提案
「レイ。私は魔王を倒すわ」
首をかしげる僕の前で、マリアは改めて宣言する。
「うん、そうだね。僕もそのつもりだよ」
「だから、私はレイに愛を知ってほしいの」
「……だから?全然話が関係ないように見えるんだけど」
「えぇ、関係ないわ」
「関係ないの!?」
当たり前のように関係ないと断言された僕は驚愕する。
なら、『だから』なんて接続語を使うべきじゃないじゃん。
「……結局、マリアが何を言いたいのかわからないんけど?」
「魔王を討伐する……それと、同じくらい私にとって大切なものが出来たという話よ」
「はぁ……」
「私は貴方に愛を知ってほしいの。その為にはどうすればいいか、考えていたわ」
「その結果は?」
「やっぱり、人と関わりを持つのが良いと思ったわ。レイは学ぶべきなのよ。ごく一般的なことを」
「学び?」
「そう。レイが知っているのはそのどれも魔王と戦う上で必要だと貴方自身が選別したものだけ。国の歴史とか知らないでしょう?」
「まぁ」
「それも良くないと思ったわ。普通の子のように、一般的な教養をつけるところから……だから、私はレイの為に学校を作ったの」
「学校……?」
「えぇ、レイのように忌み子とされていた固有スキルを持っている子たちを集めて学校を作ったわ。みんな、手探りで成長していっているあそこでレイには人間関係を学んでほしいの」
「……それ、時間かかりそうじゃない?」
「かかるでしょうね。でも、それで良いじゃない」
時間をかけていて良いの?
魔王軍はその間も刻一刻と勢力を伸ばしているけど。
「毎日学校に行って友達と色々なことを学び、私のところに帰ってきたら本当の家族のように食卓を囲って一緒に眠って……レイが得られなかった普通の子どもとしての生活を送り直すの」
「……」
「どうかしら?レイ、この生活は。愛を知るという目的も与えたわ。こちらの方が、やりやすいのでしょう?」
「悪くないかもね?」
確かに、……愛を知るという目的は何処か抽象的でわかりにくいけど、何の目的がないよりはいい。わかりにくい課題だからこそ、やる意味があるとも言える。
「だけど、リーシアがいない」
とはいえ、僕がその生活を送るはずがなかった。
僕の一番大切なところがない。
「……えぇ、そうね。レイは、そう答えると思っていたわ」
僕の言葉にマリアが静かに頷く。
「レイ。貴方、誰かを嫌いになったことあるかしら?」
そして、疑問を一つ。
「いや、ないけど……」
「えぇ、そうでしょうね。レイはそういう子だもの……だから、ごめんね?」
「……っ」
マリアの魔力がさく裂し、魔法が発動させる。
この部屋全体が一種の舞台装置として魔法が発動し、僕の立つ場所が何処までも続く真っ白な空間へと変わる。
「……マリア?」
「勝手だけど、私の理想をレイに押し付けさせてもらうわ」
「結局そうなるのね……っ」
「力づくでも、レイを私の作った学校に入れるわ」
最初から、マリアは戦闘態勢に入っていた。
彼女は元から話し合いで決めるつもりはなく、僕を力づくで言うこと聞かせようとしていた。
「一緒に遊びましょう?」
何処までも続いていた白い空間。
その真っ白な空が、赤黒く染まる。
「……範囲考えてよ」
見上げる限り何処までも続く───僕のすべてを押しつぶすかのような巨大な隕石が、天より落ちてきていた。
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