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神のいない世界  作者: ウニ
裏 表
42/64

持ち主

 









 翌日斑目に指定された店に行くと、まだ斑目は来ておらず、悠は奥にある席に腰を下ろした。

 飲み物を注文し、しばらく携帯をいじりながら待っていると、目の前に人影が現れる。

「やあ、まった?」

「そうでもない」

 人影──斑目は椅子に座ると店員を呼び飲み物を注文する。

 そうして、カバンからファイルを取り出すと、そこからふたつの資料を悠に差し出した。

「これ、この間言ってた指揮体の持ち主について特定できたんだよね」

「随分早く分かったんだな」

 悠は資料を受け取り、パラパラとページをめくると目当ての場所で手を止める。

(黒田 征(くろだ せい)…戦車の包魂、か)

 かつての所有者のデータを見ていくと死亡原因が不明になっている。

 もうひとつの方も確認するが、そちらも原因不明となっていて悠は何やら不穏なものを感じた。

「…これ、お前も内容確認したんだよな」

「もちろん。悠くんも察しの通り、この2人の死亡原因、なーんか怪しいよねぇ」

「あとは、鳥型の包魂機の所有者だが…」

花咲 翠(はなさき みどり)ちゃんだね。この子とは俺も1度だけ話したことがあってね。…この子が死亡した際の任務も知ってるんだよね」

「なら分かるだろ。こいつの任務予定地、なんでこんな所…」

  鳥型の包魂機の所有者である花咲 翠の最後の任務は機械の墓場、別名──血の牢獄(ブラッド・プリズン)

 それは北方の中心部のとある場所。調律師の間では禁忌の大地(アンタッチャブル)と呼ばれる極寒の地にある。

 血の牢獄はかつての戦闘で破壊された指揮体や機械魔獣、そして包魂機が遺棄されている。

 そして破棄された破壊達の怨念に引き寄せられたのか、超大型の指揮体がその場を占領し、その土地に住む人々を虐殺した。

 国は北方へ何度か調律師を送り込み、指揮体の破壊を試みたが、その指揮体の元へ送り込まれた調律師が戻ることは一度も無かった。

 指揮体に占領された北方は人の住めない大地となり、今も機械の支配下に置かれている。

 そこまで記憶から取りだし、国が彼女へ告げた任務について考える。

 そうして、出てきた答えは一つだけだった。

「まるでそこで死ね、とでも言ってるような任務だな…」

「まるで、じゃない。事実、そこで彼女に死んで欲しかったんだろうね」

「…なんのために」

「そこまでは知らないよ。けど、国は目的のためならどんな残虐な行為でも行う。任務を言い渡された時、彼女の顔は青ざめてた。その彼女の姿を見て、ぶちギレちゃったんだよねぇ。俺もそれまでは国の言うことをなんでも聞くいい子ちゃんだったけど、さすがに不信感を抱いたよ」

 斑目は手元のティーカップをスプーンでくるくるとかき混ぜると、悠の反応を伺うように顔を覗き込む。

 悠は深く息を吐くと、カップを手に取り、口をつける。行儀悪く音を立てながら中の液体を喉に流し込み、まるで苦虫を噛み潰したような顔をする。

「相変わらず、腐ってるな…」

「花咲ちゃんの任務について、というか目的については引き続き個人的に調べるつもり。もちろん悠くんのお父さんのことについても調べるから安心して待っててくれていいんだぜ」

 大舟に乗ったつもりでいろと言われるが、悠はまるで泥船に乗った気分になる。

 最悪、斑目のことは切り捨てようと決意し、残りわずかとなったカップの中身を飲み干した、



 *



 夜になると、駅の近くにも関わらず人の気配が消える。

 今夜の狩りは縄張りを1周するということで荒崎と話していた。

 2人で行動するのは非効率なため、別々に別れ反対周りに探索する予定だ。

 悠が待ち合わせ場所である駅前の時計塔の前に立っていると、遠くに荒崎の姿が現れる。

 荒崎は悠の姿に気づくと、駆け足で悠の元までやってくると、傍らにいるj9が駅周辺を警戒しながら瞳を爛々と輝かせ、獲物となる機械魔獣を探していた。

「すいません!お待たせしました!」

「そんなに待ってないからいい。…さっさと始めるぞ」

「はい!」



 *



 荒崎と別れると、悠は反時計回りに縄張りを探索する。

 機械魔獣は何体か現れるものの、指揮体の痕跡がなかなか見つかない。

 分かったことといえば、現れる機械魔獣の形態が蟲型に偏っているというとだけだ。

 機械魔獣が蟲型ということは、その親である指揮体も恐らく蟲型だろう。

 蟲型の指揮体は隠れるのが上手く、前回戦ったステルス能力を持つ指揮体とはまた違う厄介さを持つ。

 悠は機械魔獣を破壊しながら辺りに注意を払うが、指揮体の存在どころか痕跡すらまだ見つからない。

 また空振りかと舌打ちをひとつ零したその時、悠の視界に何か光るものが入る。

 悠は警戒しながらその方向に近づくと、そこには細く透明な糸が複数本落ちていた。

 それの正体を確かめると、まるで蜘蛛の糸のような粘性があり、ワイヤーとほぼ同じ硬度の物質で作られているようだった。

『推測──この当たりを根城にしている指揮体の可能性』

「この糸を使うってことは、蜘蛛の指揮体か?」

『恐らく』

「…一旦戻った方がいいか」

 悠は糸をカバンとは別の袋に入れると、そのままカバンに詰め込み周囲を見回す。

 しばらく辺りの気配をさぐったが指揮体の気配は感じられなかった。

 駆け足で荒崎との合流地点に向かと、荒崎はまだ来ていないようで、しばらくq2とその場で待機することになった。

 しばらく待つと、荒崎が息を切らしながらj9と共に合流地点へ現れる。

「すいません!遅くなりました!」

「大丈夫だったか?…来もらって早々悪いが、さっさと引き上げるぞ」

「はい!俺も提案しようと思ってたので、早く戻りましょう!」

 やけに物分りのいい荒崎と合流したあと、周囲を警戒しながら急ぎ足で家へと戻った。

 そうして家のリビングで情報交換を行うと、荒崎の方にも指揮体の痕跡があったらしく、悠が採取した糸と同じものをカバンから取り出す。

「これ、蜘蛛の糸ですよね…。蟲型の機械魔獣も増えてきましたし早めに始末しますか?」

「…そうだな。とりあえず神樹に見せて意見を貰ってからになるから、2~3日後ぐらいには取り掛かりたい」

「わかりました!あ、じゃあ明日は…」

「俺一人で神樹の所に行ってくる」

 悠は神樹に相談したいことがあったため、一人で行くことを荒崎に告げると、荒崎はほっとしたように胸を撫で下ろす。

「そうなんですね。俺、実は明日また用事があったので…」

「…へぇ」

 荒崎が何かを隠しているのは分かったが、面倒事に巻き込まれているわけではないだろうと、悠は特に追求せずに明日の予定を告げる。

「明日は狩りに行かないから」

「了解です!」

 悠はやけに聞き分けのいい荒崎のことを訝しげな表情で見ていたが、まあいいかと話を切り上げた。

 明日神樹に渡すための部品をカバンにまとめ、自室の机の上にカバンを置く。

 q2を部屋の中で自由にさせながら布団に腰を下ろすと、ようやく一息ついた。

 部屋の中を浮遊しているq2をみながら、今日得た情報を頭の中でまとめていく。

 包魂機と指揮体、国の考え、縄張りにいる指揮体について、考えることは多いが、以前一人で行動していた時よりも多くの情報が手元に集まってきた。

 上手くいっている時ほど足元をすくわれる、そう戒めも込めてこれからどうするか考えながら、後ろに倒れ込み布団に体を投げ出す。

 やることも多いが、少しづつでも前身している。そう思うと、1人と一機しかいない部屋の中で同じ日々を送っていた頃よりも、毎日が充実しているように感じた。









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