103話:姫様の見送り
ジンとフォルス公爵派との対談の翌日。昨日の話し合いでラティーナとアンジェリカ、信壱、あすな達、雷勇者の守護者達に、ミシェル、ラインハルトはフォルス公爵派と共に彼らの拠点へ向かう事になった。
突然のお別れであったが、祈達もラティーナの方も寂しさはなさそうであった。
「皆さまには大変お世話になりました」
「いえ、こちらも貴重な体験ありがとうございます」
挨拶を交わすラティーナと望。一先ず両者の関係は友好的である。
「こちらは、感謝の書状と謝礼についての目録です。謝礼については自由にしてくれて構いません」
これで公的にも望達はラティーナを助けた事を証明できる。そのため、フォルス公爵派の人間も手を出しづらくなる。折角の有能な人材ではあるが、ラティーナ救出の証明とニホン商会の後ろ盾により半端な貴族では手を出そうとも考えられない。その半端に入らないフォルス公爵はラティーナを救出してくれた勇者の一団に強い興味を示す。
「今回の一件は私達も深く感謝しています。よろしければ、このまま我らの拠点にまで来てもらい感謝の意を表明した催しに参加していただきたいのですが」
「申し訳ありません。商会長にこれから用事があると言われているので参加は出来そうにないです」
「それは、残念ですな。では、日を改めてご招待させてもらいましょう。ご都合が合えば参加していただければ幸いです」
「都合が合えば、喜んで」
上面だけの攻防で会話を終了する。参加はしないことになったが、これからしつこく祈達に向かって招待の手紙や言葉が送られるだろう。それを防ぐのは保護者であるリョウ――、ジンの腕の見せ所だろう彼が入ればフォルス公爵だろうと簡単には手が出せなくなる。
「それじゃあ、残念ですが話はここまでにしましょう。そろそろ行きますよ、フォルス公爵」
「御意」
「それでは皆さん。また会いましょう」
行儀よくラティーナは挨拶をして、望達もそれを返す。挨拶や礼儀もそこそこに最後にはみんなで手を振ってお別れになる。
「じゃーねー!」
「また会いましょーう!」
寂しい気持ち話あれど短い時間を共に過ごした友人の幸せを、切に願うのだった。
「行っちゃったねー」
「お仕事終わりー」
「公爵の人の勧誘の時の眼とか凄かったね」
フォルス公爵の隠してはいたが必死そうな勧誘を思い出すと苦笑いになる。
「望さんは美人だからな。年齢も近いし、自分か適当な貴族の嫁の一人にでもって考えてたんじゃない?」
「なるほど」
望は自分が嫁に行くとは考えていなかったのか難しい顔になる。彼女は結婚に苦い思い出があるので思い出したくもないのだろう。しかし、これからこの世界で生きて行かなきゃいけない事も考えるとそう言ったことを娘たちで考えなくちゃいけないのかと思うと憂鬱になってくる。
「はー」
「溜息は幸せ逃げますよ」
「これまで沢山ついてきたよ」
「俺も同じく」
疲れた表情になり薄い闇を見せてくる望とジン。
見送りが終わると全員は宿へと帰る事にした。
* * *
「あの勇者様の事を引き込めなかったのは、残念でしたね」
「そうでもないわ」
ラティーナは妹の残念そうな話題をそうでもないと一蹴する。
「そうでしょうか?」
引き入れていた方が今後有利だった思ったのだろうネフィルは意外そうに目を見開く。
「彼女達自身は問題ないとしても、彼女を取り囲む状況が厄介なのよ。こればっかりは一緒にいる期間が長い方が分かりやすかったかもね」
「ニホン商会、ですか」
「そうね。強固な後ろ盾なうえに、彼女を守護する守護者は他よりも強いみたいだし。必要な時に力を貸してもらえる程度の関係性で今は十分よ。他の貴族との信頼なんてないわけだし、無理に事を進めてややこしい事になるのを避けましょう」
「そうですか」
「貴方も余計な事はしない様に。あの方たちは私の担当にします」
「了解です。では、雷の勇者様に関してはどうしますか?」
「そっちはこっちに関わってくれるみたいだし、ある程度自由に動いてもらいましょう。だいぶ先になるかもしれないけど、王都奪還の時にでも力を貸してもらいましょう」
「水の勇者は出て行きたいみたいですが、どうします?」
「功績を挙げて特級冒険者になりたいのでしょう。だったら繋がりはそれでいいわ、強力な力の持ち主は同じように接してきたのですから。あえて、そこから離れる意味もないでしょう。問題が起きそうなら随時手を打ちましょうか」
「難しいですね、勇者様の扱いというのは」
「それを超えなくちゃ、王権の復活なんて夢のまた夢よ。先ずは皇国との国交回復からめざしましょう」
気合を入れて今後の事を話し合うことに決める。その後は自分達の弟の近況を話し合いながら彼女達をのせて本拠地に向かって飛空艇は飛んでいく。




