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神のいない世界  作者: ウニ
裏 表
41/64

驚愕

 









 悠はしばらく唖然としていたが、機械魔獣が近寄ってきている気配を感じとり我に返った。

 急いで藍原の手を引き立ち上がらせると、周囲に鋭い視線を向け警戒する。

「え、なに…!」

「…嫌かもしれないけど我慢しろ」

 そう一言告げ、悠は藍原を片腕に抱え上げると近場で安全な場所をq2に探させる。

「ちょっ…!神無くん!?」

 藍原は慌てて悠の腕から離れようとするが、悠は機械魔獣が近づいてきていることを察知すると、藍原の抵抗など気にもせず、藍原の体を抱えたまま走り出した。

『──前方のビル屋上、現在周囲に機械魔獣の気配はない。周囲の視線を遮ることもできるため、敵襲の可能性は低い』

「分かった」

「ひぇっ…!ちょっ…ま、まってよ!」

 悲鳴をあげながら、何とか悠を止めようと藍原は悠の顔を見る。

 悠はそんな藍原のことをちらりと一瞥すると、q2に指示されたビルへ向かい足を進める。そうしてビルの少し手前に着くと、藍原の体を抱える腕に力を込めた。

「口閉じてろ、舌噛むぞ」

「は…!?」

 足に力を入れ、目の前の廃ビルへ飛び上がる。空いている腕を使い窓枠に手をかけるとさらに体を持ち上げ、上へ上へと登っていく。

 霊力を使い強化した脚力を持ってすれば、人を1人抱えても余裕でビルの壁を登ることができる。

 そうして、変な声を上げる藍原を抱えたままビルの屋上に到着すると、ようやく藍原を腕から離した。

 藍原はその場にぺたりと座り込むと、しばらく放心していたが、しばらくするとやけにゆっくりな動作で悠を視界に入れる。

「あの…さ」

「なに」

「神無くんって、調律師…だったんだね」

「…誰かに言いふらすか?」

「そんな事しないよ!…むしろ、助けてもらって感謝してる」

 藍原は悠の質問に首を振りながら否定すると、立ち上がった。

 多少ふらつくのか、足元が覚束無いようでその場で何度か地面を踏み締める。

 そうして悠を正面に見ると頭を下げた。

「神無くん、助けてくれてありがとう。この恩は忘れないわ」

「…そこまで畏まらなくてもいい」

「いえ、これはケジメみたいなものだから。…それでその、助けてもらっておいてこんな事言うのもアレなんだけど…」

 藍原はおずおずと悠の様子を伺いながら、口を開く。

 悠はそれだけで藍原がどうして欲しいのかを悟ると先回りし、口を挟んだ。

「…委員長の家までは送ってやる」

「本当に…?ありがとう。何から何まで頼んでしまって申し訳ないのだけれど、お願いします」

「ああ」



 *



 藍原を無事に家まで送り届けると、悠はその場から離れた場所にある物陰にしゃがみ込んだ。

「…あー、疲れた。帰って寝たい」

『指揮体の調査続行を推奨する』

「わかってるよ…」

 悠はしばらくその場で蹲っていたが、すくっと立ち上がりプラプラと歩き始めた。

 しばらくそうして歩いていたが、機械魔獣には何体か遭遇するものの指揮体の痕跡が一向に見つからない。

 今日も空振りかと諦め、帰路につくことにした。


 



 家に着くと、窓から明かりが漏れていた。

 荒崎が起きているのかと、玄関を潜りリビングへと行くと荒崎がソファに座りながら難しい顔をしていた。

「…なにしてんの」

「あ、すみません!今夜の狩りに同行できなくて…」

「別にいい」

 荒崎はソファから立ち上がると、悠のカバンを受け取りいつもの場所に置いた。

「いや、ほんとに今日は行くつもりだったんですよ!」

「わかったから。…明日の夜は行けるのか?」

「はい!大丈夫です!」

 その後いくつか言葉を交わしたあと、悠は風呂場で疲れを取り、キッチンへと向かう。

 先程狩りに行く前に作っておいた炒め物を冷蔵庫から取り出すと、電子レンジで温める。

 そうしてお湯を沸かし、買っておいたカップ麺の中にお湯を入れて夜食が完成。

 荒崎も食べていないようだったので、ついでに荒崎のカップ麺も作ると2皿に盛った炒め物と一緒にテーブルに置いた。

 席に着くと荒崎が飲み物を両手に持ってきて自分の席に座る。

 片方を悠に渡すと手を合わせ箸を手に取った。

 悠はもそもそと自分で作った炒め物を食べていると、荒崎はあっという間に自分の分を食べ終わったらしく、ちらちらと悠の方を見てくる。

 悠は手元にあった炒め物を荒崎の方に押しやると、自分のカップ麺に取り掛かる。

 カップ麺は相変わらずいい食べ物だと感心する。

 今度買う時は、最近売られ始めた新しい味のものを買おうと決意するとラストスパートに入った。



 *



 食後に部屋へ戻り携帯を開きメールをチェックしていると、藍原から連絡がきていた。

 内容を見ると、今日のお礼をしたいから空いている日を教えて欲しいというものだった。

 悠はそのメールに、お礼は必要ない旨を書いて送信すると、携帯を枕元に置いて横になる。

 q2も定位置に止まると休眠モードに入ったようで、僅かな駆動音が聞こえるのみだ。

 q2を横目にしながら目を閉じると、真っ暗な世界が全てを支配し、世界に自分だけが存在してるような気分になる。

 明日は斑目との約束があるため、一応目覚ましをかけておいたが、約束の時間は昼過ぎのためよっぽどの事がなければ大丈夫だろうと、睡魔に従い眠りに落ちた。

 

 






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