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玉砕大尉の異世界英雄伝  作者: ペコちゃん
権力と統合
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プロセリア

プロセリア帝国首都ベール


石造りの道と建物は500年の歴史を感じさせる荘厳なものであるが、閑散としており人の行き来は疎らである。


一歩路地に入れば木で出来た小屋が立ち並び、周辺から集まった労働者が寝泊まりしている。


以前であれば、子供であっても靴磨きや小間使いなど、選ばなければ何らかの働き口があったものだが、ここ数ヶ月は生きるための最低限の仕事もない。


棄民の労働者であるバルは、自身の痩せ細った腕を見る。もう、働く体力すらない。このまま朽ちて弟達と同じ運命を辿るのだろうか?


弟達と言っても血が繋がっている訳ではない。子供一人では生きていけないので、バルが作り上げていたコミュニティだ。助け合って何とか生きてきたのだ。


だが、不況が全てをダメにした。みんな痩せ細り、流行りの病で死んだ。


このまま、動かなくても死を待つだけだ。寝床からなんとか抜け出し、物乞いでもした方が生き残れる可能性は高い…そう考えて大通りへ進み出た。


ドン!


鈍い音とともに、吹き飛ばされた。何かと思い自分がいたところを見る。大きな馬車だ。ドアに金色の翼のあるライオンが書かれていた。


ついてない…自分は馬車に轢かれたのだ。貴族の馬車に轢かれたとしても、轢かれた方が悪いのだ。今ので何処かにヒビがいったのだろう動くと激しい痛みが襲う。


ただ、過ぎ去るはずの馬車が、不思議なことに止まってドアが開いたのだ。なんだろう?文句を言われるのだろうか?殺されるのか?


体が震える…貴族が邪魔な棄民を殺すなんてよくある話だ。意識をギリギリのところで繋ぎ止めて、謝罪しようと顔を向ける。


「将軍閣下!危険ですお戻りを!」


「よい…」


そこには、美しい女神様がいた。暗い銀髪に、青の混じったグレーの瞳…白磁の肌…身につけている服もお目にかかったことのないような純白に金糸をあしらった素晴らしいものだ。


あまりの美しさに目を見開く…どこかのお姫様だろうか?自分の身の危険を忘れてそんなことを考えてしまうほどだ。


自分のことに考えを戻す。もともと体力がなかったのだ…そこに骨折とくれば…もう死ぬしかない。最後の最後に綺麗なものが見れた…


「…ありがとう…ごめんなさい。」


口から出たのは感謝と謝罪だった。普段だったらありえない…プロセリア人は誤りを認めると際限なく謝罪を求める気質で、謝罪する文化がない。


ただ、相手が貴族なら謝罪するしかない。もう死ぬのだから必要なかったか?苦しまずに死ぬことができることへの感謝だろうか?


「…なぜ、感謝する?」


女神様がそう問いかけたが、こちらに答える気力はもうなかった。そのまま意識を失う。


ーーーー


目を覚ますと白い天井が目の前にあった。布団という存在は知っていたが、その中で目が覚めたのは初めてだ。いや、あったのかも知れないが覚えていない。


「目覚めたか?…今、食事を待ってくる。」


執事のような格好だが、上等な服を着た女性?が声をかけてきて、こちらの返答も待たずに部屋から出て行った。


すぐに戻ってきたが、その手に持っいた食事に釘付けになる。


「…身体が弱っているようなので、粥とスープを持ってきた。慌てずゆっくり食べなさい。」


目の前に置かれた食事を見るが手はつけない。食べていいってことだろうか?


「…食べていいの?」


「…栄養失調なので食べなければダメだ。」


もう一度、確認してから食べ始める。暖かい食事などいつ振りだろう。食器など使ったことも数える程だ。スプーンを使うが、あまりうまく使うことができない。


ゴホゴホ…急いで食べたせいで、咽せてしまう。


「ゆっくり噛んで食べなさい。足らなければおかわりもある。焦らなくていい。」


それを聞いて、食べる速度がますます早くなった。結局5回もおかわりして限界まで食べてしまった。食べ終わると急に不安になった。こんなに食べて大丈夫だろうか?お金なんてない。


「…何か仕事があればやります…何をすればいいですか?」


そう言うと…女性は不思議そうな顔をした。


「…怪我人なのだから安静にしていなさい。我々の主人であるラース様から、貴方が元気になるまで面倒を見るように指示されている。」


全く意味が分からない。貴族が棄民の一人を轢いたところで、何にもお咎めはない。それどころか、通行を阻害した罪で殺されても文句は言えない。平民だって棄民に酷い仕打ちをするくらいなのだ。


それなのに、ちょっと当たっただけの貴族が元気になるまで面倒を見てくれる。こんなことあるはずがない。あったら棄民はみんな喜んで馬車に轢かれるだろう。


「元気になったら…どうなるんですか?」


「それは分からん。ラース様がお決めになりことだ。ただ、お優しい方ですから今より酷くなることはない。安心しなさい。今は、そんなこと気にせず休みなさい。」


そう言うと女性は部屋から出ていく。一人残された僕は、落ち着かない広い部屋で布団に包まり、休むことにする…そういえば、意識を失う前に見た女神様がラース様かな?綺麗な人だった…もう一度…会いたいな。そんなことを考えているうちに意識が遠のいていった。

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