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勇者の守護者〜誰かのために出来る事〜  作者: Dr.醤油煎餅
第七章 縁ある都市と縁ある人々
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102話:集結の地はルーカス

 ジンはシルンと共にルーカスを巡っている。最初にきた頃よりもかなり発展してんのが見て取れた。

 朝から街の至る所を巡っていたが、今は手ごろなカフェでお茶している。

 今日のシルンはつばが広めの帽子を被り、それに合う様に上品なワンピースを着ている。ジンは軍服のような恰好をしていて周りに厳つい雰囲気を与ええている。そんな二人の様子はアンバランスなカップルと見られている。

 カフェでミルクティーを飲みながら、シルンが会話を始める。


「あとどれ位で勇者ちゃんたちは来るの?」

「んー、明日には来るかもな」

「そうかぁ、討伐されちゃったらどうしよう」

「今の勇者でも、うーん、難しいかな?」


 冷静に祈達の能力を分析してシルンとの実力差を考える。


「あっそ」

「興味が無くなるの速すぎだろ」


 シルンはつまらなそうにしてミルクティーの中を飲み干す。ジンは呟きつつ、新聞を広げて昨今の情勢を確認する。今は特にもてはやされているのは超級迷宮消失の話題だが、それ以外にも気になる話題がチラホラと、ジンとしては気になっていた聖王国の勇者の動向を確認できた。


「火の勇者が聖王国で活動しているな」

「ふーん。興味ないな、たぶん貴方が育てた方が強いでしょ」

「あった事ないから知らない」

「そりゃそうか」


 会ったこともない人物の力量など分る筈もない。歩き方や体幹のブレなんかは見た時に見抜けるが、それぐらいだ。詳しい強さなど見た目や新聞の上からでは分からない。


「そういや、千年前の勇者たちは誰が一番強かったの?」

「うーん、一番か、そう言われると風の勇者が強かったかな?」

「風か」

「個人の技量もそうだったけど、戦い方の指揮とかが上手かったかな? 苦しめられた同胞も多かったよ」

「千年前も大変だ」

「今は良いよね、普通に平和だこうしてのんびりできるのは特権だよ」


 たわいのない会話をしながら時間は過ぎていく。シルンとジンは暫く二人の時間を満喫するのだった。


*  *  *


 祈達は国境の砦から長い時間をかけてルーカスにまで辿り着いた。そこで待ち構えるのは兵士の集団、かなり警戒している様子である。


「着いたけど。騒ぎが起こってるね」

「まぁ、当たり前だね」


 巨大な猪に、成人したばかりであろう少年少女に保護者役であろう男女、加えて捕虜の様に捕らえられた男達。

 目立つ要素の塊の集団の自覚はあるので、街の兵士に止められると素直に従って事情を説明する。砦将の証書があったが、それでも説得は難航し、結局、上の階級の兵士にラティーナの身分を説明して入れて貰った。


「あー、面倒臭かった」

「お姫様の事はバレたくなかったけど仕方ないか」

「先生の事をばらせばいいんじゃない?」

「後のお叱りが怖い」

「取りあえず、先生にこの事を報告しましょう」


 そう言って、祈達はニホン商会の経営する高級宿に来て、事情と身分、目的を伝えると受付の人間は案内を開始する。

 受付に案内されて最上階のスイートルームに通された。

 扉を開けると正面には青年と美女たちがいた。青年の方は質の良いスーツを着て、サングラスをかけて口元には何かを加えているようで、マフィアの様な格好であった。美女達の方は大胆なスリットの入ったナイトドレスを着て、青年にしなだれている。一見して、金持った客がキャバクラで遊んでいるように見える。

 入って来た一同をジンは芝居しているような感じで出迎える。


「久しぶりだな」


 ジンは小芝居をしていて入って来た人間の事は見ていなかったのか、顔を上げた事でようやく祈達の事を見る。しかし、表情の変化は見せず小芝居を続行する。


「何の用だ?」

「いや、アンタが頼んだんだろ」

「……やめよ。白けたし」


 姿勢を正し、ドレスの彼女達を別室に行かせる。冗談をやっていたんだが、流石に素面の途に突っ込まれると気恥ずかしさを感じたのだ。

 しかし、祈は突っ込んだ。


「何やってたの?」

「マフィアごっこ」

「……何やってんの」


 呆れた様子の願。暇だったし、何となくでやってたのだがそれを見られてしまって若干気恥ずかしい。


「それより同行者が増えてる理由を話してくれよ」

「ほーい」


 ジンは席を立って台所へ向かう。それを見送って祈達とラティーナは取りあえず、ソファに座る。アンジェリカはラティーナの後ろに立って護衛の体勢、信壱達は判断に迷ったが取りあえずソファの後ろに立つ。捕虜である、ミシェル、ラインハルト、ノモルは二つのソファの間の床に座らされている。その後ろには不死の王(ノーライフキング)のレスが漂って捕虜を監視している。

 ジンは淹れ終わったが、お茶を蒸らしている間に話を進めることにする。


「さて、最初から説明してくれ」

「じゃあーー」


 そう言って望がミルキアからルーカスまでの道程を説明する。ジンと別れた後に起こったことは多岐にわたると同時に衝撃的なモノばっかりだった。中にはジンの耳を引くような情報もある。


「なるほど、冒険者と国軍に襲われたと」


 チラリとミシェル達の方を見る。ミシェルは都合が悪そうにジンから目線を逸らす。ジンはワザとらしく溜息をついて、ミシェルに話を振ってやる。


「調子に乗って大軍を率いたが戦力差を見誤りあえなく返り討ち、と。無様で笑える。とんだ無能だな」

「ち、違う。普通ただの冒険者の集まりに、あんな力があるなど思わないではないか!」

「バカか。撤退を見越して部隊を操作するのは指揮官として当然だろ。こんな所で捕虜になった時点でお前が指揮官失格なのは何も変わらないよ」

「き、貴様、私を愚弄するのか!」

「無能に無能と言っただけだ。それで、話はこれ位?」

「うん。ひとまず終了」


 ジンは少し話しただけでミシェルを無視し祈との会話を再開する。騒ごうとしたミシェルはレスに頭を抑え付けられる。

 ジンは話を聞き終わると少し目を閉じて、思考を纏める。


「…………まぁいいや。祈、願、望、優夢と志穂は別室に言ってろ。俺は残りの今後について話すから」

『は~い』


 五人はドレスの女性たちが行った別室に向かう。残った奴等で今後について話し合う。

 先ずはジンが先に質問する。


「さて、ラティーナ様はこれからどのように?」

「フォルス公爵派の元に行きたいのですが、何とか取り次いでもらえませんか?」

「分かりました」


 ジンは考える間もなく即答する。ラティーナは裏を考えて、表情にそれを出して反応を探り、ジンは涼しい顔でそれに応えた。


「今、この街にフォルス公爵派の首脳陣が来ているんですよ」

「っ!……本当ですか?」

「ええ、目的は私とこの街の代官ですね。今日は代官の方に会いに行っているみたいですが、明日は私と会談の約束をされています」

「そうでしたか」


 そこからラティーナはジンと明日の会談に参加させてもらえるように交渉して、幾つか条件を飲んで明日の会談に参加させてもらえる事になった。


*  *  *


 翌日、ルーカス内の高級レストランの一室でジンとラティーナ、アンジェリカ、信壱達と、フォルス公爵にネフィル、アリシア、蓮人、俊哉が揃って顔を合わせていた。祈達、ヘレン、ミシェル、ラインハルト、ノモル達雷勇者の守護者は宿屋で待機となった。

 勇者以外の人間は動揺を顔には出さなかった。が、ラティーナとネフィルは再会を喜んでいるのが見て取れた。

 先ずは、姉妹の挨拶から入る。


「お姉様、よくご無事で」

「……迷惑をかけたわね」

「迷惑ではありません。私はお姉様が来てくれて心強く思います」

「ありがとうね。けれど、そう言う話は後にしましょう。今は話しておかなきゃいけない事もあるから」


 挨拶もそこそこにラティーナは現状を話しておく。ガンデルタから抜け出し、ミルキアに着くと、ある冒険者達の力を借りてミルキアから抜け出し、順調に旅を進めていたが途中から怪しい動きをする冒険者の影が見え始め、脱出目前には冒険者の集団に襲われた。何とか抜け出してもその先には五千人前後の軍勢を率いたミシェルが待ち構えていた。それを撃退してここまで辿り着いたと簡潔に説明する。


「詳細は追って話すけど今はこんな所ね」

「なるほど、思っていたよりも面倒な事態になってますね」

「面倒?」


 フォルス公爵の呟きに蓮人が興味を持ったようになる。フォルス公爵派その様子を見て、蓮人に説明をする。


「ベント公爵が軍の実権を完全に握ったと考えられますね」

「元から握ってたんじゃないんですか?」

「そういう訳じゃないのです。奴は子供を利用して軍での影響力を伸ばしてはいましたが、それでも国王が保持する統帥権には及びませんので、私的に動かせる国軍も少ない筈なのですが。今回出て来た軍人の総数は予想していた奴の動かすことが出来る軍の範囲を超えているんです。そう考えると奴は軍においては陛下をしのぐ実権と権勢を得てしまったと考えます。恐らくは統帥権を強奪している可能性もあります。こうなると、国軍全体が我々の敵になっているかもしれません」


 政治に明るいフォルス公爵が懸念すべきであろう事項を伝える。


「王室は神威を盾に正当性を主張しているのと同時に、軍隊でもその権力の後ろ盾を支えている。その権力の後ろ盾を公爵とはいえ、一貴族に任せるモノではないのです。軍内部には王を支持する将軍もいるでしょうが、こうなってくると少数派になってくるでしょう」


 王室が実権を取り返せる可能性が減っていることを伝えられた。

 ジンは難しい顔をしながら気になる事を尋ねる。


「それで、今後の目標としては?」

「………短期の目標としてまずは皇国との国交回復に努め、そこから王都での権勢回復にも手を付けるつもりだ」

「今の所、噂の上では皆さんは第二王子の誘拐犯って事になってますが?」

「国王には許可を取っているし、その証書もある。今のところは王宮内にしかその噂は広がっていないのは昨日確認した。であれば、いくらでも切り返しようはある」


 ジンにはフォルス公爵が何を考えているのかは分からないが、策はありそうなので少し安心する。ジンは下手に動くよりも動きを見る事を優先しようと決める。

 フォルス公爵は一先ず話を区切り、祈達が捕まえた捕虜について話す。


「それでラティーナ様の手にあるという捕虜ですが、こちらに引き渡してもらっても?」

「そうね。ノモルだけは開放しなさい。それ以外は厳重に連行して牢に入れて放置しましょう。尋問は日を改めてでも出来るでしょう。勇者様とその友人は丁重に扱いなさい」

「御意。でしたらそのように」

「あとは何か確認しておくべきことはありますか?」


 ジンは一応聞いておく。ここで齟齬があっても困るし、少しでも情報を貰う為だ。


「でしたら一つお伺いしたいのですが、先日執り行われたミシェルの結婚式。ある筋からは何者かに花嫁が拉致されたとの情報が入って来たのですが、そこら辺についての情報を頂けませんか」

「ああ、アレですか。でしたら、私にも入ってきましてね。コレに纏めてあるので宜しかったら」

「感謝します。お礼の方はまた後日」


 後は、予定通りの会談を行って、フォルス公爵派はニホン商会からの秘密裏の援助を受けられる事を確約させた。

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