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ごほうび  作者: choco
2/24

亜莉 1

 *** Ari ***


ピーッ!!


「よっっしゃあーーっっ!!」

「やったぁぁーーーっ!!」


ゴールを決めたシュウは、次々飛びかかってくるチームメイトに埋もれて、その姿は全く見えない。

後から飛び込んで、その塊の一番上に乗っかって拳を突き上げているのは カズヤだろう。


観客席からは、ひっきりなしに黄色い声援が飛んでいる。

今日は、いつもに比べて 多い気がする。


うちの部の男子は、レベルは結構高いほうじゃないかと思う。


もともと校内外の女子の間でも評判だった キャプテンのタカシは、言うまでもない。

全国20位内という頭脳派でもある彼は 見た目も申し分なく、今日も彼のファンの子は多いはずだ。

モデル並みの長身であるデフェンスのユウキも人気が高いし、カズヤだってお調子者ではあるが 少しキツめの顔は悪くない。

下学年でも アイドル系のかわいい顔立ちの子も何人かいるし、そっちが目当ての女の子だって多いだろう。


でも、なんといっても彼女らの一番のお目当ては、エースのシュウだ。


整った端正な顔立ち、さわやかな笑顔。

スラリとした体躯、美しく流れるような動き。

校内では異論なくダントツの美形だし、この近辺でも間違いなく一番のイケメンだろう。


加えて、サッカーの あの才能。

最近は、地元紙などにもよく登場しているし、プロの注目さえ集め始めているみたいだ。

こんな地方の無名校にいるのが不思議なくらいだ。

これから きっと、スカウトが殺到するに違いない。



自分の荷物をまとめ終わった彼らが、ベンチから移動し始めた。

女の子の集団もそれに付いて移動するの見て、私は はっとした。


しまった。 今日は 彼女が来ていなかったのだ。


まだ全部片付け終わっていなかった私は、あわてて必要なものだけをまとめ、残りは後輩に頼んで ダッシュで追いかけた。


このまま出口に行けば、大変なことになってしまう。

なんとかシュウを、熱心なファンの彼女たちの猛攻から防がなければ。


「…もう、なんで私が、シュウのボディガードみたいなこと しなきゃならないの?」


私は、シュウの彼女でも 何でもないのに。

そう 彼には、その間に割って入るのは無理だと 皆を一目で納得させるような、素敵な恋人がいるのだ。

しかし その彼女は、体調を崩していて 今日は来られない。


なんとか先周りして出口にたどり着き、彼女たちの通路をふさぐ。

当然私一人では守り切れる訳はないが、すぐに後輩達が追いついて来て、助けてくれるだろう。


すぐに、彼らがやってきた。

やはり その中でも、シュウの屈託ない笑顔は、ひときわ周囲の目を引き寄せる。

彼女たちが目の色を変えて夢中になってしまうのも、無理はないと思う。


でも、その時 私の目線の先にいたのは、シュウではなかった。



「亜莉、悪いね」

シュウが苦笑して言った。


「ほんと、バイト料もらわなきゃ」

「今度、美緒となんかおごるよ」


美緒というのは、シュウの溺愛する彼女だ。

隣に並ぶのが気の引ける程の、本物の絶世の美少女。

明るくて可愛らしい、サッカー部 皆の憧れのマドンナなのだ。


そして、とても優しい 私の大好きな親友でもある。


「…ふふっ、しょうがないなぁ。

 じゃあ、美緒にも早く復帰してもらわなきゃ」


「止めとけよ、破産するぜ。

 この前おごらされた時、こいつ、5人前くらいペロリと食ったんだぜ」

カズヤが、横からちゃちゃを入れてきた。


「な、何言って…っ! デタラメ言わないでよ!」

「デタラメなもんか、忘れたとは言わせねえぞ。

 あの店で、お前、見てて気分悪くなるほど食ってたじゃねえか」

「あれはケーキバイキングでしょ!!」


「だいたいあれは、お前がボールかご壊したのを 亜莉が直した おわびだろ。

 その前は、ふざけて練習ネット破いたし」

「そうそう、あれ直すの、ほとんど徹夜だったんだから!!」

タカシのフォローも、カズヤは聞こえてないフリだ。


「最近ベンチ狭くなったと思ってたんだよなー。

 その栄養、横幅には貢献すんのに、なんで胸には全然いかないんだ?」

「っくっ…、こら、カズヤっ、まてーーっ!!」

「亜莉っ、ちょっと お前ら、走るのかよー、俺達 試合終わったばっか…」


結局、いつものパターン。

私達は大荷物を抱えたまま、ヒィハァ言いながら、汗だくでグランドから退場した。


ドロドロすることもなく、あまり 切なくもならないよう、最後は皆それなりに収まる感じです。

どちらかと言えば、結構バカな話です。 軽い感じでお楽しみください。

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