内戦⑦
準備していた…暗殺用の魔法を展開する。数ヶ月前の御前会議の時に掛けていたものだ。いくら、魔法抵抗力が高い王族でも、連日の攻撃で精神がすり減っているはずだ。
夜襲のこのタイミングで発動すれば、成功する確率も高いだろう。あとは、本当に死んだか確認するだけだ…大砲の砲撃と同時に通信魔法で夜襲部隊に指示を出し、中心部の司令部庁舎を占領させている。
「…大砲で領民に被害が出るのではないか?もっと…穏便な方法はないのか?」
さっきまでの堂々とした態度から一転して、大砲で攻撃される領都中心部を見て不安そうだ。こう見ていると年相応の少女に見えなくもない。
「…狙っているのは反乱軍主力のいる場所です。実働部隊から相手の目を逸らせるのが目的ですから…もう、そろそろ終わらせます。見た目は派手ですが、それほどの被害は出ていません。」
「そうか…なるべく領民に被害を出さないでやってくれ。領民には何の罪もないのだから…。」
この姿を見る限り、本当に領民のことを心配しているらしい。
「…もちろんそうするつもりです。すでに占領後の領民の食糧を準備しています。」
「…本当に余裕なのだな。それでどうなっている?」
さて、どう伝えるものか?すでに父親が亡くなっていることを伝えるべきか?
「グリフォンの空撃をいつも通りの夜襲と考えたようですから、大砲の攻撃に上手く動揺してくれました。砲撃に乗じて浸透作戦で敵の重要拠点を占領できましたので、もう長くは持たないでしょう。」
通信魔法では、こちらの総攻撃と司令部の機能不全で混乱の極みにある反乱軍の状況が入ってきている。
「…そうか、父も南部派閥貴族も軍を起こそうとしたのは事実だ…殺されても仕方ないが…領民の保護は本当によろしく頼む。そうすれば…死んだ父も浮かばれよう。」
瞳に涙を浮かべ、マーチ殿下がそんなことを言ってくる。
「…気づいておいででしたか。」
「…やはりか、貴殿が殺すつもりなら…こんな混戦になって逃げられるようなマネはしないだろう。確実に殺せる手管を用意していたのだろう?」
「…その通りです。すでに手を下しました。後は、部下が確認するのを待っている状況です。」
最後まで誤魔化すつもりだったが、それは無駄だとわかり、敢えて事務的に伝える。殺した相手が同情しても逆効果だろう。
「そうか…覚悟はできていたのだが…な。」
そう言うとマーチ殿下の瞳に溜まった涙がこぼれた。それを見たくなくて目を逸らす。
「ふっ…先の戦争と今回の内乱で数万人殺した男が、女の涙から目を逸らすのだな。私を同行させる事といい…貴殿もよく分からない男だ。」
なんと答えればいいのか分からず、言い淀んでいると通信が入った。ブルーム殿下の死亡を確認…オルタラント公ウェルズは行方知れずとなり、反乱軍の代表が降伏を求めているとのことだ。
「反乱軍が降伏しました。まだ、抵抗している拠点もありますが…明朝までには終わるでしょう。」
「そうか…ここは冷える。部屋に案内してくれ。」
そう言ったマーチ殿下を部屋に案内し、その日の仕事を終えたのだった。
翌日、正式に降伏を受け入れ、反乱軍の武装解除を確認した。反乱に加担した主要な貴族を拘束し、一週間後に王都への帰路についた。
この内乱により、王家はベルモント王家のみとなり、反乱貴族から没収された領地は王政府直轄領となった。王政府の予算は倍増し、中央集権化の流れを作るとともに、マーシアに対する対決姿勢をより鮮明にしていくことになる。
また、反乱軍に協力したとして三大商会は取り潰され、その代表は拘束された。それに並行して、不均衡な規制や通行税が排除され、起業や商売の自由が保証された。その中で、オースティンの経済は空前の発展を遂げることになる。




