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勇者の守護者〜誰かのために出来る事〜  作者: Dr.醤油煎餅
第五章 恩師救出と教え子の旅路
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87話:勇者の旅道中(その3)

 祈達はこれまでの道中と同じ様に森を抜けて街道を進んで街に着くところだった。今日の宿になりそうな街はさして重要性のない宿場街だ。


「今日はあそこに泊まることになりそうですね。検問はなさそうなので今日は良い所に泊まりましょうか」

「おお、今日は良い日だね」


 望が今日の予定を話すと、祈は顔を綻ばせる。今日まで安い宿にしか泊まれなかったので寝るときに、体が痛かったのだ。検問が敷かれていないならここを重要視していない、なので捜索隊にバレるリスクは少ないと考えたから、多少は緊張感を和らげた。

 街に入ると周囲から視線を感じる。いやらしいモノではなく、伺うような観察する視線。


(先生に訓練された甲斐がありましたね)


 望はジンに視線に反応できるように訓練されていた。リーダー役と斥候役を務める人間には人や獣の視線に敏感になって厄介事を避けられる様にされていた。

 そして街中に入って来た時点で追いかけてきて追跡してくる人間が数人。


(声を掛けあぐねているようですが、無視して進むが吉でしょう)


 しかし、見られていても相手側がちょっかいをかけてくる様子はなし。そうなるとサッサと宿を取って視線を切る事にする。


「店主、7人なんだが宿を取りたい」

「おお、別嬪の団体客だ」

「店主、お世辞は良い、料金は?」

「その人数が一度なら銀貨十五枚だな」

「はい、代金。少し台所を借りた後は部屋の中で大人しくするよ。店側で問題が起こらない限りこれは二枚増える」

「……三階の角部屋だ。掃除はしてあるから勝手に使いな」


 店主は代金に上乗せされた銀貨を懐に納めると鍵を取り出し、望に渡すその後は何も喋らなくなった。そして興味を無くしたようにニホン商会製の新聞を読み始める。望は一応ルームサービスとしてあった新聞を一刷り持っていった。


*  *  *


 望は部屋に全員集めて、一旦話し合いをする。


「お母さん、話って何?」

「今更だけどルートの確認とこの宿に来るまでの視線を向けていた人達について。まぁ、先に不審者たちについて」

「なんか、大分急いでいたけどそれが関係しているの?」

「うん。自分らしくはないかなとは思ったけどね」


 たはは、と望は照れ臭そうに笑う。自分でもらしくない行動とは感じていたようだ。


「で、何が気になったの?」

「入り口に入った時に感じた複数の視線とこちらに声を掛けてきそうだった若い冒険者の男達が一番気になりましたね」

「ナンパか何かだったんじゃないのか?」

「いえ、今回街に入った時はまだ容姿を晒していません。なので、ナンパの線は薄いでしょう。フードを被った怪しい集団がいるから引き留めようとしたとしても、声を掛けてこなかったのは不自然でしたけどね。かけようとはしていたみたいだから、興味が無かったわけでは無いのは確実だけど」


 アンジェリカの予想を望は素早く却下する。自惚れかもしれないが、この場の全員は普通以上の容姿を持っている。


「外に杜撰だけど見張り役の人間はいる。監視されているのは確定みたい」

「何を疑われているんでしょう?」

「お姫さまの事はない?」

「んー、それはないだろう。ミシェルはとてもプライドの高い男だ。自分の結婚式が原因で起きた不始末を挽回する為に恥を承知で捜索に来ているなら姫様の存在を公表する気はないんじゃないか?」

「私もそう思うわ。私の事じゃないとしたら何なのかって話になるけど、心当たりはある?」

「特になし」

「「同じく」」


 ラティーナの質問に優夢と祈、願は心当たりはないと首を横に振る。


「気分はよくないけど明日にでもこの街は出るし、そこまで気にしなくても良いんじゃない?」

「んー、まぁ、そうだな。深く考えても答えは出ない以上は接触する前に街を出る方が先かな」

「明日は朝一にこの街から出ますか」


 触らぬ神に祟りなし。サッサとこの街から出る方針を固めた。


「で、ルートの確認とは?」

「私たちは先生の頼みで皇国のルーカスっていう都市に向かっているんです」

「という事は、直接フォルス公爵領の領都へ向かう訳じゃなかったと?」

「正直、その領都っていうのが何処にあるのかもわからなかったりします」

「………そうだったのか」

「という訳で、ルーカスに行けば先生の力が借りられると思うのでそっちの方がお得だと思います」

「そう言えば、元から皇国の方に向かってましたよね」

「迂回すれば何とか入れるかなと思って」


 脳筋思考な姫様である。実際に箱入り姫ならともかくまがいなりにも超級冒険者がみっちりと三ヶ月くらい鍛え上げた強者だ。それ位ならできるし、アンジェも騎士としての訓練は詰んできているのでそれ位なら問題はない。


*  *  *


 セイニが訪ねていた酒場には街で網を広げていた冒険者たちが集まっていた。


「で、結果は?」

「全体でこの街に訪れた人間は十組。その中で女連れは失敗も含めて七組。失敗を除けば目を見張るような顔の女は見えなかった」

「失敗したってのはなんでだ?」


 リーダー格の大男は取りあえず、今日の結果の報告を受けて失敗の件を聞き出す。


「ルキアの奴等だよ。まぁ、新人だからな失敗は珍しくはねぇが」

「し、仕方ねぇだろ! あいつら近づこうとすると、こっちに反応してくるんだよ! こっちに優位性が無ければ欲しい情報なんて聞きだしづれぇだろ」


 勇んで言い訳をする若い冒険者ーー、ルキアは最後には言葉はしりすぼみになってしまう。

 リーダー格の大男は頭を掻きながら溜息を吐く。


「馬鹿野郎! 不利な事なんていくらでもあるんだ! それに、今回の仕事は容姿を少し確認すれば済む話だっただろうが! ビビッて手を出さねぇなんて、情けねぇ」

「あ、でも、止まってる宿屋は突き止めました。どうです?」

「馬鹿かテメェ。そんなの周りから聞き出せば済む話だろ」


 リーダー格の大男の溜息は深くなった。そして、セイニの方を向く。


「どうします?」

「そうだな。………失敗したのに明日声を掛けてくれ。判断の方は俺がやろう」

「そうっすか。おい、ルキア。失敗した奴等の場所は何処だ?」

「大通りにある東側の出入り門近くの宿です」


 冒険者達は明日は祈達の事を調べると決めた。そのまま各自の拠点へと帰っていく。

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