ですよ、報酬」
「じゃあその増えた肉を多めに私の食事に使って下さい。
お腹が苦しくなるくらいでお願いします。
それでは失礼します」
「ちょっとディックス!」
セリアさんを困らせたいわけじゃないけど、ちゃんと受け取ってもらうために今回の依頼を上手く使わせてもらいますね。
夕食後に宣言通り、レッサーベアとレッサーウルフの肉を3つずつ用意した。
受け取ったスワンさんは苦笑いしていたよ。
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