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勇者の守護者〜誰かのために出来る事〜  作者: Dr.醤油煎餅
第六章 超級と勇者
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99話:看病と慰謝料

 ジンは皇都から離れてルーカス近辺にある森に作った地下拠点に来ていた。ベッドに彼女を寝かせると医療器具を用意して彼女の治療を開始する。


(大体は人間と同じか)


 触診と鑑定による簡易的なMRIで彼女の情報を調べると体の情報は弱り切っている人間とほぼ変わらないことが分かった。そうであるなら点滴による栄養摂取をさせ、酸素マスクにより呼吸補助をさせる。


『一先ずの処置はこれで終わりだ。また直ぐに戻るから少し待っててくれ』

『うん、分かった』

『聞き分けが良いな。どっかの奴とは大違いだ』


 ジンは空間魔法で元の場所へ飛んでいく。


*  *  *


 元超級迷宮の前には超級冒険者とメイドが佇んでいた。呆けているといった方が正しいのかもしれない。つい先ほどまで黒いコートに鳥の様なマスクを付けた不審者と棺桶があったのだが、空間魔法により見事に消えている。


「少し話をいいですか?」

「はい、何でしょう。女皇陛下(ジョウオウヘイカ)

「………」


 超級冒険者のリョウが女皇に対応する。メイドは後ろに下がって話の行く末を見守ることにしている。


「別に公式の場ではないのだ、そう畏まらなくてもよい」

「感謝します」

「色々聞きたい事はあるのだが、先ずは、そうだな、超級迷宮はどうなった?」

「………完全に破壊されたようです。もう再出現もしないでしょう」

「そうなると、封印されていた悪魔が出てきたんでは無いのか?」


 女皇は一番の問題になる事柄について追及する。流石のリョウもコレを誤魔化す訳にはいかない。今は良くても情報を誤解した人間が次々と迷宮を破壊すれば大きい混乱が生まれてしまう。


「棺桶に入っていたようなので黒い大男が持っていきました」

「それは、何処に?」

「分からないですね。少なくともここ付近ではないようですし。…………それよりも、あの大男に心当たりでも?」

「ん? ああ、気にする必要はない」

「そうすか」


 王族がそう簡単に情報を漏らすはずもなく、リョウはジンについての情報を聞き出せなかった。

 と言っても、半分裏でつながっているようなモノなので不都合はない。ここは引いておくのが吉であろう。


「ヒードラ公爵令嬢と勇者、その友人はどこに居るのだ?」

「流石に危ないのでね、かなり後方に下げました」


 リョウはそう言って皇都の方を指差す。女皇は直ぐに騎士団に指示して皇都中を捜索させる。


「情報提供と要人の安全確保に感謝する」

「いえ、このくらいはお安い御用です」

「それと、アスタルテ。前へ」

「はい」


 メイド服の少女――、アスタルテが前に出てきた。


「一先ずは、無事に帰ってきたようだし。三人を超級迷宮へ連れ去られたのは勘弁しよう。お前も、あれをどうにかするのは難しかったのだろう」

「力及ばずで申し訳ありませんが、言い訳はしません。ご自由に処分をお願いします」

「………」


 潔く頭を下げるアスタルテに女皇は黙ってしまう。ここで彼女を処分するのは簡単だが。彼女は役に立ってくれているし、王女も気に入っている。加えて正直彼女に非はない。今回の件に非があるとすればジンなのだから処罰するのはアイツである。逃がしたことに対する処分もかけられるが、相手は意味の分からない強敵。うかつに手を出せばどんな被害がでるのか分からないため手を出さなかったのは賢明な判断だといえる。現に超級冒険者のリョウがなにも動けていない以上、そこを理由に処罰するのは無理筋だろう。


「………処罰は第五皇女のサテラと勇者ナノカ=オオツキ、その友人コトハ=ウタカゼの世話を正式に任ずる。手を焼くだろうが、励みなさい」

「………はい。謹んで拝命します。身命賭して、励むことを誓います」


 面倒ごとの象徴の王女と勇者の世話を任せる。元々やらせていた事だったが正式に任ずるごとで傍からは処分として受け取ってもらえるだろう。


「いや~、まいったまいった。すまんな、時間喰っちまった」


 何処からか不審者が現れた。黒装束に鳥の様な仮面をつけた大男ジンである。軽い感じで表れる彼に全員が思った。


「空気読めよ」


 それをリョウが代弁する。皆が思ったが決して言おうとしなかった一言だ。


「お、女皇陛下。悪魔に関してはこっちで処理するから気にしないで下さいな」

「………まぁ、任せる。進展があれば報告してくる? 報告先は何処でもいいから」

「了解しました」


 ジンは従順に頷く。別に異論などないのだから、対価を求める気もない。


「そして、今回の色々の賠償を今から出しますので、申し訳ありませんが人手を出してくれますか?」

「まぁ、それ位なら。…………後処理に回った兵士と騎士団を呼び出してきなさい」


 女皇は近くにいた騎士に伝達役を任せて、走らせる。


「それで何を出すのだ?」

「廃墟と財宝ですね」

「財宝。超級迷宮のか?」

「超級迷宮の報酬は令嬢に渡しました。強引に奪ったりはしないで下さいね、逆らいたくなっちゃうから。それとこれから出すのはこれまでに迷宮に奪われた財物ですね」

「分かった。渡すという事は対価はいらないのだな」

「はい。今回のは迷惑と心配をおかけした謝罪料という事で受け取っていただければ」

「人手は準備するが、せめて分類分けはしてくれ」


 ジンは頷き、亜空間内の財宝の仕分けを始める。呪いの有無も確認して、先ずは武器。魔法武器や鋳造品などを並べていく。その近くには箱に入れて破損して使い物にならない武器を収納しておく。次に箱詰めした宝石。先ずは原石、クズ石。次に加工された装飾品。これらは箱に入れてネックレス、指輪と仕分けする。ショウケース内に展示するように保管する。破損した装飾品は箱の中に放り投げる。次に服。これらは地属性の魔法で作ったハンガーと衣装棚に収納していく。服飾店のような景色が出来るが作業を続ける。そこから各種雑貨を棚を作って並べていく。廃墟を出そうとしたら女皇から必要ないと言われてしまう。という訳で自由に処分することにした。


「後は好きにしてください」

「そうか、大儀であった」

「いえいえ、俺はここで退散させてもらいます。それではまたお会いしましょう。さようなら」


 ジンは煙幕を使って姿を隠す。煙幕が晴れるとそこには人の痕跡はなかった。

 鮮やかに去ったジンに寒気を感じた様にリョウは体を震わせると、財宝には目もくれず、放置されたビャクヤの死骸を観察する。


「陛下、こいつを貰っていいですか?」

「それか……………。半分なら持って行っていいぞ」

「ありがとうございます。では、半身を貰っていきますね」


 リョウはインベントリに入れて切り捨てられたビャクヤの半身を持っていった。


「何かできたりしたらこっちに寄こしてくれたら嬉しい」

「まぁ、努力はしますよ」


 滅多に現れない上に、万が一にも討たれる事のない最強の生物、超級の魔物の遺骸なのだ。その存在価値と研究資料としての魅力は何よりも大きい。すべて欲しいが研究だったり素材としての利用ならニホン商会に任せた方が良い。研究成果や情報だけでももらえたら万々歳だ。半身も手に入れられるのだから研究成果が手に入れば利用ができる。


「じゃあ、自分はこれで」

「また、声を掛けさせてもらうかもしれないが、よろしく頼むよ」

「はい、その時はよろしくお願いします」


 リョウは風属性の魔法を使って空を飛んでいき。そして全速力でルーカスの方へ向かった。


「諸々の後始末および、ヒードラ家の令嬢を後で応接室に呼び出しておいてくれ」

「はっ!」


 女皇は疲れた表情をして城へ戻り。残った騎士達はジンが残していった財宝なんかを城の宝物庫へ持っていった。アスタルテがリストを取っていたので、誰かがちょろまかしていてもわかるようになった。リスク管理をしながら色々と面倒事を終わらせた。


*  *  *


 ルーカス付近に到着したリョウ――、ジンは転移でルーカス付近にある地下拠点の出入り口に移動する。そのまま入ると拠点にいる悪魔の治療に取り掛かる。治療と言っても別に手術とかはない。栄養補給とか魔力の補給だけである。


「色々、聞きたい事はあるけども先ずは君の回復待ちだね」

「…………」


 今は寝ている悪魔を優しく介抱する。こころなしか悪魔の肌艶がよくなっている気がした。

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