91話:本部長VS騎士団長・執事タッグ
ラインハルトは開始の打ち合いの衝撃でトウガは周りに掛けた命令が解けたのが分かったが、それは一旦置いておいて目の前の強敵に集中する。
「シッ!」
「ぐっぅうっ」
トウガの拳の連撃をラインハルトは何とか捌くが、【覇王】のスキルで強化された連撃を捌ききるなどいくらラインハルトの神業であっても押し切られる。技が通用するのは同程度の身体能力か相手が高度な身体能力に依存した素人位だ。技量的に同程度で圧倒的にスペックに差があるなら身体能力が勝る方が押すのが普通だ。
「サポートします」
ノモルがそう呟くと、身体魔法をラインハルトをかけて何倍のも身体能力を引き上げる。体が壊れない様に同時に肉体の強化も同時に掛ける。
「おっ、よっ、そいやぁっ!」
凄まじい連撃で押していたトウガだったが、考えなしの連撃はマズいと直感して距離を置くところを一歩進んで懐に自分をねじ込む。ノモルは鎖を操ってラインハルトに足場を用意しながら縦横無尽に動き回らせる。しかし、手首から煙球を出して一旦仕切り直す。
「凄まじいな、ここまでの使い手がいるとは」
ラインハルトはサポートをしてくれるノモルも、同程度の身体能力になったというのに一歩も引かず寧ろ経験と技量の差を見せる相手に感嘆の息を漏らす。
仕切り直したトウガは、一旦鎖を撃ち落とすためにラインハルトの周囲に土壁を隆起させて一対一の状態を作り出す。ノモルに邪魔されない様に周囲に連続で土壁を作り出していく。
そのままトウガは剣との有意性を取るために下側に居座りながら裏拳や突き上げの連続で剣を振らせる隙を与えない。ラインハルトは何とか離れようとするがトウガの粘着質な立ち回りにイマイチ離れるように動けない。
ノモルは鎖を横薙ぎに振って周囲の土壁を破壊して、一直線でラインハルトの方へ向かう。なんとかラインハルトとトウガを離そうと、鎖と雷撃を駆使してけん制するが前世よりもはるかに高性能な体は状態異常や捕縛動作に一切の停滞も与えられない。
このままじゃ、身体能力の強化の稼働時間がすぐに終わってしまう。それを感じたラインハルトは一気に勝負を決めに行く。
ラインハルトは適切な距離を取っての連撃を行う。これではトウガも懐に入れず攻めあぐねる。ノモルは足を止めているトウガの脚に鎖をかけて引っ張る。流石のトウガも一気に体勢を崩す、それに付け込んでラインハルトは攻める。トウガは連撃を無理矢理耐え抜き、土壁を自身にぶつけて、後方にぶっ飛ぶと、地属性の魔法を広範囲に及ぼし全力でラインハルトの下から土の柱を作り上げる。作り上げた土の柱は凄まじい硬度を持っていて強化されたラインハルトでもそれを破壊できない。一瞬躊躇していると、既に五十メートルの高さに来ていた。破壊できないのなら飛び降り、上からの攻撃で仕留めに行く。闘気を使い、魔力で更に強化する。ノモルの強化魔法と合わせて三重に肉体を強化する。
当然、トウガもそれに応える為に攻撃態勢に入る。闘気で肉体を強化しそれをさらに強化する為に魔力で強化する。加えて、竜化でさらに肉体を強化。トウガの必殺の体勢だ。ノモルは止めようとするはずだが、彼は最初の土の柱の魔法と同時にノモルに作られた土の壁の波に押されて離されている。近づこうにも物量で押しつぶされていて動けずにいる。
ラインハルトも必殺の体勢に入っている。大きく上段で構えて持っている剣に莫大な魔力を込める。バチバチと凄まじい電気を生産しそれを剣に込めて、放てる体勢にいる。
跳び上がるトウガと落ちて行くラインハルト。一瞬で同時に攻撃を放ち、上空で凄まじい爆発が起こる。
勝負の結果は、
「ビクゥトォリーーーー!!」
トウガが勝って雄叫びを上げる。そのままラインハルトを掴んで、ノモルの方へ投げ飛ばし、瓦礫を呼びつけてそれを足場にして追撃を加える。
壁の波で押さえつけていたノモルが何とか抜け出すが、ラインハルトを受け止め、その直後のトウガの追撃をもろに喰らう。トウガの拳圧から放たれた衝撃波を直撃させられて、流石のノモルもこれには気絶してしまう。
「たくっ、手間だったぜ」
ラインハルトをどかしてノモルを掴み上げると、気絶のふりをしていたノモルが、なけなしの魔力で発生させた電撃をぶつけるが、起きていることに気付いていたノモルにそれを防がれる。
「残念だったな」
「やってくれる」
電撃を運動エネルギーに変換して掌からノモルに向けて放出する。それは空気を押し出し凄まじい衝撃波となって脳が揺さぶられて今度は完全に気絶する。
「回収と無力化完了。後は俺の担当のとこに行かんとなぁ」
疲れた疲れたと、トウガはラインハルトとノモルを回収してその足で祈の所へ戻る。
* * *
「よっ!」
「の、ノモさん!」
「ああ、気にすんな。生きてっから」
トウガは気絶させたノモルをトンテキに縛り付ける。ラインハルトとミシェルも同様に縛り付けた。シトリンは小さくなって信壱の首に巻き付いている。
「……ノモさん」
「心配か?」
「っ………当たり前だろっ!」
「おーおー、愛されてるねぇ。羨ましいぜ、なぁ、地の勇者様」
「…………ある意味、何もしない事をしてあげている」
「………確かに、自由にさせてもらってるな。俺は他人の世話とか苦手だし。こういうのであれば運動にもなるしまた呼んでくれ。お前は多分あいつ位にトラブルを呼び込む」
トウガはトンテキの背に乗って寝転がり、そのまま寝始める。
「さて、どうする?」
「俺の事?」
祈は率直に信壱との話に入った。




